H30保育所等一斉入所結果分析、4回目は各区毎・2-5歳児の入所保留率見ていきます。【H30保育所等一斉入所結果分析】(3)区毎・0-1歳児の入所保留率の続きです。

なお、昨年の分析記事はこちらからご覧下さい。


大阪市の保育所入所待機児童数について(平成30年4月1日現在)より作成(以下同じ)

2歳児保留率は20.8%、中央・東淀川・天王寺・淀川が高保留率

大阪市全体の2歳児保留率は20.8%でした。1歳児とほぼ同じ値であり、各区毎の傾向も1歳児とよく似ています。

保留率が低かったのは、港区(7.3%)・東成区(7.9%)・旭区(9.2%)・平野区(9.8%)でした。

港区は当初予定より募集数が大きく増えたのか、利用数が伸びています。東成区・旭区は新設保育所の効果でしょう。平野区は中間発表時の申込倍率が1倍を切っていました。

反対に保留率が高かったのは、中央区(50.6%)・東淀川区(39.4%)・天王寺区(38.9%)・淀川区(32.3%)です。

中央区の2歳児申込者の内、入所できたのは半数に満たない児童でした。極めて厳しい状況です。中間発表時の募集数は0歳児が多い一方、1歳児は少ない、そして2歳児は極めて少なくなっていました(詳細はこちら)。

中央区内保育所の定員配分には、重大な問題があると言わざるを得ません。3-5歳児は幼稚園という選択肢がありますが、こうした選択がない2歳児は非常に厳しい状況です。

次いで高かったのは、意外な事に東淀川区でした。特に上新庄駅周辺の保育所が不足しており、小松保育園・風の子保育園に多くの2歳児が申し込んでいました。

他区と比べて、東淀川区の保育所等の入所最低点はやや低いと感じています(上新庄駅周辺を除く)。しかし、周囲を川や市境い囲まれている事から、「区外の保育所等へ登園しづらい」という地理的問題を有しています。

また、今春は新しい保育所が開設されませんでした。数年前に数カ所の保育所を開設した結果、やや等閑にされてしまった感があります。

1歳児と同じく、天王寺区の2歳児も非常に高い保留率でした。端的に保育所が不足しているのに加え、入所最低点が非常に高いという問題もあります。

同区は高級住宅街やタワーマンションが多く、やや高額の生活費が必要です。認可外保育施設を利用したり、単身赴任となっている高所得世帯が少なくありません。こうした世帯は入所調整で加点され、結果として入所最低点を高止まりさせています。

ここ数年、天王寺区内には数多くの保育所が開設されています。しかし、それでも全く足りていません。当面は年2-3箇所の保育所を新設し続けなければ、保留率は上がる一方ではないでしょうか。

淀川区も1歳児と似ています。北部(主に三国・宮原地域)での再開発が影響しています。進展しています。

また、2歳児募集数の少なさも無視できません。同区の2歳児募集数(中間発表時)は110人に留まり、0歳児・1歳児の半分以下でした。2歳児を若干名しか募集しない保育所も少なくなく、異常に高い倍率が出ていました。

保育所不足と年齢毎の募集数のアンバランス

2歳児保留率が高い区に共通しているのは、「保育所不足」と「年齢毎の募集数のアンバランスさ」です。

毎年の様に数多くの保育所が設置されていますが、実情は不足しています。以前から整備が遅れていた中央区や天王寺区は言うまでもありません。また、子育て世帯が一部地域へ急激に流入している淀川区・東淀川区は、当該地域で著しく不足しています。

また、「年齢毎の募集数のアンバランスさ」も無視できません。申込数は1歳児>>0歳児>2歳児にも関わらず、募集数は0歳児>>>>1歳児>>2歳児となっている保育所・地域が目立ちます。

典型例は中央区です。こうした保育所・地域では、0歳児入所が相対的に容易であり、ほぼ全ての保育所から選択できます。

一方、1歳児は募集を極端に絞っている保育所があります。中央区のとある保育所は、0歳児募集数12人に対し、1歳児募集数はわずか3人でした。1歳児倍率が跳ね上がるのも当然です。

2歳児は更に深刻です。0-1歳児は大半の保育所で一定数の募集が行われるのですが、2歳児は募集無し(欠員補充のみ)・若干名という保育所が少なくありません。第1希望としたい保育所は募集無し、そして募集が行われる保育所は多くの希望が殺到する構図となっています。

極めて深刻だったのは天王寺区でした。募集予定数が0-2人という保育所が大半を占めていました。住んでいる地域・点数・希望度合いを勘案し、希望保育所や順位を決めるのは非常に難しい内容でした。

こうした図式を変えるのは容易ではありません。0歳児募集数を減らして1-2歳児募集数を増やす場合、真っ先に1-2歳児保育室の面積要件が問題となるでしょう。その後、3-5歳児の園児数にも影響してきます。

3歳児保留率は10.0%、城東・中央・北区が高い

気になっていたのは3歳児保留率でした。「3歳の壁」と言われるように、地域型保育事業を卒園した園児の新しい保育先が見つからない事態が心配されていました。

大阪市全体の3歳児保留率は10.0%に留まりました。1-2歳児より低く、0歳児とほぼ同じ数字でした。

とは言え、高い区もあります。城東区(22.3%)、中央区(20.8%)、北区(20.0%)です。

城東区の3歳児募集倍率は、中間発表時は0.92倍でした。しかし、地域毎の偏りや新設園の大規模募集が大きく影響しました。募集予定数がない保育所や倍率が非常に高い保育所を第1希望とする児童が少なくありませんでした。

結果、入所保留となってしまった児童が2割を超えたと推測されます。ただ、こうした児童の大半は、城東区内に数多くある幼稚園へ入園したものと推測されます。

地域型保育事業の卒園児が大きく影響したと推測されるのは、中央区と北区です。待機児童対策の為、両区とも地域型保育事業の設置に重点を置いています。

中央区の3歳児第1希望は、南大江保育所と蓮美幼児学園もりのみやナーサリーに集中しました。両園とも周囲に大規模マンションやタワーマンション等があります。卒園児に加え、こうしたマンション等に転居した児童が自宅近くの保育所を第1希望としたのでしょうか。

気になるのは中間発表(昨年11月)と最終発表(今年5月)の数字の違いです。中間発表での申込数は90人でしたが、最終発表では48人でした。半減しています。

理由の一つは中間発表後との取下げでしょう。あまりの倍率の高さに驚き、入所できる見通しが殆ど無い事に気づいたのでしょう。幼稚園への入園手続を行い、保育所等への入所申込を取り下げた家庭が少なくないと感じています。

北区も似ています。中間発表の申込数が123人でしたが、最終発表では85人に留まりました。ただ、北区は新設保育所が非常に多く、取下げではなく新設園への入所を選択した家庭が多いのではないでしょうか。

4歳児は中央・淀川区が高い

募集数・申込数が少なくてあまり参考になりませんが、最後に4歳児も触れます。

一般的に4-5歳児の募集は殆ど行われていません。保育を必要とする世帯は遅くとも3歳児から入所しているのに加え、この年齢は幼稚園という選択肢が豊富にあるからでしょう。しかし、保育を必要とする世帯が大阪市内へ転入するケースは少なくありません。

4歳児保留率が非常に高かったのは中央区(71.4%)でした。申込者の殆どは入所できていません。また、淀川区(35.0%)も高い数字です。両区は子育て世帯の転入が多いのに加え、今春は保育所が新設されなかったのが影響しています。

5歳児は募集数・申込数も若干に留まっています。幼稚園の比重が4歳児以上に高いのでしょう。