H29保育所等一斉入所結果分析、2回目は各区毎の状況を相互比較していきます。なお、昨年の分析記事はこちらからご覧下さい。

大阪市の保育所入所待機児童数について(平成29年4月1日現在)より作成

入所倍率・保留率ワーストは西区

子育て世帯にとって気掛かりなのは「保育所等へ入所できるのか?」という点です。しかし、区毎の待機児童数は参考になりません。見るべきは利用申込数に対して入所できなった児童の割合、すなわち入所倍率・保留率です。

H29一斉入所で最も入所倍率が高かったのは、前年と同じく西区でした。やや低下したとは言え、入所倍率1.53倍・保留率34.5%は驚きの高さです。3人に1人は入所出来なかった計算です。

この原因は就学前児童の増加です。今年4月1日における西区の就学前児童数は5,867人となっています。前年同時期から326人も増加しています。小学校1校分(1学年54人、2クラス編成)に匹敵する人数です。

とは言え、新規利用申込数は前年とほぼ同値、新規利用児童数は23人増えました。申込数が増えていないのは年度途中に開所した施設もあること、当初から保育所等への入所を諦めている世帯があること、等が理由でしょう。

保育施設も増えています。保育所等在籍数は前年から152人増え、1,883人となりました。しかし追いつきません。

こうした状況から、西区での入所最低点も高止まりしています。天王寺区と並び、入所するのに最も高い点数が必要という地域だと感じています。特になにわ筋沿いが著しく高く感じられます。

北区・天王寺区も入りにくい

西区と全く同じ傾向を示しているのが、北区と天王寺区です。実は大阪市内で就学前児童数が1年間で100人以上増加したのは、戸の3区のみです(次いで中央区の99人)。

北区は新規申込数・利用児童数が共に100人以上も増えました。就学前児童の増加に合わせ、保育施設の整備を積極的に行った為でしょう。

入所倍率は前年から低下して1.39倍に、保留率は28.2%となりました。前年よりやや入りやすくなったかもしれません。

反面、前年より厳しくなったと考えられるのが天王寺区です。倍率が1.45倍、保留率が31.2%と上昇しています。

就学前児童数の増加によって申込数が増えたのに加え、そもそも天王寺区は保育施設の整備が遅れていました。保育所等在籍率は30.7%と市内で3番目に低い数字です(最下位は中央区の27.3%、次いで阿倍野区の29.6%)。

天王寺区は入所するのに高い点数を必要とするのも特徴的です。フルタイム共働きであっても、1歳児はほぼ入所できない結果となっています。0歳児ですら厳しい状況です。

中央区の保留率は26.1%へ低下

昨年と異なる傾向を示しているのが中央区です。入所倍率は1.35倍、保留率は26.1%へ低下しました。驚く事に、保留率が阿倍野区・淀川区を下回りました。

一つの理由は就学前児童数の増加に頭打ちが見えてきた事です。前年から99人の増加に留まりました。ファミリー向けマンションの供給が一段落したのでしょうか?

また、保育所等在籍児童数も大きく増えています。この1年間で11%も上昇しています。市内最大の伸び率です。「保育ニーズの増加に対し、(少なくとも昨年度の)保育所等整備計画が上回った」と言えるでしょう。

とはいえ、在籍率は市内ワーストの27.3%です。整備ペースを緩めると、途端に待機児童が溢れかえります。

なお、中央区は西部(船場地区)・東部(上町台地)・南部(旧南区)で保育所整備・入所に要する点数等が大きく異なります。詳細は区毎の分析記事で触れる予定です(リクエストも頂いています)。

劇的に入所しにくくなった淀川区・東淀川区

H29一斉入所で大きく変わったと感じたのは、「これまで入りやすかった区で入りにくくなっている」傾向がある事です。市内平均を多少上回る保留率が、急に上昇したのが淀川区・東淀川区です。

淀川区は就学前児童数が前年から横ばいながら、申込数・保留数が増加しました。保留率は3.0%上昇して26.2%となりました。

理由として想定されるのは「保育所等への申込率が上昇する一方、保育施設整備があまり進まなかったのではないか?」という仮説です。

淀川区は梅田等に通勤しやすい地域であり、かつ区内に商業施設・事務所等も多く存在しています。就業場所の選択が豊富です。新たに保育所等を利用しようと考えた世帯が増えたのではないでしょうか。

これに対し、保育所等の整備が追いつかなかったのでしょう。在籍児童数があまり伸びていないのが証左です。

また、保育を必要とする児童が特定の地域に集中したとも想定されます。淀川区は宮原・三国地域で再開発が行われており、ファミリー向けのマンション等が多数供給されています。

この地域で保育所等への申込数が増加しても、受け入れられるだけの保育施設はありません。

東淀川区も似た傾向です。同区の保留率は3.8%も上昇して24.1%となりました。肌感覚で入りにくくなったと感じられる水準です。

淀川区との違いは申込数・就学前児童数その物が減少している点です。少子化が進行しているのでしょう。

しかし、保留数は28人増加して210人となりました。区全体としては少子化だが、利便性の高い地域に子どもが集中しているのでは無いか、と想定されます。

有力なのは上新庄駅周辺でしょう。フルタイム共働きでも入れるか分からない保育所等が少なくありません。

大正区・生野区・平野区・西成区で申込率・保留率急上昇!

H29一斉入所で最も驚いた点です。

保育所等が十分に供給されていた大正区・生野区・平野区・西成区にて、保留率が急上昇しています。4区の保留率は前年から3.3-4.7%も上昇しました。

4区は歴史的経緯・少子化の急激な進展により、保育所等は必要十分な量が整備されていました。上昇したとは言え、保留率は10%前後に留まっています。在籍率は50%を超えています。

保留率が上昇したのは申込数・申込率の増加です。生野区の108人を初めとして、4区の申込数は大きく増加しています。反面、就学前児童数は大きく減少しています。申込率が大きく上昇したと推測されます。

次回は区・年齢毎の入所決定状況を

次回は区毎・年齢毎の入所決定状況を掘り下げていきます。今年から区毎・点数帯毎の情報が公開されました。「この区・この年齢で入所するには何点が必要か?」という数字が見えてきそうです。