以前に阪南市が計画している600人規模の「総合こども館(認定こども園)」についてお伝えしました。

【阪南市・巨大こども園】住民投票を市は拒否・・・背景には老朽化・交付金が
【ニュース】大規模公立こども園と反対運動・・・・阪南市・八尾市

本計画が一つの争点となった阪南市長選が行われました。反対・再検討を訴える新人が当選し、計画の推進を主張した現職市長は大差で落選しました。多くの民意は明確に「計画反対」を表明した形となりました。

阪南市長選挙(立候補届出順)

候補者名得票数新現元
吉羽  美華5,445票
水野  けんじ11,150票
ふくやま  敏博7,050票

http://www.city.hannan.lg.jp/kakuka/gyosei/senkyokanriiinkai/hannnannsityou/1379747211283.html

大差がついた背景にはこども館計画への反発に加え、とりわけ「同計画の賛否を問う住民投票の実施を求める署名(市人口の2割)が集まったにも関わらず、提出翌日に拒否した」のが大きかったのではないでしょうか。

(仮称)阪南市立総合こども館の整備に係る考え、及び5月18日に提出いただいた住民投票の実施請求に対する考えをお知らせいたします。

今回の総合こども館の整備については、児童数が減少している現状や、南海トラフ巨大地震の発災時等に子どもたちの安全・安心を守ることを中心に様々な検討を重ねた結果、阪南市の将来を担う子どもたちのため、総合こども館を整備することが最善の策であると判断したものです。

このことを踏まえ、本年1月から7回の保護者説明会と11回の市民説明会を開催し、市民のみなさんにご説明させていただいたところであり、議会においても、この間の経過等を十分にご理解のうえ、議員15人中賛成12人という圧倒的多数の賛成で可決いただいたところです。

http://www.city.hannan.lg.jp/info/1463645645137.html

署名を誠実に受け止めて計画を再検討したならともかく、提出翌日に拒否されては署名した市民の怒りは収まりません。市長選挙の結果は頷けます。

新市長は1954年生まれ、日本福祉大学・財団法人・阪南市役所を経て、阪南市社会福祉協議会の常務理事・事務局長・会長を務めてきました。市役所で主に社会福祉・教育畑を歩んできたそうです。総合こども館問題を通じ、同市の福祉・教育を考えるにはもってこいの人材と言えそうです。

一方、空き店舗の購入等、計画の一部は既に進行しています。既設の幼稚園や保育所は津波浸水想定区域にあり、老朽化は深刻です。また、当初の計画に多くの議員が賛成した、市議会との関係構築は難航が予想されます。

阪南市長選 水野さんが初当選 こども館白紙「7施設残す方向」 /大阪
毎日新聞2016年10月31日 地方版

任期満了に伴う阪南市長選は30日投開票され、新人で市社会福祉協議会会長の水野謙二氏(62)=大阪維新推薦=が、現職の福山敏博氏(66)=自民推薦、新人で元寝屋川市議の吉羽美華氏(36)を破り、初当選を果たした。当日有権者数は4万6881人(男2万2172人、女2万4709人)、投票率は51・04%(前回41・81%)だった。

市立幼稚園・保育所全7カ所を統合して550人規模の幼保連携型認定こども園とする「総合こども館(仮称)」計画の是非が主な争点になった。

水野氏は阪南市尾崎町で支持者らと万歳をし「市民の声を聞き、信頼を集めていけるようになりたい」と話した。白紙撤回を訴えていたこども館計画については、取材に対し「7施設を残す方向で、早めに今後の方針を出したい」と述べた。

計画を推進した福山氏は取材に「市民が(幼稚園・保育所の)一極集中に反対したことが敗因だ」と述べた。

■解説

現職への反発、追い風に 求められる現実的・具体的な説明
総合こども館計画の白紙撤回を訴えた水野氏が戦いを制した。勝因は維新議員らの支援もあるが、計画を進める現職への反発が追い風となった。

こども館で、市民が求めているのは現実的かつ具体的な説明だ。例えば0~2歳児の送迎方法。400人規模の公立認定こども園をもつ滋賀県長浜市では、目が離せない乳児は各家庭が送迎する。安全面で「バスの送迎は無理だ」(同市担当者)からだ。阪南市はワンボックスカー活用を検討中だが、子どもにきちんと目が届くのか。市民の不安、疑問は解消されないまま、選挙戦に突入した。

一方「白紙撤回」で全て片付くほど事態は容易ではない。市は既に予定地の空き店舗を約3億8000万円で取得したが、原資の一部である交付金はこども館整備が前提で、撤回すれば国への返還も考えられる。老朽化が進む現存7施設の安全確保も急務だ。水野氏には、市民の関心の高い課題が待っている。

http://mainichi.jp/articles/20161031/ddl/k27/010/206000c

着地点はどこになるのでしょうか。人口減少が続く郊外都市における、市立幼稚園・保育所のあり方が問われています。