ツイッターでこうした投稿を拝見しました。
大阪市、20代に限れば年1万超の転入超過とは思わなかった。全国的な若者の都市部での職住接近生活支持は目立ちますね。│盛り上がる大阪~~なぜ大阪市は快調な人口流入が続くのか https://t.co/OStr43gfUP
— 木下斉/HitoshiKinoshita (@shoutengai) December 6, 2017
指摘されているコラムはこちらです。
盛り上がる大阪~~なぜ大阪市は快調な人口流入が続くのか
http://www.keieiken.co.jp/pub/yamamoto/column/column_170201.html
大阪市の人口は大きく転入超過(子育て世代を除く)
コラムの要旨は下記の通りです。
・大阪市の人口は2001年に転入超に、2000年代後半は政令指定都市中3~4番目の転入超、ここ2年間は1、2を競う転入超数となっている
・20歳代が概ね1万人前後、10歳代が2,000人前後、40-70歳代が数百人の転入超となっている
・大阪市内では老朽化したオフィスビルの跡地に高層マンションが建築され、主に年配層が転入した
・年配層が転出したマンションやアパートに若い世代が移り住んでいる
・若い世代(除く子育て世代)は、「勤務先に近い場所」を重視して住んでいる
・大阪市の昼夜間人口比率は全国1、潜在的な住宅需要の強さを表している
・子育て世代の中心である30歳代は2,000人前後、0歳代は3,500人前後の転出超となっている
・子育て世代は郊外の生活への指向が強い
このコラムでは、大阪市においては子育て世代を除く多くの世代が転入超となっていると指摘しています。
都心部では子供の数が激増中、自然減を出生数増加が大きく上回る
一方、大阪市(特に中心部)では子供の数が急増しています。これにより、保育所不足・小中学校の狭隘化という深刻な問題を引き起こしています。
少子化による統廃合によって平成26年度に新設されたばかり塩草立葉小学校(浪速区)では、児童が急増して教室が足らなくなる事態に陥っています。
統合後間もないのに、校舎増築等が検討されています。これに対しては、大阪市の見通しの甘さを指摘する声が聞こえています(別記事でも取り上げる予定です)。
原因は「市内中心部での出生数の増加」です。人口動態統計より、いわゆる「都心6区」と呼ばれる区での2011年と2015年の出生数を比較します。
地域/年 | 2011年 | 2015年 |
北区 | 1,021 | 1,159 |
福島区 | 734 | 831 |
中央区 | 766 | 1,010 |
西区 | 903 | 1,101 |
天王寺区 | 673 | 770 |
浪速区 | 493 | 593 |
大阪市全体 | 22,992 | 22,351 |
大阪市全体での出生数は減少しているにもかかわらず、都心6区の出生数はいずれも増加しています。特に中央区は4年で1.4倍に増加しています。
これらの表や経験則等から、こうした内容が推測されます。
・都心6区等での出生数は顕著に増加、それ以外の地域(特に周縁部)は大きく減少している
・いずれの地域でも0歳代(特に小学校入学直前)に市外へ転出する傾向が強い
・自然増と社会減を相殺しても、都心6区では子供が急増して保育所や学校が著しく不足している
・周縁部では出生数の減少と社会減が同時に進行し、急激な少子化が進行している
大阪市は「詰め込み」で対応
こうした事態に対し、大阪市は児童数の急増を抑制するのではなく、「より多くの児童に対応できる保育・教育施設の増設」を進めています。
保育所不足に対しては、施設の更なる新設・大規模マンションへの保育施設の併設・入居者の優先入所制度を進めています。
また、学校不足に対しては校舎増築・高層化等を検討しています。
とは言え、都心部で大阪市が使用できる土地は限られています。待機児童問題は依然として深刻であり、児童1人あたりの運動場面積は不足する一方です。「詰め込み」という指摘は避けられません。
子育て世帯の視点に立つと、都心部の保育・教育環境の悪化は顕著です。いくら利便性が高くても、子供を伸び伸びと育てたい家庭の考え方とはそぐわないでしょう。
出生数減少と社会減が同時進行する周縁部
強く懸念されるのは、市内周縁部の少子化です。都心部のような利便性が乏しければ、郊外の様なゆとりのある環境もありません。
こうした地域では出生数の減少と社会減が同時に進行しています。子供の数が急減しており、生野区では小中学校の適正配置(統廃合)が検討されています。
教育環境の再編について(生野区)
http://www.city.osaka.lg.jp/ikuno/page/0000321416.html
こうした地域での人口減・子供の数の減少を食い止める施策は、全く見えてきません。行政としてこうした地域への人口流入施策を取るのではなく、あるがままの減少に対応していくというスタンスなのでしょうか。
新設保育所を探しに、市内各地をぶらぶらと歩く機会に恵まれていました。都心部で活発な再開発が行われている傍ら、周縁部では寂れた商店街・朽ちた空き家・子供が遊んでいる気配がない公園・人気が無い市営住宅をしばしば見掛けました。同じ市とは思えない光景です。
今後、大阪市では「魅力ある都心部」という名の下に、都心部と周縁部の違いが更に大きくなっていくのは間違いないでしょう。メリットもあるでしょうが、「本当にこれで良いのだろうか」と考えさせられる事もあります。