大阪市では今月から平成30年度保育所等一斉入所申込書類の配布が、そして来月には申込受付が行われます。保育所等が次々と新設される一方、市中心部等では依然として入所しにくい状態が続いています。

大阪市を含む多くの自治体では、入所調整はいわゆる「点数制」で行われます。世帯の就労状況や子供の状況等を点数化し、高い順番から入所が決まるシステムです。

保活で見えた「情報格差」と言う記事に、点数制に苦戦したNHK記者の体験談が掲載されています。

極めて重要な「入所最低点」

では、自宅の近くの保育園は何点で入れるのだろう?

区のホームページで探しましたが情報が見つかりません。そこで平日に時間を取って役所の窓口に行きました。窓口で聞くと、前回、保育園ごとに最低、何点あれば入れたのか、その一覧表を見せてくれました。

しかしスマホで写真を撮るのはダメとのこと。仕方なく保育園ごとにすべてノートに手で書き写すことにしました。眺めてみるとほとんどが44点。さらに点数が高いところは46点。これを知らずに点数が高い園を希望すると「保育園落ちた」になるところでした。

私は窓口で情報を入手できましたが、平日に仕事を休みにくかったり子どもが小さく外出できなかったりと、役所に行くのが難しい人は情報にアクセスできないと感じました。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170905/k10011128111000.html(以下同じ)

大阪市の場合、各園・年齢毎の入所最低点に関する情報に関する統一された内規はないのでは、と感じています。

数年前の情報となりますが、A区では窓口で必要な情報を見せてくれました(撮影は不可)。しかし、B区では「資料はあるが見せられない、必要な箇所だけ口頭で伝える」という対応でした。更にC区では「資料がない」と冷たい対応をされました。

保育所等への入所を考える上で、入所最低点に関する情報は非常に重要です。さもなくば「保育園落ちた」となってしまいます。

システム上、この様な資料は簡単に作成できるでしょう。全区で資料を作成し、窓口での閲覧及び複写、そしてインターネット上での公表を望みます。ネット上に公開されれば、窓口担当者の仕事も楽になるでしょう。

なお、公表されている各施設毎の入所者点数帯・年齢毎の募集数等から、各施設・年齢毎の推定入所最低点を算出しております。大阪市子育て支援施設基本情報結果に関する分析記事からご覧下さい。

同点の場合は?

さて同点の場合は?

私は44点で、ほかの希望者と同点でボーダーラインに並ぶ可能性が高いことがわかりました。その場合、「同一点数の場合の優先順位」という12の項目が決められていました。

実際に差がつくことが多い項目はどれなのか。窓口で聞くと、まず差がつくのが「認可外保育園などに預けてすでに復職している」というもの。そして、そこで差がつかなかった場合は「居住年数が1日でも長い世帯を優先する」という項目でした。

同点の場合における優先順位の付け方は、各自治体で大きな違いがあります。記者が住んでいる自治体では「居住年数」を一つの基準としています。

同点時における大阪市の取扱いは、利用調整基準表に掲載されています。大阪市は居住年数基準を設定していません。同点の場合は、下記の点に基づいて調整が行われます(平成29年度入所版、平成30年度は変わる恐れあり)。

この中で、入所者自らが調整できるのは「3:希望順位」です。同じ点数の世帯が同じ施設を希望した場合、第1順位の方が優先されます。

保育所等への入所が比較的難しい地域では、どの施設を第1希望とするかが極めて重要となります。「第1希望なら可能性はありそうだけど、第2希望以下では厳しいのでは無いか」というケースが少なくありません。

近隣の人気園を第1希望から外し、次に近い新設園を第1希望とするといった考え方も必要です。こうした判断は非常に難しいのが実情ですが。

点数計算・案内書類の読み方で困ったら、区役所に相談を

自由記述には「案内の書類を読んでも注意書きが多すぎて自分が何点なのか確信が持てない」といったものがありました。“情報があったとしても内容がわかりにくい”という意見です。

保活で同じような思いをしたのが都内に住む西本佐保さんです。5歳と3歳の2人の子どもがいます。「保活の書類は注意書きが多く、とにかくわかりにくい」と言います。

大阪市の利用調整基準表も決して分かりやすいとは言えません。本文部分も漢字(特に専門用語)が多く、更に備考や注釈が続きます。

文章を比較的読み慣れている方でも、項目毎の要件を正確に把握するのは簡単ではありません。そうでない方であれば、表を見ただけで拒否反応を起こしてしまいそうです。

基準を正しく読み解き、自分の点数を把握するのに簡単な方法があります。「区役所の窓口に相談する」という手段です。担当者と一緒に一つずつの項目を確認し、点数を計算します。正しい読み方を教えてもらえます。

なお、こうした相談には時間が掛かります。特に入所申込が始まってからは窓口業務が非常に忙しくなり、対応できない可能性が高いです。窓口への相談は早めにすべきでしょう。

注意書きが多いのには理由があります。様々な事例を「内規」という形で非公表にしておくと、それに関する問い合わせが増え、誤った理解も広がってしまいかねません。内規や判断基準と案内書類に追加した結果、注意書き等がどんどん増えてしまったのでしょう。

大阪市の情報公開はまあまあ

大阪市は同点時の優先順位を公開し、施設毎の最低点数は一部区役所が窓口で公開しています。情報公開に関して東京23区に照らすと、「中の下」程度の位置と言えるでしょう。

しかし、関西の他都市と比べると、大阪市の情報公開は進んでいます。最も公開している自治体の一つではないでしょうか。

問題は公開されている情報から必要な数字を読み取り、自分の世帯の状況と照らし合わせる能力です。非常に難しいです。区役所の窓口と相談したり、当ウェブサイト上の情報を利用してみて下さい。