以前に「大量の入所辞退者が発生か」とお伝えした高等森友学園保育園(社会福祉法人肇國舎)、園児に続いて保育士不足に追い込まれています。

大阪市は4日、学校法人森友学園の籠池(かごいけ)泰典氏が代表を務める社会福祉法人が運営する認可保育園「高等森友学園」(大阪市淀川区)から、保育士2人が退職したとの連絡を受け、保育士資格を持つ職員を派遣すると明らかにした。必要な保育士数が不足し認可基準に抵触するための緊急措置で、5日から約1カ月間、保育士資格がある市職員を最大6人派遣する。市によると、民間保育園に自治体の保育士を派遣するのは異例という。

市によると4日午前、籠池氏の妻で園長を務める諄子(じゅんこ)氏から連絡があった。今月1日現在で0~5歳の幼児47人が在籍。市の基準では6人以上の保育士が必要だが、園は市に「4日までに2人が自己都合で退職し、5日以降は保育士が4人しか確保できない」と説明したという。

退職理由について園側は「一連の問題で職員に負担がかかっていた」と説明。市は、給与遅配などは確認されていないとしている。

市によると、昨年12月時点で園が報告していた保育士数は11人。運営委託費や補助金などの不正受給疑惑で市が先月31日に立ち入り調査した際、保育士数の確認を求めたが、籠池氏らは回答を留保したという。

市は配置基準を満たすため、早急に保育士を確保するよう園に口頭で指導した。

http://www.sankei.com/west/news/170404/wst1704040097-n1.html

他紙でも報じています。
森友学園の保育園 保育士退職で大阪市が職員派遣へ(NHK)
森友学園 大阪市が保育士派遣 退職相次ぎ(毎日新聞)
「森友保育園」に保育士派遣=退職者で運営困難に-大阪市(時事通信)
保育士辞めピンチ…森友の保育園に職員派遣へ 大阪市(朝日新聞)
保育士足りず、大阪市が緊急派遣(関テレ)

報道によると同保育園には幼児47人が在籍しています(注:定員と欠員から推測すると40人)。保育士配置基準に照らすと6人以上の保育士が必要にも関わらず、5日以降は4人しか確保できないとしています。

保育士配置基準は最低基準です。実際にはこれを上回る保育士で保育を行っている施設が多いと聞きます。最低基準すら割り込んでしまうのは、異常な事態です。

保育園の説明によると「一連の問題で保育士に負担が掛かっていたのが退職理由」とされています。しかし、この説明通りであれば、新年度が始まったばかりのこの時期に退職するのが不思議です。加重な負担であれば、問題が表面化した2-3月の段階で退職を申し出ていたのではないでしょうか。

大きな契機となったのは、塚本幼稚園・森友学園保育園等が所有・利用している不動産への仮差押えではないでしょうか。財務内容への不安が表面化し、「園児を思って我慢していたが、この先の待遇の不安には耐えられない」という思いです。

また、同保育園で勤務していた保育士の約半数が、塚本幼稚園の職員名簿にも記載されていたそうです。重複分を整理した結果、保育士不足が表面化した可能性もあります。

自治体からの保育士派遣は異例

保育士欠員を受け、大阪市は緊急的に保育士資格を有する職員を派遣するとしました。大阪市は多数の公立保育所を運営しており、市役所本庁・区役所の保育担当部署にも保育資格を有する職員が在籍しています。

既に公立保育所で勤務している保育士を派遣するのは困難でしょう。事務部局に在籍している経験豊かな保育士を一時的に派遣するのではないでしょうか。

自治体が民間保育園へ保育士を派遣するのは極めて異例です。他自治体も含めても聞いた事がありません(行われているかもしれませんが)。自律的な運営が困難になったの保育所へ、東京都文京区がOB(園長経験者)を巡回指導の名目で派遣・ほぼ常駐させていたのが限界事例ではないでしょうか。

同保育園が大阪市へ泣きつく前に、派遣会社等に依頼して保育士を確保しようとしたと考えられます。しかし、一連の問題が大きく報じられており、同保育園への派遣を断られ続けたと容易に推測できます。

大阪市は最大6人の派遣を予定しています。複数部局から派遣するのでしょう。高等森友学園保育園での保育に携わると同時に、保育内容を正常化したいという思いもありそうです。

最も重要視されるのは「在籍している園児の安全」です。その為には十分な保育士数が不可欠です。極めて異例の対応ですが、大阪市・高等森友学園保育園の行動は仕方ないでしょう。

気になるのは、今後、同保育園が独自に保育士を採用できるかという点です。大阪市は1ヶ月程度の派遣を予定しています。「大型連休までには何とかしなさい」と示唆していると感じられます。

仮に保育士不足が今後も継続するのであれば、森友学園系列法人での運営に赤信号が灯ります。経営陣の総交代、という展開も予想されます。

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(4/10追記)
予想したとおりの動きです。大阪市長が「月内」をデッドラインに設定しました。

森友系保育園に「月内判断を」大阪市長、運営可否で

大阪市の吉村洋文市長は10日、保育士が退職により不足している学校法人「森友学園」系列の「高等森友学園保育園」(同市淀川区)に対し、保育士を自力で確保して運営が続けられるかどうかを4月中に判断するよう求める考えを示した。

市によると、保育園は、森友学園の籠池泰典前理事長が代表を務める社会福祉法人が運営し、園長は籠池氏の妻諄子氏。

1日時点で47人の園児が在籍し、基準に照らすと6人の保育士が必要。市は4日、保育士2人が退職し、勤務できるのが4人しかいなくなったと保育園から連絡を受けた。緊急措置として保育士資格を持つ市職員を1カ月間、派遣することを決めた。

https://this.kiji.is/224089087829116411

仮に運営法人が運営を断念しても、在園している園児の保育は継続されねばなりません。この地域は待機児童・保留児童も生じており、園児を各園で分散して受け入れるのも困難です。
一時的に大阪市や外郭団体等が運営を代行しつつ、経営陣の総交代・他法人への事業譲渡等、現実的な解決を探っていく事になるのではないでしょうか。

4月中の判断としていますが、現実的には「大型連休前」の判断を迫っているでしょう。仮に運営を断念する場合、大型連休中に対応等を行い、保育の継続を図るものと考えられます。
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(4/13追記)
デッドラインを20日まで切り上げました。

大阪市の吉村市長は、学校法人「森友学園」の籠池前理事長の妻が園長を務める大阪市内の認可保育園について、必要な人数の保育士を確保できていないことから、保育園側に対し、運営を継続するのかどうか、今月20日までに判断するよう求めたことを明らかにしました。

学校法人「森友学園」の籠池前理事長の妻が園長を務める大阪・淀川区の認可保育園「高等森友学園保育園」では、保育士が足りなくなったことから、市は緊急措置として、今月5日から保育士の資格をもつ職員6人を派遣していますが、市によりますと、保育園では、必要な人数の保育士を自力で確保できていないということです。

これについて、吉村市長は13日の記者会見で、職員の派遣は今月28日で打ち切ると保育園側に伝えたとした上で、「今月20日までにこれからもやっていくのか、いかないのかの判断を求める」と述べ、保育園側に対し、運営を継続するのかどうか今月20日までに判断するよう求めたことを明らかにしました。

その上で吉村市長は「続けないのであれば、今の園児を支えるために、どうするのかを考える」と述べ保育園側が運営の継続は難しいと判断した場合には、子どもたちの受け入れ先などを検討したいという考えを示しました。

一方、吉村市長は、森友学園が運営する大阪・淀川区の「塚本幼稚園」に対し、障害のある子どもの受け入れ人数に応じて支給している市の交付金について「園が保存しているはずの原本を、14日までに提出しなければ、交付決定を取り消す」と述べました。

http://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20170413/5155661.html

仮に運営継続を断念する場合、4月下旬から連休明けまでに転園先を調整する計画なのでしょう。4月28日閉園・5月8日から転園というスケジューリングです。

保育所の経営陣が何らかの不祥事を起こした場合、自治体OB等に入れ替えて経営を継続するのが一般的なパターンでした。しかし、高等森友学園の経営陣を入れ替えて運営を継続する考えは市長コメントから感じられません。

淀川区西淀川区の募集枠を見る限り、全ての在園児の転園先に見合う募集数はあります。しかし、高等森友学園保育園の近隣に限ると厳しい状況です。

在籍園児・近隣の保育所等に対し、20日の判断を待たずに転園希望先・受入可能数が打診されるのではないでしょうか。

局面は最終段階です。高等森友学園保育園に残された時間は1週間です。

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(4/14追記)
大阪市長会見で、市長が詳しく答えています(30分頃から)。
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・4月20日までの回答を待ちたい
・既に5月転園希望を申請している人もいる
・大阪市は待機児童問題が深刻で、特別扱いはできない
・現時点では他の転園希望者と同じ基準で判断する
・仮に休園した場合には、保護者の個別の希望を聞きながら考えていきたい
・この様な事態は大変遺憾に思う(怒り)