衝撃的なニュースです。

愛知県豊田市の梅坪小学校で校外学習を行っていた小学校1年生が、熱中症で死亡しました。

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(2020/6/29追記)
2年前の死亡事故の反省は全く活かされていませんでした。同じ愛知県豊田市で、複数の児童が熱中症を訴えて救急搬送されました。

体育の授業終わりに女子児童3人が痙攣起こし“熱中症と診断” 小学校で5年生11人が体調不良訴える

 29日午前、愛知県豊田市の小学校で、体育の授業終わりに女子児童3人が熱中症とみられる症状を訴え病院に運ばれました。いずれも授業中にマスクは着けておらず、症状は軽く快方に向かっているということです。

 市によりますと午前10時半ごろ、豊田市立山之手小学校で体育の授業終わりに5年生の児童11人が体調不良を訴えました。

 このうち女子児童3人がけいれんを起こすなど熱中症とみられる症状を訴え、病院に運ばれました。いずれも熱中症と診断されましたが、症状は軽く快方に向かっているということです。

 体育の授業は運動場で縄跳びなどが行われ、定期的に休憩や給水時間を設けるなど、熱中症対策を講じていました。

 また、児童は全員授業中、マスクはしていなかったということです。

 気象台によりますと豊田市では29日午後に最高気温32.1度を観測するなど、熱中症になりやすい条件がそろっていました。

https://www.tokai-tv.com/tokainews/article.php?i=131626&date=20200629

事故が起きた豊田市立山之手小学校は、トヨタ自動車本社工場の目と鼻の先にあります。同社に勤務している保護者も少なくないでしょう。

豊田市は熱が籠もりやすい盆地、そして工業地帯、気温が上がりやすい場所です。

豊田市教育委員会はいったい何を考えているでしょうか。「おかしい」としか言い様がありません。

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校外学習の小1児童が熱中症で死亡 愛知 豊田
2018年7月17日 18時06分

17日午前、愛知県豊田市で小学校の校外学習に参加した1年生の男子児童が学校に戻ったあと意識を失い、熱中症で死亡しました。豊田市は、午前中から気温が30度を超え、気象台は、愛知県に高温注意情報を出していました。

愛知県の豊田市教育委員会によりますと、死亡したのは豊田市立梅坪小学校の1年生の男子児童です。

児童は、17日午前、学校から1キロ離れた公園で行われた校外学習に参加し、学校に戻ったあと意識を失って心肺停止になり、その後、死亡が確認されました。熱中症と診断されたということです。

校外学習は、午前10時すぎから、1年生およそ110人が参加して行われ、30分ほど虫取りや遊具などで遊んだあと、11時半ごろに学校に戻ったということです。

児童は、公園に行く際、前を歩いていた児童から遅れ、「疲れた」と訴えたため、担任の教師が手を引いて歩いたということで、帰りも「疲れた」と話していたということです。

豊田市教育委員会学校教育課の鈴木直樹課長は「学校の教育活動の中で児童が亡くなるという重大な事態が発生した。深くおわび申し上げます」と陳謝しました。また、梅坪小学校の藪下隆校長は「結果的に大事な子どもの命がなくなってしまい判断が甘かったと痛感している」と話しました。

気象台によりますと、豊田市は、きょう午前9時に30度4分を観測し、熱中症の危険が特に高まっているとして、気象台は愛知県に高温注意情報を出していました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180717/k10011536821000.html

 17日正午前、愛知県豊田市梅坪(うめつぼ)町の市立梅坪小学校(児童数730人)の教室で、校外学習先から戻った1年の男子児童(6)の意識がなくなり、倒れたと学校から119番通報があった。児童は救急搬送されたが間もなく死亡が確認された。熱射病(熱中症)と診断されたという。

市教育委員会と学校によると、午前10時ごろ、1年生4クラスの112人が校外学習の一環で約1キロ離れた和合公園へ出発。虫捕りや遊具を使った遊びをした後、11時半ごろに学校へ戻った。11時50分ごろ、女性教諭が男子児童の唇の色の異変に気づき、児童は間もなく意識を失ったという。

児童に持病はなく、出発前の健康確認では異常を訴えていなかったが、行きと帰りに「疲れた」と教諭に話していたこともあり、手を引いていたという。

豊田市内は午前9時に気温が30度を超え、11時には33・4度、正午には34・8度を観測。児童たちは水筒持参で、こまめに飲むよう指示していたという。教室にはエアコンはないが扇風機が設置されており、戻った際も動かしていた。

今回の校外学習では、ほかにも3人の女子児童が体調不良を訴え、1人は保護者と一緒に早退したという。近く保護者会を開き、経緯を説明するという。

校外学習は虫捕りを目的に毎年夏に実施していた。出発前、学校が測定した校内の敷地の気温は32度。最高気温35度以上が予想される「高温注意情報」が出されていたことも学校は把握していた。籔下(やぶした)隆校長は「これまで校外学習では大きな問題は起きておらず、気温は高かったが中止するという判断はできなかった。結果として判断が甘かったと痛感している」と釈明した。

https://www.asahi.com/articles/ASL7K5DNSL7KOIPE01B.html

7/18追記:公園は38度、教室は37度・冷房は扇風機のみ

学校に戻った後の状況が明らかになりました。容体が悪化した男児は、エアコンがない教室で座っている内に意識を失ったそうです。

 亡くなった男児は、約一キロ離れた和合公園への行き帰りにも、教員に「疲れた」と話していた。担任の女性教員は「がんばれ」と励ましていた。

教員らが事態を深刻にとらえ始めたのは午前十一時半ごろ、学校に戻ってからだ。

担任教員は、容体が悪化し、唇が紫色になった男児を、教室後方の風通しのいい床に座らせた。教室に冷房はないが、扇風機は四台ある。男児はやがて、意識を失った。養護教諭が駆け付け、人工呼吸と心臓マッサージを繰り返したが、男児は反応しなかった。

搬送先で男児の死亡が確認された後の午後一時四十五分ごろ、学校側は、男児らが過ごした場所の温度を測った。和合公園は三八度、教室は三七度だった。

中日新聞7/18朝刊 より

猛暑地帯と呼ばれる愛知県、その中でも内陸部にある豊田市は気温が上がりやすい地域です。小学生が死亡した7月17日の最高気温は37.3度でした。

梅坪小学校があるのは豊田市内の住宅街

豊田市立梅坪小学校は豊田市の中心近くにあります。

学校便りによると、全校児童728人(うち1年生は117人)・全26学級(1年生は4学級)となっています。やや規模の大きい小学校です。

学校の周囲は住宅街が形成されていて、脇を名鉄豊田線・愛知環状鉄道が走っています。豊田市からイメージされる「工場街」ではなく、豊田市・名古屋市(名古屋駅まで1時間程度)・その周辺で働くサラリーマン向けのベッドタウン的な要素が強い街でしょう。

一昨年の虫捕りは6月27日、昨年は7月12日、今年は7月17日

猛暑の中、小学校から1km以上離れた和合公園へ虫取りに出かけました。片道30分弱、往復1時間程度の道のりです。

公園へ出かけた10時台の気温は約33度でした。直射日光かつ地面に近い小学1年生にとっては、更に暑く感じられた筈です。大人ですら体調に不安を感じる炎天下の下、2時間近くも子供達を外出させた判断が正しかったのでしょうか。

もしも体調不良になったのが1人だけなら「たまたま」と言えるかもしれません。しかし、少なくとも他に3人の児童が体調不良を訴えたそうです。「判断ミス」と呼ぶには重すぎる結果です。

梅坪小学校のウェブサイトにて、担任等の判断が甘かった一因が垣間見えてきました。一昨年の1年生が和合公園へ出かけたのは6月27日、昨年は7月12日だったのです。

【2016年】
和合公園へ行きました。
良い天候にも恵まれ、1年生全員で和合公園へ行きました。
【各学年から】 2016-06-27 17:07 up!

【2017年】
和合公園に行きました!(7月・1年)
7月12日、1年生全クラスで和合公園へ行きました。天候にも恵まれ,ターザンロープや長い滑り台で,楽しく遊ぶことができました。

気象庁が公開している過去の気象データによると、2016年6月27日の最高気温は26.2度、午前11時では25.3度でした(詳しくはこちら)。同じく2017年7月12日の最高気温は28.3度 午前11時では27.4度でした(詳しくはこちら)。

そして男児が亡くなった2018年7月17日の最高気温は37.3度、午前11時は33.4度でした。一昨年・昨年と比べて、著しく気温が高い日に校外活動が行われていました。一昨年までの6月下旬から7月中旬へ動かした理由、そして猛暑の下で決行した理由が焦点になりそうです。

また、同行した教師は担任4人だけだったそうです。体調不良の児童に付き添って途中で帰る等、柔軟な対応ができなかった一因です。大きな問題です。

時系列

当日の流れを時系列でまとめました。

時刻できごと豊田市の気温
9時45分頃?男児が先生に「行きたくない」と話していた
10時5分頃児童約110名・担任教師4人で梅坪小学校を出発32.9度
10時15分頃?男児が「疲れた」と訴えが、担任の20代の女性教諭は手をつないで「頑張ろうね」と声をかけて歩き続けた
10時25分頃和合公園へ到着、虫捕り等を行う
11時頃公園を出発33.4度
11時30分頃学校に到着
11時50分頃男児が教室で意識を失う
11時53分119番
12時9分救急車が学校に到着、男児は既に心肺停止
12時56分搬送先の病院の医師が死亡確認、死因は熱射病35.7度

7/18追記:豊田市が前倒しでエアコン設置へ

「覆水盆に返らず」という言葉が思い浮かびました。

愛知県豊田市で市立梅坪小学校1年の男子児童(6)が熱中症で死亡した事故を受け、市は18日、小学校の教室のエアコン設置工事を前倒しで進める方針を決めた。定例記者会見で太田稔彦市長が明らかにした。

市内の市立小・中学校と特別支援学校計104校には、一部の特別教室を除いて扇風機しかなかった。これまでの計画は、中学校で2019年度、小学校は20、21年度にエアコンの設置を終える予定だったが、一部小学校は今年度に前倒しして準備に入る。小学校によっては1年以上早く設置される見込み。総事業費は71億円を見込む。

同市では、小中学校の扇風機の設置は13年度に終えている。太田市長は会見で「当時はこれで様子を見ようという判断で適切だったが、こういう事態があったので見直す」と述べた。(以下略)

https://www.asahi.com/articles/ASL7L339RL7LOBJB001.html

7/19追記:校長・市教委課長の会見要旨

事故当日に行われた、梅坪小学校長と豊田市教育委員会学校教育課長の記者会見の要旨が掲載されています。長文なので、簡単に整理しました。

・担任は20代の女性教師、クラス担任は2年目
・児童に持病等はなかった
・公園での外遊びは生活科の一環だった
・炎天下の下、アスファルトで日陰も全く無い道路を小学1年生に20分以上も歩かせた
・往路で児童が疲れたと言って列から遅れたが、担任が手を引いて無理矢理公園まで連れて行った
・児童の状況を注視せず、炎天下で日陰が全く無い公園で45分間も遊ばせた
・復路は更に気温が上昇していたが、児童を歩かせて学校へ帰った
・1年生だとトイレを我慢できない子もいるので、往路や復路では飲み物禁止にした
・教師は経口補水液を持参していたが、子どもに要らないと言われた
・学校に戻って全クラスが集合するまで、炎天下の運動場に待機した
・教室は扇風機のみでクーラーがなく、室内温度は37℃だった
・教室で児童の唇の色が紫になったので、室内で比較的涼しい後ろの床に座らせた
・教師が児童と話している間に意識が無くなり、脈や呼吸が確認できなくなった
・担任は児童に付き添い、他の児童に職員室で他の先生を呼ぶよう指示した
・その後、養護教諭がAEDを持って教室にかけつけた
・AEDや心臓マッサージを行うと同時に、救急車や保護者への連絡を行った

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180718-00010003-sp_ctv-l23 より作成

この事故を受け、全国の小学校で一斉に猛暑対策が周知されるでしょう。大阪市内の小学校でも屋外活動を制限し、水分補給等に留意する旨の指示があったそうです。

大人でも目眩がするぐらいの暑さです。屋外活動はできる限り控えるしかなさそうです。

7/20追記:温湿度計が設置

梅坪小学校の通用口及び救急セットに「温湿度計」が設置されたそうです。遅すぎます。



(梅坪小学校ウェブサイトより)

また、「どうしてアナログな温湿度計を設置したのだろうか」というのも疑問です。IoT機器を利用すれば、一定の気温に達した時点で緊急メール等を発する事もできます。

後手後手に回っている学校の対応を見ていると、愛知県で「管理教育」が重視されていた事を思い出しました。

生徒の身体健康を軽視し、学校スケジュールを重視する風潮・雰囲気は残っているのかもしれません。

7/20追記:葬儀が行われました

終業式が行われている頃、亡くなった小学1年生の葬儀・告別式が行われました。

熱中症で死亡した児童の告別式

7月17日、愛知県豊田市で、校外学習のあと熱中症で死亡した小学生の告別式が20日、営まれました。参列した豊田市の太田市長は「異常気象の熱中症対策を、子どもだけでなく市民全体の課題として対応していきたい」と述べました。

7月17日、豊田市立梅坪小学校の1年生の男子児童が、校外学習から戻ったあと意識を失い、熱中症で死亡しました。20日、市内で告別式が営まれ、友達や保護者、学校関係者など約200人が参列しました。

参列者によりますと、祈りや賛美歌が捧げられ、児童の父親が、参列者にお礼を述べたあと「個人的な意見ですが、学校は一生懸命、対応してくれたと思う。学校を非難する声も一部であるが、責めるつもりはない」と話したということです。

母親は、沈痛な面持ちで涙を流していたということです。そして参列者1人1人が児童に言葉をかけながら棺の中に花を供え出棺を見送りました。

参列した30代の母親は「子どもが同じクラスで今も信じられないが、自分の子が同じ状態になる危険もあったと思う。本当につらいが、亡くなった子のことはいつまでも忘れません」と涙ながらに話していました。

式には、豊田市の太田稔彦市長も参列し「事の重大さを改めて思い知りましたが、両親には、ただ、『申し訳ありません』としか言えませんでした。異常気象の熱中症対策を小中学生の問題と矮小化せず市民全体の課題として対策に取り組んでいきたい」と述べました。

http://www3.nhk.or.jp/tokai-news/20180720/3648571.html

葬儀で母親が「『連れていかないで、連れていかないでと』泣き崩れていた」という話も聞きました。

亡くなった小学生のご冥福をお祈りします。

(2019/8/24追記)
豊田市が遺族に賠償金を支払った事が明らかになりました。

 愛知県豊田市は23日、昨年7月17日に校外学習後に熱中症とみられる症状で急死した同市梅坪小1年男児=当時(6つ)=の遺族に対し、市の責任を認め、損害賠償したと発表した。遺族に配慮し、賠償額は非公表。

 豊田市によると、公費ではなく、日本スポーツ振興センター(JSC)災害共済の給付金と、市が加入する全国市長会学校災害賠償補償保険の保険金を充て、既に支払った。市が賠償を提案し、代理人弁護士を通じて遺族と協議を重ね、合意した。

 豊田市の太田稔彦市長は23日の会見で「学校の管理下で発生した事故ということで、学校に注意義務違反があった」と説明。「事故を受け、エアコンの設置を前倒ししたり、職員研修を強化したりしている」と改めて再発防止を誓った。

 男児は炎天下での校外学習から校舎に戻り急死した。市が今年3月に発表した第3者調査委員会の報告書では、死因を熱中症と断定しなかったが、猛暑下での危機管理マニュアルがなかったことや教員の知識不足を問題視していた。

https://www.chunichi.co.jp/s/article/2019082390234610.html

ご冥福をお祈りします。