悪い予感が当たってしまいました。平塚市の無認可保育所「ちびっこBOY」で乳児が死亡した事件で逮捕された男性保育士に、幼児に対する強制猥褻罪で懲役3年の実刑を受けて服役した過去があったそうです。

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(12/26追記)
女児に対する強制猥褻等の罪につき、横浜地裁は懲役15年を言い渡しました。別途、男児死亡については裁判員裁判で審理されます。併合罪には当たらないのですね。

平塚の幼児わいせつ、元保育士に懲役15年 横浜地裁

 神奈川平塚市の認可外保育所「ちびっこBOY」などで預かっていた女児計15人に対する強制わいせつと児童買春・児童ポルノ禁止法違反の罪に問われた元保育士の角田(つのだ)悠輔被告(36)に対し、横浜地裁は26日、懲役15年(求刑懲役18年)を言い渡した。深沢茂之裁判長は「児童の人格を無視し、玩具のように扱った」と非難した。

 判決によると、角田被告は、横浜、平塚両市の保育所に勤務していた2015年4月から16年3月までの間、保育所で預かっていた計15人の女児に対し、下半身を触ったり、写真や動画を撮影したりした。

 角田被告はこれらの事件の前の10年11月、幼児に対する強制わいせつの罪で懲役3年の実刑判決を受けた。出所後、その事実を隠して保育所に勤務していた。

 角田被告は「ちびっこBOY」に勤務していた15年12月、夜勤中に男児(生後4カ月)に暴行を加え、脳挫滅で死亡させたとして傷害致死罪でも起訴されており、同罪は裁判員裁判の対象事件のため、来年1月22日から別に裁判が予定されている。
https://www.asahi.com/articles/ASKDQ452LKDQULOB011.html

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幼児わいせつで実刑、保育士登録消されず 平塚乳児死亡

神奈川県平塚市の認可外保育所「ちびっこBOY」で昨年12月、生後4カ月の男児が死亡した事件で、傷害致死容疑で逮捕された元保育士の角田(つのだ)悠輔容疑者(34)について、神奈川県警は10日、別の女児に対する児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)と強制わいせつの疑いで再逮捕し、発表した。角田容疑者は「やった覚えはない」と容疑を否認しているという。

捜査関係者などによると、角田容疑者は2006年に専門学校を卒業後、東京都や神奈川県の保育所や児童養護施設を転々としていた。

幼児の体を触った強制わいせつ罪で懲役3年の実刑判決を10年11月に受け、控訴せずに服役。児童福祉法では保育士が懲役刑を受けた場合、「刑を終えて2年間は保育士として登録できない」と定めており、角田容疑者は出所後、保育士登録を取り消されていなければならなかった。

ところが、角田容疑者の登録先の神奈川県は判決を把握できず、保育士として登録され続けた。県次世代育成課の担当者は「警察などから通知される仕組みはなく、報道がなければ把握できない」と説明する。

角田容疑者は出所後の14年7月に東京都内の保育所に勤務し、15年1月に「ちびっこBOY」に転職。同年6月に一度やめたが、人手不足などを理由に間もなく復帰した。「いったん退職したのは、子どもへのわいせつ行為の疑いがあったためだ」と保育所の関係者は明かす。

http://digital.asahi.com/articles/ASJC142K4JC1ULOB01X.html

過去の経歴や事件の流れ等をまとめてみます。

年月事柄
2006年保育専門学校(品川区)を卒業
2006年以降保育所や児童養護施設を転々とした
2010年?幼児に対する強制猥褻の疑いで逮捕
2010年11月懲役3年の実刑判決が確定・服役
2013年夏~秋?刑期満了で出所?
2014年7月東京都内の保育所へ勤務
2015年1月ちびっこBOYへ転職
2015年6月退職したが、まもなく復職
2015年12月乳児死亡事件が発生
2015年10月傷害致死容疑で逮捕
2015年11月起訴、児童ポルノ禁止法違反・強制猥褻の疑いで再逮捕

幼児に対する強制猥褻で服役した過去がある人物が、あろう事か再び保育現場で従事していました。あってはならない事です。悪い評判は職員間でもあったそうです。事件直後、職員は薄々と「あいつが怪しい」と感づいていたのでしょう。

こうした事態を防げなかったのでしょうか。児童福祉法では「保育士になることができない」事項を定めています。懲役刑を受けた場合も該当します。

第十八条の五  次の各号のいずれかに該当する者は、保育士となることができない。
(中略)
二  禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して二年を経過しない者

しかし、保育士登録等を所管する神奈川県を判決を知らず、登録を抹消しなかったそうです。知らなくて何も出来なかった県の主張は仕方ないと感じる一方、保育施設や保育士資格を信頼して子供を預けている利用者にとっては納得できない話でしょう。

同種事案として教員免許状が思いつきます。何らかの理由で免許状を失効したにも関わらず、行政に把握されないケースです。しかし教育職員免許法によると、教員免許状が失効した場合は官報に公告され、全国の都道府県教育委員会へ通知されるそうです。

(失効等の場合の公告等)
第十三条  免許管理者は、この章の規定により免許状が失効したとき、又は免許状取上げの処分を行つたときは、その免許状の種類及び失効又は取上げの事由並びにその者の氏名及び本籍地を官報に公告するとともに、その旨をその者の所轄庁及びその免許状を授与した授与権者に通知しなければならない。

この様な公告が官報に掲載されます。

20161111

失効事由は「公立学校の教員が懲戒免職の処分を受けた」に該当します。元教員は今年10月に強制猥褻の疑いで逮捕され、同日に懲戒免職となったそうです。官報への掲載も早期に行われています。免許状の失効を行政が把握できない事態は無さそうです(皆無ではありませんが)。

今後、保育士でも同様の取扱いを行うという議論が浮上する可能性がありそうです。