待機児童問題の解消に関して、大きな影響を与える記事です。

大阪市で保育士の求人倍率急上昇 アベノミクス効果
2013.10.29 10:55 [景気・労働・雇用]

 待機児童問題が深刻な大都市では今年、保育士の有効求人倍率が急上昇している。大阪労働局によると、8月の有効求人倍率は前年同月比0・41ポイント高い1・23倍にまで上昇。安倍政権が4月に打ち出した「待機児童解消加速化プラン」で保育士の需要が高まっているためで、厚生労働省は全国でハローワークでのマッチングに力を入れている。
 保育士をめぐっては例年、採用のピークを迎える1~2月に有効求人倍率が1倍を超え、5~6月に底を打つ。しかし、大阪では今年、5月時点で前年同月より0・29ポイント高い0・95倍。6月が0・37ポイント高の1・01倍、7月は0・45ポイント高の1・14倍まで上がった。
 保育士不足の背景には政府の政策に加え、待遇面でのミスマッチがある。厚労省が5月に実施した調査によると、保育士の資格をもつ全国のハローワークでの求職者3万2千人のうち、「賃金が希望と合わない」などを理由に、1万6千人が保育士としての就業を希望していなかった。
 一方、待機児童解消を目指す自治体は認可保育所の新設を急いでおり、大阪市西区では来年4月、定員70人の私立認可保育園がオープンする予定だ。
http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/131029/wec13102910570003-n1.htm

本記事での「アベノミクス」とは安倍政権による経済政策ではなく「待機児童解消加速化プラン」を指しています。
大阪市による積極的な認可保育所・保育ママの新設政策もあり、大阪労働局管内での保育士の有効求人倍率は年々上昇しています。
このままのペースで推移すると、平成26年1月~3月にかけての保育士の有効求人倍率は2倍を軽く超えてしまうと予想されます。

保育士の確保が難しくなると、最も大きな影響を受けるのは新設保育所です。
園舎は建設できたけど保育士が集まらなくて定員通りの児童を受け入れる事ができない、という事態が発生しかねません。

では、どうして保育士が不足しているのでしょうか。
保育所の新設等によって保育士への需要が高まる一方、ハローワークの保育士資格を有する求職者の内、半数が保育士としての就業を希望していない実態があります。

保育士資格を有しながら保育士としての就職を希望しない求職者に対する意識調査(平成25年5月)

〇調査結果(全国:回答数958人)
(1) 性別
男性 2.8% 女性97.2%
(2) 年齢
20代 32.2%
30代 26.1%
40代 20.7%
50代 15.3%
60代以上 5.6%
(3) 保育士としての勤務経験
ある69.7% ない30.3%
(4)((3)で「ある」と回答した者の)保育士としての勤務年数
1年未満 10.0%
1年以上3年未満 20.2%
3年以上5年未満 20.5%
5年以上10年未満 30.7%
10年以上20年未満 14.1%
20年以上 4.2%
(5)保育士への就業を希望しない理由(複数回答可)
回答が多い順から「賃金が希望と合わない」「他職種への興味」「責任の重さ・事故への不安」「自身の健康・体力への不安」「休暇が少ない・休暇がとりにくい」など
(6)(5)が解消された場合に保育士を希望するか
希望する 63.6% 希望しない28.6%
大阪労働局による保育士確保対策について

大阪市も大阪市保育士・保育所支援センターを開設して保育士の確保に乗り出しています。
ただ、保育士への就業を希望しない理由が保育所・保育士制度における構造的な問題だけに、短期的に解決するのは難しいと思います。
平成26年4月開所が危ぶまれる新設保育所の理由の一つに保育士の確保難があるかもしれません。
今後の動向は引き続いて観察していきます。