興味深い記事をメールで教えて頂いたので、ここでもご紹介します。

「保育園落ちてもいい」親たち。待機児童の一方で「不承諾通知」歓迎と内定辞退続出の訳
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180211-00010001-binsider-pol

この記事では、短時間就労だと入所しづらい保育所・不承諾通知の必要性・内定辞退による悪影響・育児と仕事の過酷さ、が取り上げられています。

週3回の復職では保育所へ入所できない

「とりあえず、時短で週2~3回の出勤で体を慣らしながら復帰しようと思います。もし認可に決まっていたら、すぐに週5日復帰しなくてはならなかったかと思うと、正直きつかった。今ではこれで良かったなと思います」

「週5フルタイム勤務4月入園」で申し込んだのであれば当然、申し込んだ条件での復職が必要なほか、毎年、勤務先や事業の証明書を提出しなければならない。週5で申し込んで「まずは週3回の復職」などは、基本的に認められない。

保育所等への入所では、多くの自治体で就労時間・日等を「ポイント」に換算しています。

大阪市の利用調整基準によると、週40時間以上等の就労で100点、30時間以上等で90点、24時間以上等で80点、16時間以上等で70点、それ以下の就労だと60点とされています。

週3回の復職であれば、大阪市の利用調整基準では原則として60点と評価されます。他自治体でも、フルタイム就労者より低い点数となるでしょう。

募集枠が入所希望者を大きく上回る地域ならまだしも、保育所が不足している都市部にて60点で入所するのは絶望的です。記事では「認められない」とありますが、「事実上、入所できない」のが正しい表現でしょう。

その為、「週3回だけ復職し、その間だけ保育施設を利用したい」というニーズに応えるには、保育所ではなく認可外保育施設となります。

記事では指摘されていませんが、「週3回の利用」というのが絶妙です。大阪市の利用調整基準では、「申込事由(就労等)を理由として認可外保育施設等を週3回以上利用している」のであれば、5-7点が加点されます。

これにより、週3回程度の復職及び保育所へ入所する為の加点を両立させているのです。上手い考え方です。

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(2/15追記)
コメント欄より、下記の指摘を頂きました。

大阪市は復帰後短時間勤務をする予定でも、申し込みは通常時間での申請と聞いたのですが違いますか?
申請はフルタイムでの時間を記入しましたが、内定後に育児部分休業での復帰の相談に区役所に行きましたが、短時間勤務でも特に報告、申請等はなにもいらないとのことでした。

大阪市は短時間勤務での復職であっても、「通常通りの勤務時間で申請・ポイント換算する」という運用を行っているそうです。ありがとうございます。

これが短時間勤務(1日あたり6時間等)のみか、それとも短日数勤務(1週間あたり3日間等)にも適用されるかは定かではありません。短日数での復職を検討されている方は、一度、区役所にご相談下さい。
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不承諾通知の必要性

保育園に入れなかったという自治体からの「不承諾通知」を会社に提出すれば、法律により育児休業は最長で2年まで(2017年10月以降)延長される。育休中は、賃金の67%(6か月後から50%)に相当する育児休業給付がハローワークから支給される。当面、生活に大きな影響はない。

東京都23区在住のIT企業勤務の30代女性は3年前の4月、当時4カ月だった娘の認可保育園の入園申し込みで、「狙いどおり」区役所からの不承諾通知を受け取りホッとした。

この女性の周囲でも「あえて不承諾通知はよくあること」と言う。その場合、4月の復職が在園の要件にならない認可外の保育園を確保して「自分のタイミングで復帰する」のが通例という。

原則として育児休業を取得できるのは、満1歳の誕生日までです。しかし、保育所等へ入所できない場合は1歳6ヶ月まで、それでも入所できなければ満2歳の誕生日まで延長できます。

延長するのに必要なのが「不承諾通知」です。

母親がフルタイムで働かなければ家計が厳しいならまだしも、そうでない家庭であれば子育てしながら賃金の半分以上が支給される制度は魅力的です。また、社会保険料等の納付義務もありません。

記事にあるとおり、「贅沢な悩み」とも考えられます。一方、この様に長期の育児休業を取得できる方が復職を先伸ばす事により、結果的に他の児童が保育所へ入所できている側面もあります。

内定辞退による悪影響

希望保育所へ1園だけを記入して不承諾通知を受け取るのであれば、保育事務等に大きな影響は与えないでしょう。「記念受験」の延長とも言えます。

しかし、万が一でも入所が内定したら別です。「内定辞退」は大きな影響を及ぼします。

「一人が内定辞退をしてしまうと、本当はそこの保育園に入れた人が入ることができず、他の多くの人も内定先が変わってしまった可能性がある。結果的に、入れなかった保護者が追加募集に応募しなければならなくなるなど、保活を長引かせる原因の一つになっている」

内定後に辞退しても、一斉入所で入所できていた筈の児童は既に他の保育所等に決まってしまっています。希望する保育所等へ入所できていた筈の児童が入所できなくなってしまいます(個別に電話連絡して繰り上げる役所もある、と聞きます)。

また、辞退された募集枠は2次調整で募集されます。2次調整の事務負担が増え、保育所等では3月まで入所者が確定しません。影響は非常に大きいです。

大阪市でも入所内定後の辞退は少なくありません。それを窺わせる資料があります。大阪市旭区の2次調整募集リストです。

同区のリストは非常に丁寧です。2月2日時点での募集枠に加え、その後に募集数が変更された施設等が赤字で強調されています。同リストから、下記の施設・年齢で内定辞退等があったと推測されます。

年齢施設名内定辞退数(推定)
0歳児ありんこ第2保育園1名
1歳児太子橋保育園1名
両国保育所2名
森小路保育所2名
Pingu’s English清水2名
2歳児生江保育所1名?
太子橋保育園1名
金光寺保育園1名?
認定こども園 あけのほし幼稚園1名?
Pingu’s English清水1名?
3歳児大宮第1保育所1名?
つぼみ保育園1名
4歳児生江保育所1名?

少なくとも16名が内定を辞退したと推測されます。旭区の申込者は467人でした。全員が入所内定していたとすると、約4%が辞退した格好となります。

ただ、大阪市で内定後に辞退すると、その年度内での利用調整にて5点が減点されてしまいます。同一年度内に保育所等へ入所するのは非常に難しくなっています。転居等と言った、止むに止まれぬ事由による辞退者が大半ではないでしょうか。

育児・家事と仕事を両立する過酷さ

「無事に保育園に入れても、その後の生活が過酷すぎる。たとえ職場の理解があって時短勤務が可能でも、5時にお迎え、夕飯の支度、入浴、寝かしつけを9時までに済ませる生活は過酷です。しかも、それをワンオペ状態でやるとなれば、早晩発狂しそうになるはず。そんな生活に“復帰”するくらいなら、不承諾通知が欲しいというのは、ごく普通の感覚ではないでしょうか」

「早く育児休業から復職したい」という方もいれば、「育児休業を少し長めに取り、徐々に復職したい」という方もいるでしょう。どちらが良い・悪いという話ではありません。個人・家庭の選択として、尊重されるべき判断でしょう。

育児と仕事の両立は本当に大変です。時短勤務であっても、5時にお迎えするのは簡単ではありません。0-2歳児を9時までに寝かせつけるのは到底無理でした。

特に大変なのは、育児に時間が読めない事です。家事であればおおよその所要時間が計算でき、優先順位が低い事は翌日や週末に先送りできます。

しかし、育児はできません。食事・入浴・寝かせ付け・保育園の準備は当日中に行わなければなりません。バタバタしている間に、オムツ交換・ギャン泣き・おねしょ布団の始末といったタスクがランダムで入ってきます。

・・・発狂します。私も精神面で余裕が全く無くなった事がありました。

少しでも育児・家事を楽にするには、時短家電等を有効活用する・時短勤務等で費やせる時間を増やす・配偶者と分担するのが王道でしょう。

経験上、フルタイム勤務を継続した上で育児・家事をキッチリ行うのは無理です。物理的にも精神的にも保ちません。本当に過酷です。

こうした事情があるので、不承諾通知を受け取って育児休業を延長する気持ちは理解できます。贅沢な選択ですが、これも社会の縮図です。