「死を招いた保育」(1)事実経過・事故原因」の続きです。

では、こうした保育所の問題点に対し、保護者はどの様に認識していたのでしょうか。
事故後に保護者に対して行ったアンケートの結果、こうした点が挙がりました。

(ア)保育の理念、方針について今までに説明を受けたことがない 22.7%
(イ)保育士からの日ごろの子どもの状態の説明不足 24.3%
(ウ)連絡帳の返事への不満 15.4%
(エ)保育者の子どもや保護者への姿勢・言動への不満 18.5%
(オ)職員のチームワーク、雰囲気への不満 21.9%
(カ)保育に取り入れている遊びの内容への不満 15.4%
(キ)生活面への配慮への不満 12.7%
(ク)しつけの仕方への不満 15.4%
(ケ)施設設備の不備 21.5%
(コ)安全管理体制の不備 48.4%

上記の内容のコメントで留意すべき記述を上げてみると、保育方針について「以前はのびのびした保育の中にもメリハリがあったが、現在は放任といった感じがする」、子どもの状態の説明や連絡帳の返事については「忙しさを理由に書いてくれないときが多々ある」、「小さい子は自分で報告ができないので連絡帳に詳しく書いてほしい」、「時間外を利用しているので話ができない」、「こちらから聞いても話をしてくれない先生、あいさつすらしてくれない先生もいる」、「連絡帳に全体的な様子を書くのでなく、その子、その子のやりとりや出来事を書いてほしい」、保育士の言動や姿勢については「保育士が子どもを呼び捨てにする」、「クラスの児童を守ろうという意欲が感じられない」、「権威的姿勢が強すぎる先生がいる」、職員のチームワークについては「外傷や出来事に対応した先生が帰ってしまうと保護者に伝わらない」、「トラブルや困難を抱えている職員に対してのサポートが不十分である」、遊びに関しては「子どもの年齢に応じた集団形成が成立してない」、「外遊び、異年齢交流が減った。各クラスへの囲いこみが目立つ」、しつけ方に関しては「先生が頭ごなしに怒っていて、子どもは理解できないでいる」、施設設備および安全管理に関しては「門の施錠の仕方が甘い」、「三角倉庫の前の廊下で走ってきた子ども同士がぶつかっている」、「各部屋にエアコンの設置をしてほしい」、「プールに入らない子どもを、子どもだけで長時間保育士が監督せずに遊ばせている」、「保育士の危機意識はどうなっているのか疑問」、「緊急時の連絡体制や、避難場所を知らされていない」、その他保育所の運営に関して「園全体としての変更事があるときに、保護者に十分説明なしで変更しないでほしい」、「保護者と共に考えた保育にしてほしい」、「保育士を増員してほしい」、「クラスごとでなく、保育所全体の保育のことをもっと考えてほしい」などの不満や改善してほしい要望が出ている。
この結果を見ると、事故以前から安全管理や保育者の姿勢、保護者と保育所との関係が万全であったとは言いがたいことを物語っている。もちろん、調査結果の中には、上尾保育所の保育に満足しているという声も聞かれ、上記した意見は数字の上では、多数とは言えない。しかし、少数とは言え、保護者の中からこうした意見が出ていることに真摯に対応していくことが、保育所の課題であろう。
上尾保育所事故調査委員会報告書より

多かれ少なかれ、こうした不満はいずれの保育所にもあるでしょう。
逆に考えると、こうした点を予め留意して保育を行っていたり、見学の際に丁寧かつ真摯に答えて頂けるか否かが重要だと思います。
保育所を見学する際には表面的な面のみならず、既に登園している保護者からの不満・苦情の声やその対応、保育所内で発生した事故の内容と対処方法といった面を訊くと、その保育所の姿勢が窺えるでしょう。

上尾保育所は保護者からの不満の声が決して少なくありませんでした。
特に2人に1人が「安全管理態勢の不備」を指摘しているのが象徴的です(事故後のアンケートというのも一因ですが)。

余談ですが我が家も保育所内での事故に巻き込まれた経験があります。
入所数ヶ月後に室内で事故に遭い、約2ヶ月ほどの通院を余儀なくされました。
(保育所での事故・ケガや病気については別途まとめる予定です。)

入所中や入所を検討している保育所の実態が実は当時の上尾保育所と同じだったら・・・・と思うと、恐ろしくて子供を預ける気になりません。
大半の保育所は十分な保育水準を満たしているでしょうが、中にはこうした劣悪な保育所もあるという実態をご認識下さい。
大阪市内においても時折、「○○保育園は×××という酷い保育を行っているので転所したい」という話をうかがいます。