大阪市は平成30年度一斉入所の申込を締め切りましたが、多くの自治体は今が申込・締切のピークです。

保育所等への入所で用いられている「ポイント制」に右往左往する家庭の姿を毎日新聞が伝えています。

振り回された義母

 「いくら何でも、わがままじゃないの。ばかにして」「ここまで好き勝手に扱われるほど老いぼれてないわよ」

 電話口から飛んでくる批判は、30分もやまなかった。10月下旬のある夜、東京都内に住む30代の女性会社員は義母(66)から一方的に怒られた。「すみません、どうかしてました」と謝り続けるしかなかった。

 秋田県で1人暮らしをしていた義母に上京を頼んだのは昨年の夏、妊娠が分かってからだった。「出産前後だけでなく、会社に戻ってからもサポートしてほしくて」。身近で初孫と暮らせると義母は、家を取り壊して土地を売り払い、駆けつけてくれた。

 今年1月、長男が生まれた。育児休暇を経て来年4月に復職し、同時に認可保育所へ預けることにした。育児や家事をこなしつつ、役所が配布する資料と、保育所の情報サイトを突き合わせる日々が始まった。

 認可保育所の利用希望者は、指数(ポイント)によって公平に審査される。その世帯が「どれだけ保育を必要としているか」を点数化し、高い順に入ることができるシステムだ。女性は、ポイントが同点だった場合に適用される「優先順位」の欄を見て焦った。保育に協力できる祖父母が近くにいないこと--。待機児童の波をかき分けて1歳児を入れるのは、保活の中で最も難しいとされる。「他の子どもより少しでも優位になりたい……」。不動産会社に勤める夫のつてで、神奈川県内に古いワンルームマンションを見つけた。「これが、はやりの保活なのね。大丈夫。いつでも呼んで」。義母は今夏、気丈に引っ越していった。

 そして10月。役所でもらった来年度の入園案内に、女性は目を丸くした。「祖父母が近くにいない」という項目が、そっくり削除されていたのだ。義母に「保活と同居は関係がなくなった」と恐る恐る説明し、再び同居できないか聞いてみた。結果は、激怒して拒否。「無理な保活で、家族の和にひびが入ってしまった」と女性はため息をついた。認可保育所の利用申し込みを済ませ、1月下旬から始まる結果通知を待ちながら、その修復に頭を悩ませている。

https://mainichi.jp/articles/20171209/ddm/013/100/003000c

ポイントを得る為に無理な行動をすると、どこかで跳ね返ってきます。記事にある通り、元凶は「無理な保活」です。

東京都内での保育所不足を鑑みると、田舎から義母を呼び寄せた時点で1歳児4月入所は諦めるべきだったかもしれません。しばらくは祖母が中心となって自宅で育児し、近所の保育施設で空きが出たタイミングで入所するのが自然な姿だと感じました。

「祖父母との同居・近居」は自治体で判断が分かれる点の一つです。

大阪市は同居している20歳~65歳未満の親族に預けられる(=就業等をしていない)ならば7点減点及び同点時に劣後、概ね1km圏内に居住している65歳未満の祖父母に預けられるならば3点減点となっています(詳しくは調整基準をご覧下さい)。

決して疑うつもりはありませんが、果たしてここまで無茶な活動を行う家庭が存在するのでしょうか?

ポイント制の弊害

 保活に翻弄(ほんろう)されるのは利用者だけではない。東京都目黒区は10月2日に公表した認可保育所の募集案内で優先順位の項目に、新たに「年齢上限のある区が利用調整する施設等を利用している卒園児」を盛り込んだ。分かりにくいが、これは「0~2歳児を預かる小規模の認可保育所や家庭福祉員(保育ママ)を利用していた子ども」。東京都の独自基準に基づく認証保育所は対象にならなかったのだ。

 小規模認可保育所は、待機児童が多い0~2歳児の受け皿になり得る位置づけで、地域型保育事業として国が推進している。目黒区は「地域型に力を入れる『お上の意向』に同調してシフトチェンジするのが望ましい」(幹部)と判断した。しかし、認可保育所に入れやすくするため、いったん認証保育所に預けてポイントを増やしていた親たちから怒りの声や問い合わせが殺到。周知期間が短かったことも踏まえ、急きょ認証保育所も加えた。

 保活に詳しい猪熊弘子・東京都市大客員教授は「もともとポイント制度は、コネを使って子どもを保育所にねじ込むことを防ごうとした措置だったが、偏差値のように扱われるようになった。項目が複雑になり、具体的にどういう人が入れないのか姿が見えづらい」と指摘する。

「保育年齢に上限がある施設は同じ様に扱って欲しい」というのが多くの保護者の考え方でしょう。

大阪市でも「保育年齢に上限がある企業主導型保育の卒園児も、地域型保育事業の卒園児と同じく6点加点して欲しい」という声がありましたが、採用されませんでした。

細分化された施設種別や変更されるポイント制に右往左往させられるのは、子育て世帯です。特に卒園児への加点については繊細な取扱いが必要です。入所する際に「卒園時に加点が得られるから、次の施設へ移りやすい」という前提があったでしょう。これが反故にされたら誰だって怒ります。

大半の保護者は6年保育を行っている保育所への入所を希望しています。地域型・認証・企業主導型保育ではなく、あくまで「6年保育の保育所」の新設を進めて欲しいです。

偽りの「共働き」

 都市部を中心に激化する保活。何とか「勝ち組」になろうと、なりふり構わない親たちがいる。都内にある認可保育所の園長は「父母が共働きのフルタイム勤務でないと、子どもを保育所に預けることは不可能なのが現状。このため『アリバイ会社』に依頼して、就労証明書を偽造してもらう専業主婦やアルバイトの母親が散見される」と語る。あるアリバイ会社の社長は「認可保育所に子どもを通わせたい母親は大事な顧客層」と認めつつ、「1件あたり数千円で必要な書類を発行する。子どもが病気になった際、保育所から親の勤務先に電話することがあるが、それに対応するサービスもある。毎日数十件の問い合わせがある」と明かす。

 猪熊さんは「テクニックが先走り、子どものために一番良い環境を選ぶという本来の保活のあり方が置き去りになっている。親のライフスタイルが主体で、親が働くために選ぶ形になっていないか、振り返ってみてほしい」と呼びかける。

就労証明書の偽造は重大な問題です。仮に露呈した場合、退所させられる可能性もあるでしょう(聞いた事例はありません)。

多くの自治体では入所前や入所後に保護者(特に母親)の職場へ電話し、在籍確認を行っているそうです。疑わしい事例では、健康保険・雇用保険・年金等の加入手続に関する証明書の提出を求めると聞きます。

また、共働きのフルタイム勤務と届け出ているにもかかわらず、所得額が極端に低いと目に付きやすいでしょう。アリバイ会社が作成した虚偽の源泉徴収票を提出して潜り抜けたとしても、その金額に対して課税されて保育料が算定されます。

猪熊先生は「子どものために一番良い環境を選ぶという本来の保活のあり方が置き去りになっている」と指摘されています。しかし、保育所が圧倒的に不足している都市部では、良い環境を選びようが無いのが現実です。選べるのであれば、真っ先に郊外へ転出しているでしょう。

元凶は都市部の保育所不足、大阪市はがんばっています

無理な保活・ポイント対策は全て「都市部の保育所不足」に起因します。お住まいの自治体は、保育所等の新設に真摯に取り組んでいますか?

手前味噌かもしれませんが、大阪市は保育施設の新設を積極的に進めています。平成30年度には前年比4,000人以上の定員増が固まっています。今後も新増設を継続する方針です。良い土地があれば大阪市までお知らせ下さい。