H29保育所等一斉入所結果分析、3回目は区毎・年齢毎の入所決定状況を考察していきます。なお、昨年の分析記事はこちらからご覧下さい。

今年から「区毎・年齢毎の入所者点数帯」も公表されています。これにより、年齢毎の倍率・点数等を対比出来るようになりました。

区毎か年齢毎か、どちらを主軸として取り上げようか迷いました。区毎は別記事で検討する予定なので、今回は「年齢」を軸として検討します。

全データを年齢毎でソートし、入所倍率・入所者平均点を算出しました。なお、平均点の算出に当たっては、各点数帯の中間値を点数として仮定しています(例:201-210点なら205.5点、保育士は225.5点、150点以下は135.5点としました)。

0歳児が入所しにくかったのは阿倍野区・福島区

まずは0歳児からです。

入所倍率・入所者平均点が最も高かったのは阿倍野区でした。1.25倍・198.3点でした。【H29保育所等一斉入所申込分析】(6)阿倍野区で推測したとおりの結果となりました。

主な原因は0歳児申込数の急増し、遅れがちだった施設整備が全く追いつかなかった為です。ここ数年来、ずっと指摘し続けてきた「阿倍野区の保育所等の整備の遅れ」が爆発した格好です。

厳しさが実感できるのは、入所者の平均点・点数帯です。平均点こそ198.3点となっていますが、190点以下で入所した児童は殆どいません。実質的には200点(フルタイム共働き)で無ければ非常に厳しかった(特に第1希望)のでは無いでしょうか。

平成29年度一斉入所の個別結果(点数・年齢・内定順位等)を集約しましたでもハッキリしています。阿倍野区・200点・0歳児で区内全滅した方が複数名いました。

次に厳しかったのは福島区でした。1.18倍・197.0点でした。倍率の高さは【H29保育所等一斉入所申込分析】(9)福島区で明らかとなっていましたが、点数も高止まりした形です。

阿倍野区と同様、福島区も0歳児申込数が急増しました。タワーマンションが続々と建築されており、来年以降に入居が始まるマンションも少なくありません。中には1000戸近い規模のマンションもあるそうです。

福島区の0歳児もフルタイム共働きが前提となりそうです。ただ、阿倍野区とは異なり、福島区では200点未満でも入所できる可能性は低くありません。

福島区の0歳児入所者の内、190点以下だったのは18人です。入所保留児は26人でした。仮に保留児が全て190点以下だったと仮定すると、「190点以下の内、入所できたのは4割程度」と推測されます。

厳しい事は確かです。ただ、第1希望等に拘らず、希望する保育施設を増やせば入れない事は無い、と感じました。

他に厳しかったのは、天王寺区(1.14倍・195.7点)、西区(1.16倍・195.3点)でした。

また、意外な所で西成区の入所倍率が1.17倍となっていました。中間発表時の申込数が98人、5月結果発表時の申込数が115人、利用数が98人となっています。中間発表後に数字が大きく動いたのでしょうか。

1歳児は西区・天王寺区で平均点200点超

次は1歳児です。0歳児とは異なり、入所倍率・入所者平均点が跳ね上がっています。極めて厳しかったのは西区と天王寺区です。両区とも入所者平均点が200点を超えました。

最も厳しかったのは西区(1.86倍・202.8点)でした。1歳児申込者の内、半数近くは保留となってしまいました。入所できた児童の内、3分の2は201点以上でした。

西区もタワーマンションの建築が続いており、保育施設を幾ら増やしても追いついていません。西船場小学校・堀江小学校に代表されるように、義務教育学校の切迫感も強まっています。

【10/24追記】大阪市立西船場幼稚園(西区)の廃園が検討中・・・小学校増築の為

過密する堀江学区(大阪市西区)の教育・保育環境

この地域は高価格帯のマンションが多い為か、フルタイム共働き世帯が少なくなく、入所に必要な点数も非常に高くなっています。

特に東部地域の保育所は、200点以下で入所するのは絶望的です。加点があっても厳しいです。207点で入所できなかったという話も聞きました。

同区の状況は【H29保育所等一斉入所申込分析】(11)西区で詳しく触れています。非常に厳しい、の一言です。

天王寺区(1.69倍・202.1点)も同傾向です。驚く事に、190点以下で入所した1歳児は「1人のみ」でした。191-200点の点数帯でも、ほぼ全員が200点だったのでしょう。

【H29保育所等一斉入所申込分析】(8)天王寺区で触れたとおり、申込数が急増しました。同区もタワーマンションの建築が続いています。また、同区は文教地区で幼稚園志向が強かった地域ですが、近年は保育所志向が強まっている印象も受けます。

厳しかったのは2区のみではありません。北区(1.65倍・199.6点)、中央区(1.61倍・198.8点)、阿倍野区(1.43倍・200.0点)、福島区(1.39倍・198.1点)も似た状況です。

これらの区はフルタイム共働きでも1歳児入所は容易ではありません。隣接区・小規模保育等、候補を広げておくのが重要でしょう。

2歳児は天王寺区が突出、西区・東淀川区も厳しい

0-1歳児とは異なり、2歳児は天王寺区(2.13倍・201.7点)が他区とは比較にならないほどに厳しい状況でした。

理由は単純です。同区の2歳児募集数はなかなか増えないのに対し、申込数が年々増加している為です。

【H29保育所等一斉入所申込分析】(8)天王寺区の時点では、入所倍率が3.5倍を超えていました。申込後の面接等で厳しい見通しを伝えられ、第1希望を他区に変更したり、諦めて取り下げた方が少なくないのではないでしょうか。

200点以下で入所できた方は、入所者全体の1/3程度です。200点以下の希望者の大半は入所できず、201点以上でも希望施設を絞った方は厳しかったのではないでしょうか。

2歳児が厳しい区は募集数が少ないのに加え、1歳児で入所保留となった児童の申込みが少なくないのでしょう。0歳児入所できなかった場合、1-2歳児入所は更に厳しくなってしまいます。

今後、こうした地域の保育所等(特に小規模保育)では、1-2歳児の入所定員に重点を置くべきかもしれません。0歳児と1-2歳児との違いがあまりに大きすぎます。

西区(1.80倍・195.2点)も全く同じ傾向です。西区は小規模保育・西部地区の保育所等が若干入りやすくなっている為でしょう。全域が入所しにくい天王寺区と違う状況です。

その為か、入所者の半数以上(34人)が200点以下となっています。これは、保留児童48人に迫る数字です。西区の2歳児は、たとえ200点以下であっても入所できる可能性がありました。

意外だったのが東淀川区(1.88倍・178.2点)です。入所者平均点は決して高くないものの、2歳児申込者の半数近くが入所できませんでした。

実は東淀川区の2歳児倍率は数年前から恒常的に高い状態が続いていました。【H29保育所等一斉入所申込分析】(1)大阪市各区毎の比較によると、過去5年で1.6倍を下回った年はありません(元データに異常があったH28を除く)。

同区は少子化が止まりません。今年も就学前児童数が3%程度も減少しました。その為か、保育施設の公募は積極的に行われていません。

しかし、保育施設への申込数は減少しません。自宅で保育していた世帯が保育施設を利用し、短時間でも外で働こうと考えているのでしょう。「子どもが2歳児なったから、そろそろ預けて働きたい」という考えです。

しかし、東淀川区にはそうしたニーズに対応できる保育施設が不足しています。フルタイムにやや足りない程度の勤務時間・自営業であれば2歳児でも容易に入所できますが、より短い勤務時間・求職中の方は厳しかったと考えられます。

大阪市は市内中心部での保育施設の増強に注力しています。その反面、少子化が続きながらも保育施設へのニーズが増大している地域は、やや置き去りにされています。

3-5歳は西区・鶴見区が厳しく

最後に3-5歳です。西区(1.61倍・198.8点)、鶴見区(1.52倍・178.5点)が厳しい状況です。

西区の厳しさは0-2歳児の延長線上にあるでしょう。小規模保育等を卒園する3歳児に加え、幼稚園と保育所の両にらみで申込む世帯も少なくありません。

違う傾向なのは鶴見区です。同区は以前から4歳児入所倍率が市内で最も高かったのに加え、今回は3歳児倍率が急上昇してしまいました。申込数が昨年より増え、募集数が減少した為です。

【H29保育所等一斉入所申込分析】(4)鶴見区によると、昨年度は区内で保育所の新設が行われず(予定していたポピンズが今年10月に延期)、地域型保育事業の卒園児が増加しているのが一因でしょう。

中心部からやや離れている鶴見区は入所者の平均点は高くないものの、近場で短時間でも働きたい方は少なくないのでしょう。2-3歳児の倍率の高さが物語っています。東淀川区と同じですね。

次回は区・年齢毎の入所決定状況を

発表された資料から区毎・年齢毎の入所倍率等は判明しました。しかし、入所を希望する保育所等でどれだけの点数が必要かは読み取れません。

大阪市では各保育所毎の新規入所者の点数を公表しています。次回は区毎・施設種別毎の点数状況を検討していきます。