出産・育児等を理由として退職した女性にとって、再就職するのは決して容易ではありません。ブランクや家事・育児負担を敬遠する雇用主が多く、再就職市場では敬遠されがちです。

なかには正社員や好待遇の派遣社員として就職内定する方もいます。ただ、希有な経歴や保有資格等を有している方が多く、一般化できないケースだと感じています。

そうした中、比較的再就職が決まりやすいと言われているのが、人手不足が深刻な医療職や福祉職です。セカンドキャリアとして保育士を選択する方が増えているそうです。

 セカンドキャリアで保育士に転身する女性が目立ち始めた。保育士の求人サイトを運営するネオキャリア(東京・新宿)によると、未経験OKの保育士求人はこの3年で2倍に拡大。保育士不足を背景に2015年から保育士資格試験の機会が年2回に増えたことも転身派を後押しする。異業種で働き、出産・育児を機に退職した女性たちが活躍するケースも多いようだ。

「ほら、順番に遊ぼうね」。日が傾くころから、アスク北山田保育園(横浜市)で働く久保奈津子さん(34)。アルバイトの保育士として、午後6時から3時間ほど勤務する。夕食を食べさせたり一緒に遊んだり、仕事内容はフルタイムの保育士と変わらない。「昼間は行事に参加するなど自分の子供と過ごせる」と充実した表情だ。

「最初から保育士を目指してはいなかった」と久保さん。立命館大学経済学部を卒業し、大手生命保険会社に入社。保育士資格を取得したのは出産直後だ。妊娠中に勉強を始め、資格試験に合格。その後、夫の転勤で保険業界を離れた。久保さんの再就職先になったのは地方の公立保育園だった。

保育士の魅力の一つは地方でも働けることにある。「保険の仕事は通勤にも時間を取られてしまうが、保育所は住宅街にあるので働きやすい」と久保さんは話す。9歳と6歳の我が子が最優先としながら、給与面では満足しているという。「午後6時から時給が700円アップして1800円になる。1日3時間勤務でも十分もらえる」

勤務先の上司、安達朋広園長は、久保さんがお迎えの時間だけでも働いてくれるのはありがたいという。「他の保育士が別の仕事にあたる時間ができ、園全体で残業が減った」。金融機関で働く夫も、子育てしながら仕事を再開した久保さんを応援している。

保育業界は人手不足が深刻だ。17年度の有効求人倍率は2.73倍と、全産業平均の倍近くになった。未経験者も歓迎という保育所は多い。独立行政法人の福祉医療機構の調査では、保育人材が不足していると答えた保育所は16年度に4分の1にのぼった。(以下省略)

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO33488980X20C18A7TY5000?n_cid=LMNST007

保育士試験はマークシート、ネックは科目数の多さ

記事で紹介されている方が大学を卒業して就職したのは、恐らく2006年か2007年でしょう。リーマンショック前、大卒内定率が非常に高かった時期です。

京都にある立命館大学を首都圏で例えると、明治大学や法政大学に似た雰囲気や学力があります。高水準の学力・職歴を有する、優秀な方と言えそうです。

こうした方でも、夫の転勤に伴って転居してしまうと、元の職場で勤務し続けるのは容易ではありません。配偶者の転居先への異動を融通する企業は極めて少ないのが現実です。

先を見据えていたのでしょうか。妊娠中から保育士試験の勉強を始め、試験に合格しました。出産後は育児負担が非常に重く、試験勉強は全くできません。また、勉強で身につけた知識が育児にも有益に働いたでしょう。

保育士資格というと保育科がある大学・専門学校等を卒業して取得するイメージが強いです。しかし、試験で取得するコースもあります。

【受験資格】児童福祉法施行規則第6条の9
受験資格を満たしていれば受験できます。 保育士試験受験資格については、こちら。

【試験科目】児童福祉法施行規則第6条の10
保育士試験は、筆記試験及び実技試験によって行い、実技試験は、筆記試験のすべてに合格した者について行う。

筆記試験は、次の科目について行う。
保育原理・教育原理及び社会的養護・児童家庭福祉・社会福祉・保育の心理学・子どもの保健・子どもの食と栄養・保育実習理論

実技試験は、保育実習実技について行う。

https://www.hoyokyo.or.jp/exam/about/index.html

試験問題も公表されています。

過去の試験問題
https://www.hoyokyo.or.jp/exam/pasttest/index.html

筆記試験は全てマークシート方式です。出題されている問題は決して難しくないものの、科目数が多いのがネックになりそうです。早めにコツコツ勉強する必要があると感じました。

平成29年度の試験は62,555人が受験を申し込み、13,511人が合格しました(保育士試験の実施状況)。合格率は21.6%です。

働き方が選びやすいパート保育士、扶養内収入も可能

育児・家事負担が重い女性にとって、保育士は魅力的な働き方の一つです。保育所は住宅街に多く、一般的にシフト制を導入しています。

自宅近くの住宅街にある保育所への勤務を希望すれば、通勤時間は殆ど掛かりません。自転車で5-10分もあれば容易に通勤できるでしょう。通勤時間は重要な要素です。

また、シフト制であれば、子供の学校行事等に合わせて出勤時間を調整する事も可能です。担任を持つと難しいでしょうが、長時間保育等に応ずるパートタイム保育士なら融通は効きやすいでしょう。

記事で紹介されている方が働いているアスク北山田保育園は、朝7時から夜9時までの長時間保育を行っています。

午後6時から午後9時までのシフトに入ると、何と時給が1,800円となるそうです。首都圏の保育士不足の厳しさを感じます。

時給が高いと、短時間勤務でもまとまった収入になります。時給1,800円*1日3時間*月22日で、月収118,800円となります。年末年始等の休業日を加味すると、年収は約130-140万円となりそうです。

実はこの収入が絶妙です。配偶者控除150万円・社会保険の被扶養者上限額130万円に収まる水準です。つまり、収入の殆ど全額が手取りとして残ります。

純粋に高収入を得たいのであれば、正社員や派遣社員として再就職し、朝9時から夜5-6時まで働くのがベターでしょう。

しかし、家事や育児に費やせる時間は決定的に減ります。帰宅後も慌ただしく過ごし、落ち着ける時間は限定されます。

「ほどほどの収入は得たいが、家事や育児を行える時間をしっかり確保したい」という方にとり、自宅近くの保育所で働くのは検討に値する選択でしょう。

また、保育士試験の受験は、これから結婚や出産等を考えている女性にもお勧めです。女性の社会進出や男性の家事・育児参画等が謳われていますが、育児や家事の大半を女性が担う構造は今後も続くでしょう。

保育士試験の内容は、家庭での育児や家事に応用が効く物が非常に多いです。学習した内容が死蔵化せず、数年後に実践できるのはモチベーションを保つのに役立つでしょう。