平成28年10月1日における大阪市の保育所入所待機児童数が公開されています。昨年とほぼ同時期の公表となりました。前年同期と比較して待機児童数はほぼ横ばいですが、入所保留児童は増加しています。

平成28年10月1日現在における保育所等利用待機児童数は、本年4月1日に比べて235人増加、昨年の同時期に比べて3人減少し、508人となりました。利用保留児童数については、昨年の同時期より142人増加し、5,332人となりました。

また、保育所等在籍児童数は、昨年度の同時期に比べて1,154人増加し、50,089人となりました。
(以下省略)

http://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000334741.html

保護者感覚に近いのは多くの児童が除外される待機児童ではなく、申し込んだが入所できない入所保留児童でしょう。推移を基に、原因を推測してみます。

20161216

大阪市の保育所等利用待機児童数について(平成28年10月1日現在)別添資料より作成

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入所保留児童最多は西区

今年10月1日時点での入所保留児童が最も多かったのは、西区の376人でした。昨年より20人増えました。

入所倍率・入所者の点数帯等のデータを見る限り、市内で保育所等へ最も入所しにくいのは西区(特に東部)です。入所保留児童の多さからも裏付けられました。

保留率(保留児童/全就学前児童)も6.8%と最も高い割合です。西区の未就学児の内、15人に1人は保育所等へ申しこんでいるが入所できていない児童となります。

原因は単純です。「就学前児童の急増」です。平成25年4月では4,679人でしたが、平成28年4月には5,541人へと増加しました。3年で約20%も増加しました。多くは新設されたタワーマンション等に居住する世帯でしょう。

保留児童が集中しているのはなにわ筋界隈です。タワーマンションの建築が進んでおり、本町・淀屋橋等にも通いやすい地域です。

この地域の保育所不足は深刻です。入所倍率が3倍を超える保育所は珍しくありません。また、入所できるまで認可外保育施設を利用している世帯が多い為か、入所最低点は極めて高い水準となっています。

数・点数、両方の面から、保育所等への入所が極めて難しい地域と言えます。

2位は北区

次いで多かったのは北区の373人でした。増加幅も市内で最も大きい81人です。

北区は保育所等の整備に積極的に取り組んでいる地域の一つです。多くの地域で保育施設が新設されており、昨年10月と比べて在籍児童数は約200人も増加しています。在籍率(=整備率)は市内平均(39.7%)をやや下回る33.3%です。

しかし、入所保留児童は減少しません。一つの理由は就学前児童数その物の増加です。昨年10月から238人増えて5,602人となてちます。

また、北区は梅田・淀屋橋等に近く、共働きしやすい環境です。保育を必要とする世帯・児童が相対的に多いのではないでしょうか。

それを裏付けるのは、利用保留児童に占める「育休中」の割合です。同区の利用保留児童373人の内、「育休中」は163人と半数近くを占めています。東成区に次いで高い割合です。

申し込んでも保育所等に入れない場合、育休延長という形で対処していると推測されます。

引っかかるのは、「育休中」という理由の急増です。昨年は22人に過ぎませんでした。統計手法に変化があったのでしょうか。

特に保留児童が集中しているのは、区南東部です。数多くのマンションが建ち並び、建設され続けています。しかし、保育所は全く足りていません。一斉入所での保育所入所倍率が2倍を超えるのは当然となっており、年度途中入所は極めて困難です。

こうした地域で4月の一斉入所で入所できない場合、多くは翌年4月まで入所できないでしょう。転居時期に気を遣います。

3位は城東区

3位は城東区の351人でした。昨年より22人増加しています。なお、城東区の就学前児童数が市内2位の8,320人である点にご注意下さい。

実は城東区の保育所在籍率(=整備率)は、市内平均39.7%より高い44.6%に達しています。区全体としてみれば保育所等の整備は進んでいる一方、特定地域に入所保留児童が集中していると推測されます。

考えられるのは関目・蒲生四丁目駅周辺です。この地域にある保育所は入所倍率が高く、入所最低点も高くなっています。4月時点でほぼ全ての保育所で定員が埋まっており、年度途中の入所は困難でしょう。

この地域は工場跡地に大規模マンションが建設され、子育て世帯が数多く住んでいます。以前から小学校は過密気味で、特に鯰江小学校は児童数1000人を超えるマンモス小学校です。小学校の過密化・マンモス化が保育所にも影響している形です。

淀川区も300人越え

入所保留児童が300人を超えたのは、上3区の他に淀川区が該当します。昨年から35人減少して330人となっています。

同区は在籍率が36.7%と市内平均をやや下回るものの、保留率は市内平均とほぼ同一の4.1%です。就学前児童数が8,078人と多い事から、保留児童数も多くなってしまっています。

同区の詳しいデータを見ると、保留児童の多くは再開発が盛んな三国・宮原地域で生じていると推測されます。一斉入所で入所できなかった児童に加え、新築マンション等へ年度途中に転居した児童が加わっているのでしょう。

在籍率が低い中央区・天王寺区・阿倍野区

保育所等在籍率が30%を切っているのは、昨年と同じく中央区(25.3%)・天王寺区(29.9%)・阿倍野区(29.9%)です。見事に上町台地に位置しています。保育所等が明らかに不足している地域です。

反面、この3区は幼稚園が多くて充実しています。なお中央区は市立幼稚園が多い、天王寺区は市立と私立が半々、阿倍野区は私立幼稚園が殆どという特徴があります。

ここ数年間、中央区と天王寺区は保育所等を積極的に新設し、在籍率も年々上昇していました。しかし、阿倍野区は消極的で、この1年間の在籍率は「0.1%」しか伸びていません。

なお、平成30年4月には阿倍野区での保育所が新設される予定です(詳細はこちら)

在籍率5割超は大正区・生野区・平野区・西成区

全児童の半数以上が保育所等に在籍しているのは、大正区・生野区・平野区・西成区です。以前に多くの保育所が作られて在籍率が他区より高めだったのに加え、児童数の急減によって多くの保育所で募集数に余裕がある状況となってきています。

支援施設マップで見ると、殆どの保育所が入所しやすい緑色で表示されています。狭い範囲に数多くの保育所が集中している地域もあり、保育所の過剰感は否めないでしょう。今後も市立保育所を中心に統廃合が行われるのではないでしょうか。