保育所等の運営費用の多くは、国からの補助金によるものです。補助金額は施設の定員・子供の年齢・地域等によって機械的に定められています。

一部で問題視されているのは「地域区分」です。特に大都市と近接している一部自治体が、地域区分の違いで不利益を被っている様子です。

厚生労働省は17日、全国の自治体と待機児童の解消策を話し合う対策会議を開いた。待機児童を多く抱えていたり、待機児童数を大きく減らしたりした全国9市から首長などが出席した。自治体からは国の補助金にある保育士給与の地域手当の見直しを求める意見が出た。

塩崎恭久厚労相は会議で「子育ては女性だけの仕事ではなく、男性の育休取得促進が大事で、働き方改革を通じて待機児童解消にもつながっていくのではないか」と語った。

認可保育所は国や自治体からの補助金と親からの保育料で運営している。補助金額は政府が定める「公定価格」で決まり、地域によって保育士の給料や土地の賃借料に差をつけている。

ただ一部の地域では不公平感が出ている。対策会議では千葉県市川市の大久保博市長が「隣の江戸川区の方が市川市より保育士給与の地域手当が手厚く、人材が流れてしまう」と懸念を示した。埼玉県川口市の奥ノ木信夫市長や千葉県流山市の井崎義治市長も同様に地域手当の見直しを要望した。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF17H0S_X10C17A4EE8000/

市川市・流山市・川口市は東京周辺のベッドタウンとして発展し、人口が急増している地域です。主要駅から東京駅・新宿駅等へは概ね1時間前後で辿り着けます。関西に例えるなら、草津市・池田市・三田市・明石市・枚方市が近いイメージです。

では、どうして市川市等が見直しを求めているのでしょうか。

同じ保育所といえども地域によって運営に要する費用は異なります。一般的に都心部は人件費や物価水準が高くて費用が掛かる傾向があります。その為、「地域区分」という形で、一部地域への補助率が上乗せされています。

ただ、地域の実情に応じて定められているとは言い切れません。公務員の地域手当支給対象地域を基に定められているからです。

地域区分は東京特別区(加算率20%)が最も高く設定されています。関西では大阪市・守口市・長岡京市が16%、池田市・高槻市・大東市・門真市・高石市・大阪狭山市・西宮市・芦屋市・宝塚市が15%などとされています(詳細は下記PDF)。

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上で掲げた自治体名を見ただけでも、関西に土地勘のある方は「少しおかしいな」と気づくでしょう。不思議な事に、豊中市や吹田市が12%、堺市・枚方市・尼崎市・京都市が10%と低くなっています。

また、記事で指摘されている市川市は10%、流山市や川口市は6%とされています。東京特別区と10%以上の違いが生じています。

保育所運営で生じる経費の大半は人件費です。地域区分の違いは保育士の給与を直撃します。話を単純化すると、「地域区分の加算率がそのまま給与に影響する」と言えます(実際には少し異なりますが)。

保育所等の新設が相次いでいる都心部では、保育士が著しく足りない状態が続いています。一部の自治体では独自に給与を上乗せする動きも生じています。

待遇が良い勤務先を選ぶのは、保育士も同じです。しかし、補助金額が隣接市と大きく異なり、給与に強く影響してしまうのは釈然としません。

こうした制度に加え、一部の自治体では保育士給与を上乗せする動きも生じています。保育所等の充実度・保育士の安定的な勤務は金次第、とは世知辛い世の中です。