H30保育所等一斉入所結果分析、2回目は各区毎の状況を相互比較していきます。なお、昨年の分析記事はこちらからご覧下さい。

大阪市の保育所入所待機児童数について(平成30年4月1日現在)より作成(以下同じ)

西区・天王寺区・阿倍野区・北区の入所倍率が急低下、保育所等の新設が劇的効果

当ウェブサイトで重視している数字があります。待機児童数ではなく入所保留数・入所倍率(保留率)です。理由を問わず入所できなかった児童が何人・何パーセントいたのか、という数字です。

H30一斉入所での利用保留数は、前年より約500人も減少した2,503人となりました。そして、入所倍率は0.05倍低下して1.20倍となりました。

「たった0.05倍?」と思う方もいるでしょう。しかし、区別の数字を見ると印象が違ってきます。都心部を中心に、入所倍率が大幅に下がっているのです。

入所倍率が大きく下がったのは西区です。昨年の1.53倍から1.19倍へと劇的に変化しました。

西区の利用申込数は昨年より159人も増えて837人となりました。申込数が100人以上も増えた区は西区のみです。そして、新規利用数は262人(市内最多!)も増えて706人となりました。

背景にあるのは保育所等の新設です。平成30年4月に西区では5保育所が開所しました。前後半年程度の間には、更に多くの保育所・小規模保育等が開所しています。

これにより、西区の利用保留者は103人減少して131人となりました。保留率は34.5%から15.7%へと激減しています。驚くべき変化です。

保育所等の新設に力を入れた都心部では、他区でも似た現象が生じています。

昨年まで入所倍率が非常に高かった天王寺区・阿倍野区・北区は、入所倍率は0.1倍以上も低下しました。新規利用数が増加し、保留数は低下しています。3区とも、保育所の新設に注力しています。

中央区の数字に乖離が?

中心部にありながら、こうした動きから若干外れている区もあります。中央区です。

中央区の申込数は112人も減少して447人に、新規利用児童も91人減少して322人に、保留数は21人減少して125人、入所倍率は0.03倍上昇して1.39倍となりました。入所倍率は市内1位となっています。

ただ、昨年秋の中間発表時では、同区の申込数は532人でした。区境を越えた申込者もいるとは言え、中間発表後に85人も落ち込むものでしょうか。今後、中央区を取り上げた記事で詳しく見ていきたいと思います。

淀川区・東淀川区・住之江区は現状維持、相対的に数字が目立つ

ここまでは保育所等の新設に力を入れた区を見てきました。では、積極的に新設されなかった区はどうなっているのでしょうか。

実はH30一斉入所で入所倍率が2番目に高かったのは、淀川区の1.34倍でした。

同区の申込数・決定数・保留数・倍率等は、前年とほぼ同じ数字となっています。淀川区の状況が悪化したのではなく、従来入所しにくかった都心区等の状況が良くなった為、相対的に目立つ結果となりました。

こうした減少は東淀川区・住之江区でも生じています。

ただ、今春は淀川区在住の方から「一斉入所で入所できなかった」といった趣旨のメールを非常に多く頂きました。区全体として現状維持であっても、再開発が盛んな区北部では状況が悪化している懸念があります。

此花区・大正区・東住吉区・平野区・港区は保留数増加

市全体での利用保留数が減少しているのに反し、保留数が増加してしまった区もあります。此花区・大正区・東住吉区・平野区・港区です。

これらの区は早い段階から保育所が整備されていました。保育所等整備率(=在籍率に等しいと仮定)は大阪市平均の41.2%を大きく越える区ばかりです。

近年は子育て世帯の減少が著しく、就学前児童数が急減していました。その為か、保育所等の新設があまり行われていませんでした。

今春の一斉入所では申込数は減少ないし横ばい、決定数は減少したものの、保留数・保留率は上昇してしまいました。

現時点での推測となりますが、こうした区でも子育て世帯の需要がある地域とない地域に二分されているのではないでしょうか。

交通の便や生活環境に優れている地域に保育を必要とする子育て世帯が集中し、希望する保育所等へ入所できなかった児童が増加していると感じました。

例えば大正区では千島保育所(千島公園の横にある)・大正北保育所や大浪保育所(大正駅に近い)に入所希望者が集中しています。これらの保育所では入所できなかった方は少なくないでしょう。

反面、これ以外では希望者が募集数に満たない施設が大多数を占めています。子育て世帯が都心部に集中するのと似た現象が、各区内でも生じています。

次回は区・年齢毎の入所決定状況を

次回は区毎・年齢毎の入所決定状況を掘り下げていきます。「この区・この年齢で入所するには何点が必要か?」という数字が見えてきそうです。