私も驚きました。これは保育園ではなく、「顧客を中心とした富裕層向けの幼児教育施設」です。

「まさか、保育園を始めるとは」。百貨店業界関係者の間で驚きの声があがった。

大丸松坂屋百貨店を傘下に持つJ.フロントリテイリングは、2019年4月をメドに首都圏で認可外保育施設を開園する。この3月に設立した子会社「JFRこどもみらい」が保育事業を運営する。幼児保育を手掛ける「拓人こども未来」と連携し、教育を軸とした独自プログラムを打ち出す。

「脱・百貨店経営」を掲げるJ.フロントは、稼ぎ頭である小売業以外のサービス分野の強化を図っており、保育園運営は新規事業の第1弾となる。新規事業としては「婚活」「終活」「保育」の3分野を候補としていたが、最も市場の成長性が期待できるうえ、百貨店の顧客データを効果的に活用できる分野として、まずは保育園事業に照準を定めた。(以下省略)

http://toyokeizai.net/articles/-/212962

上記記事から、J.フロントリテイリングが検討している保育所の姿が浮かび上がってきます。引用します。

・第1号園(来年春開園予定)は敷地面積300~400坪、2~5歳児まで各3クラス、定員342人の大型園を計画。
・首都圏で土地や建物を新たに購入する方針、2号園や首都圏以外も検討中。
・認可外保育施設とし、保育料(授業料)は月額約10万円を想定。
・「グローバルで活躍できる人材を輩出できるように、思考力を持った子供を育てていきたい」
・約22%を出資する資本・業務提携先の千趣会への出資比率を下げ、持ち分適用会社から除外する方向。

検討しているのは保育施設ではありません。0-1歳児が対象から外れています。

これはグローバル教育等に重きを置いた「大規模教育施設」です。「保育園運営」というタイトルは実態を表していません。

同社は拓人こども未来と提携するそうです。拓人こども未来のウェブサイト(スクール事業)から、想定している教育内容がうかがえます。

当てはまるのはチャイルドアイズ(知育と小学校受験指導の幼児教室)学童保育Kids Duo(英語が身につく学童保育・プリスクール)キッズデュオ インターナショナル(バイリンガル幼児園)です。

授業料も高額です。保育所保育料のみならず、多くの認可外保育施設の保育料も上回る水準です。インターナショナルスクール等に匹敵する金額でしょう。

これだけの保育料を支払える世帯は決して多くありません。大丸松坂屋百貨店の顧客データを利用し、外商・大口顧客等、経済的に余裕がある顧客の子供・孫をターゲットとするのでしょう。

敷地面積は300-400坪、約1,000平方メートル強を想定しているそうです。幅広い地域からの登園も想定すると、交通の便や自動車での移動が便利な場所が考えられます。とはいえ、こうした地域でまとまった土地を入手するのは決して容易ではありません。

となると、大丸松坂屋等が保有している施設へテナントとして入居するのではないでしょうか。百貨店が併設されていれば、待ち時間での購買意欲も引き起こせます。

もしも保育園を運営したいのであれば、千趣会が保有しているリソースの利用を考えたでしょう。千趣会は「えがおの森保育園」という認可保育所・企業主導型保育施設を運営しています。大阪市でも4月に開所します。

【H30新設保育所紹介・11/27追記】(20)えがおの森保育園・どうしん(北区)

東洋経済の同記事は、大丸松坂屋が想定している教育事業の宣伝という側面を色濃く感じました。「保育所」ではありません。「教育施設」です。