想定される地域と送迎先

では、具体的にはどの地域に「送迎ステーション」を設置し、やや離れた地域にある「本園」とをバスで結ぶのでしょうか。入所できない児童が多数存在する地域を一つ一つ検討してみます。

西区(浪速区北部も含む)

候補となるのは大正区です。同区は未就学児の減少が著しく、3-5歳児の空きがある保育所等はチラホラ見受けられます(細心の情報はこちら)。やや規模が大きい保育所もあり、登園用バスを備えている保育所もあります。

天王寺区

生野区が濃厚でしょう。3-5歳児がまとまって空いている施設もあります(詳細はこちら)。

中央区(東成区西部を含む)

東成区東部が考えられます。但し、3-5歳児の定員に余裕がある保育所等はあまり無く、バス登園の児童を受け入れる余力があるかはやや疑問が残ります(詳細はこちら)。

阿倍野区(北部)

平野区北部が想定されます。特にJR平野駅・加美駅の周辺は保育所が集中する一方、3-5歳児の空きがある保育所は少なくありません(詳細はこちら)。

北区東部

有力なのは東淀川区西部でしょう。4-5歳児の空きがまとまって生じている保育所が少なくありません(詳細はこちら)。やや距離が離れている様に感じますが、天神橋筋・長柄橋を越えればあっという間に到着します(渋滞が少し心配)。

城東区

考えられるのは旭区東部です。特に多くの市立保育所の4-5歳児クラスに空きが生じています(詳細はこちら)。

都心部を中心に送迎先を検討してみました。

周縁部の3歳児クラスも空きが少ない

多くの送迎先に共通しているのは「空きが多く生じているのは公立保育所」という点です。保育士配置基準等との関係からか、多くの大阪市立保育所の定員は「3歳児20名、4-5歳児各30名」とされています。

一方、3歳児に余裕がある保育所は決して多くありません。待機児童問題が深刻ではない地域でも、一定数の児童は3歳児から保育所へ入所している為でしょう。

皮肉な事に、カギを握りそうなのは「4-5歳児の受入人数に余裕がある公立保育所の活用」となりそうです。3歳児クラスの定員を4-5歳児と同程度へ増員できれば、都心部に住んでいる児童も入所が可能となるでしょう。

しかし、大阪市が小規模保育を都心部で運営する是非、バス登園事業の可否等を鑑みると、公立保育所を活用するのは決して容易ではなさそうです。一部の私立小規模保育を送迎ステーションとする場合、選ばれなかった他施設と公平性の観点から問題が生じてしまいそうです。

となると、やはり周縁部に本園がある私立保育所が都市部に小規模保育(分園を含む)を設置し、バス送迎を行うのが近道かもしれません。

実は既にこうした条件を概ね備えている保育所も存在しています。大阪市も既に複数の事業者へヒアリングを実施し、感触を掴んでいると想定されます。

こうした施設は本園が離れた地域にあるのを敬遠し、保護者からやや選ばれにくいという難点がありました。しかし、バス送迎事業が本格化されれば、徐々に受け入れられていくのではないでしょうか。

ネックは「3歳児の募集数」です。バス送迎事業を軌道に乗せるには、一定数の3歳児募集数が必要です。具体的には、少なくとも都心部に設置する小規模保育等の卒園児を全て受け入れるだけの募集数が必要です。

懸念は多い

一方、懸念もあります。

保護者目線で心配なのは、日々の保育の様子が分からないという点です。保育所まで直接送迎するのであれば、園内の雰囲気や保育士との会話から我が子の様子をうかがい知る事が出来ます。

しかし、バス送迎では知る術は限定されます。連絡帳・お便りでもカバーしきれません。保育士との関係も希薄化してしまうでしょう。

同時に他の保護者と話をする機会も限られます。同じ年齢の子どもを育てている保護者を中心に、毎日保育所で顔を合わせていると自然と会話が生まれます。中にはプライベートで遊びに行ったり、親同士で飲み会を行うグループもあります。

が、送迎ステーションで顔を合わせるのは、0-2歳児の保護者が中心となってしまうでしょう。子どもの年齢が異なるので、共通の話題も少なくなります。いわゆる横の繋がり、情報交換を行うのは難しくなります。

保育所やその地域に関心を持つ機会も少なくなるでしょう。保護者と殆ど会話をした事がない園長先生、光景が想像できない本園周辺の風景、保育所が無ければ行く機会が殆どない地域となれば、自然と無関心となるのは当然です。

同時に住んでいる地域との関係も薄くなります。特に馴染みがない地域に住んでいる場合、子どもを通じて地域との関係を有するケースが少なくないでしょう。子どもが他の子とお友達になり、その保護者やご近所さんと繋がるが深くなっていきます。

しかし、違う地域の保育所へ通っていると、自宅近所の同年齢の子供達と遊ぶ機会は少なくなります。親も地域との関係が持てず、孤立してしまう危惧も感じられます。

SNS等を見ていると、多くの方が「体調不良時のお迎え」を心配しています。しかし、私はさほど心配していません。

そもそも0-1歳児とは異なり、2-3歳児となると子どもの体力がつき、体調を崩す機会はめっきり減ります。保育所を休む日や病院へ通院する機会はめっきり減少します。

また、送迎ステーションと本園との距離は遠くても4-5kmでしょう。勤務先等に緊急連絡があってから迎えに行くまでの間に、送迎ステーションへ連れてきてもらえるでしょう。周縁部にある保育所はバス以外に乗用車を備えている施設が多く、緊急時には適切な対応が取られるでしょう(制度設計は必要です)。

近所の保育所が理想、バス送迎は苦肉の策

在るべきなのは「住んでいる地域にある保育所への登園」です。保育所選びに困った際、私がしばしば送るのは「迷ったら近くの保育所」という言葉です。

近所にある保育所は雰囲気等も分かり、周辺の環境も容易に分かります。何かトラブル等が発生した時も素早く駆けつけられます。保育園のお友達も近くに住んでいて、同じ小学校へ入学する児童も少なくないでしょう。

バス送迎事業は確かに都心部の待機児童問題、特に3-5歳児の保育所不足を解決する方法として、現実的な施策の一つでしょう。しかし、あくまで「苦肉の策」という印象です。

本道はやはり都心部での保育所新設です。多くの保護者が身近な地域に設置されている保育所への入所を希望しています。小規模保育を第1希望とする保護者は少なく、送迎バス事業が導入されても大きな変化はないと考えられます。