容積率緩和の特例措置を利用してマンションを建設する業者に対し、厚生労働省・国土交通省は「できる限り敷地内に保育施設を設置するように」と要請していきます。

大規模マンションに保育所設置を

保育所の空きを待つ待機児童を解消するため、厚生労働省などはこれから大規模なマンションを建設する業者に対し、敷地内にできる限り保育所を設置するよう、全国の自治体を通じて要請していくことになりました。

保育所の空きを待つ待機児童はことし4月の時点で全国でおよそ2万6000人に上っていて、中でも大規模マンションが建設された地域は、子育て世帯が増えて、特に待機児童が増加する傾向にあります。
このため、厚生労働省と国土交通省は新たに大規模マンションを建設する業者に対して、できる限り敷地内に保育所を設置するよう、全国の自治体を通じて要請していくことになり、18日、自治体に通知しました。
厚生労働省によりますと、東京や神奈川などの一部の自治体では、大規模なマンションを建設する業者と自治体が、事前に保育所の設置について話し合う取り組みをすでに進めていて、要請を受けた業者が敷地内に保育所を建設するケースもあるということです。
厚生労働省は、「建設計画の段階から自治体の担当者が要請することで、業者に保育所の設置を促し、新たな待機児童を生じさせないようにしたい」と話しています。

http://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20171019/0001988.html

通知内容は厚生労働省及び国土交通省のウェブサイトに掲載されています。

大規模マンションにおける保育施設の設置を促進します

本通知により、容積率緩和の特例措置を活用して建設される大規模マンションについて、新たな保育施設が必要と見込まれる場合には、都市計画の内容等として位置付けられるとともに、地方公共団体から開発事業者に対し、保育施設の設置を要請することとされました。これにより、今後、大規模マンションにおける保育施設の設置促進が見込まれます。

http://www.mlit.go.jp/common/001206473.pdf

Download (PDF, 1.3MB)

NHKニュースには肝心な点が抜けています。通知は「容積率緩和の特例措置を活用して建設される大規模マンション」を対象としています。「容積率緩和の特例措置」とは何でしょうか。

上記PDFには「容積率緩和の特例措置を活用したマンション建設時の保育施設等の併設事例」が掲載されています。

ここに掲載されている特例措置は、「高度利用地区(東京都高度利用地区指定方針及び指定基準など)」「再開発等促進区(東京都再開発等促進区を定める地区計画運用基準など)」「総合設計制度(大阪市総合設計許可取扱要綱など)」です。

公益等の為に定められた一定の要件を満たした場合、容積率が緩和される制度です。マンションの階高を増やす等、土地を更に有効に活用できます。

新たな通知により、こうした特例を利用するマンション内で保育所等の設置を促す効果が期待できそうです。しかしながら、通知に記載されているのは「要請」に過ぎません。

(略)当該大規模マンションの開発を行う事業者に対し、 児童福祉政策の観点から保育施設の確保の必要性を示し、保育施設の設置を要請する(以下省略)

私見となりますが、こうした特例制度を利用して一定規模以上の住居施設を建設する場合は、保育所等の設置を義務づけるべきではないでしょうか。

たとえば上記表に記載されている「勝どき六丁目地区」では、住戸数2,800戸という大規模な再開発が行われました。居住人口は1万人弱に達するでしょう。就学前児童数は1,000人弱だと推測されます。

しかし、併設されている保育所等は1箇所(定員45名)に過ぎないそうです。掲載されていない施設や近隣地区にある保育所等を含めても、地域の保育所等は大きく不足していると推測されます(その後の新増設で足りているかもしれません)。

容積率緩和の特例措置を利用して建設されるマンション等の近隣地域において、保育所等に見合う敷地やテナント等を見つけるのは容易ではありません。再開発地域と待機児童エリアは強く重なっています。

特例措置の利用と引き替えに、「設置義務」を盛り込むのも一案だったのではないでしょうか。