実母たる船戸優里容疑者・養父たる船戸雄大容疑者の虐待によって死亡した船戸結愛ちゃんの死亡事件につき、厚生労働省社会保障審議会児童部会児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会が検証結果等をまとめました。

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目黒の虐待死 児相が危険性記録せず 事件の検証公表

東京都目黒区で3月、両親から虐待されていた船戸結愛(ふなと・ゆあ)ちゃん=当時(5)=が死亡した事件で、結愛ちゃんが以前に住んでいた香川県の児童相談所(児相)が、虐待が疑われる事態を把握しながら、危険性を判断する記録を残していなかったことが3日、厚生労働省の専門委員会がまとめた検証結果で分かった。児童への危険性を判断するための「リスクアセスメントシート」などに記録することが虐待対応の手引き(平成17年通知)に定められており、厚労省は「手引き違反」と認識している。

香川の児相は、転居先の東京の児相に対して、けがの写真など客観的な資料を引き継いでおらず、東京側が結愛ちゃんへの危険性を判断する機会を失ったことも判明。政府は7月、事件を受けて児相の体制の強化や、児相間の引き継ぎは対面で行うことなどの緊急対策を決定し、虐待死の防止を目指している。

専門委は、事件の社会的反響を受けて、前倒しして異例の検証を実施。東京と香川で現地調査も行い、関係機関7カ所から聴取した。

検証によると、平成28年8月から、警察官が結愛ちゃんの傷やあざを確認するなど虐待を疑い、児相が2回、一時保護していた。しかし児相は父親に対して指導を十分行えず、父親の転居を理由に指導自体も解除した。

香川から東京の児相への引き継ぎについては、結愛ちゃんの虐待の内容や、危険性の評価が不明確だったと認定。口頭での補足説明も十分ではなく、認識のずれが生じたと指摘した。

東京側は母親から2度にわたって結愛ちゃんの確認を拒否されたこともあり、緊急性の高いケースと判断できなかった。母親との関係構築が優先され、結愛ちゃんを現認できないうちに事件が起きた。検証では「子供の安全確認が最優先。速やかな立ち入り調査などの検討が必要」とした。

https://www.sankei.com/life/news/181003/lif1810030008-n1.html

厚生労働省による検証は「社会保障審議会児童部会児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会」で行われました。その内容は「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」にて公表されています。

(概要版)

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以下、全体版から児童相談所等の問題点を引用して取り上げます。

なお、引用元では関係機関や人物名等が匿名化されていますが、既に報道等で明らかになっている部分は実名称としました。

及び腰な香川児相

虐待が疑われる傷やあざがあったことや、暴力が繰り返されていることから、施設入所等の措置が必要であり、保護者の同意がとれないのであれば、家庭裁判所の承認を得て行う保護者の同意なしの施設入所等の措置のための手続を検討すべきとの提案が香川県善通寺市の医療機関をはじめとした関係機関からあった。しかし、香川県西部子ども相談センター(香川児相)は医療関係者や弁護士等の専門家に相談せず、子ども自身に分離の意思がったこともリスクとして十分に捉えず、発生原因や受傷時期が特定できないこと等を理由に申立てしなかった。

一時保護解除後の家庭引取りに当たっては、幼稚園に通園させることや本児が祖父母との関わりを継続することなどが必要とされた。しかしながら、香川児相の児童福祉司指導では、船戸雄大被告人(養父)がその条件を拒否したことによって、これらは、家庭引取りの際の条件に設定されななった。さらに、その後、香川児相は、こうした変更を要保護児童対策地域協議会で議論せず、条件変更に伴う再アセスメントを十分に行わないまま在宅での指導措置とした。

善通寺市の医療機関から香川児相に対し本児にあざがあるなどの情報提供があったが、速やかに本児の状況を直接確認しなかった。

医療機関から、本児が、養父から暴力を受けている、家に帰りたくない旨の発言をしていたことが香川児相に伝えられていたが、こうした情報を踏まえたアセスメントが十分にできていなかった。

本事例に関して香川児相が行ったリスクアセスメントについて、検討内容が経過記録に記載されていたものの、どの段階においてもリスクアセスメントシートなどの客観的な情報となる記録が残されていなかった。

結愛ちゃんのケガ等に気づいた善通寺市や医療機関等からは、様々な情報提供や法的措置を要望する提案等が為されていました。しかし、香川県西部子ども相談センター(香川児相)はリスクを軽視し、親子分離や引き取りの条件設定等を行いませんでした。

虐待を繰り返す養父の下へ、結愛ちゃんを追い返してしまった形です。非常に冷たい対応が行われていました。

DV養父と若年出産した実母

平成28 年12 月と平成29 年3月の本児への2回の一時保護はいずれも養父からの虐待が疑われていた。一方で、関係機関は実母とは継続的に関わっていたが、養父に対する指導は十分に行えていなかった。関係機関では、夫婦間の関係として、養父が実母に対する支配的な関係(養父から実母へのDV の疑い)を感じていたが、そうした家族関係を踏まえたリスクアセスメントや養父を指導の対象とできていなかった。

香川児相は実母とは継続的に接触できていました。しかし、虐待を行っていた養父へ適切な指導が行えていませんでした。

引き取り条件を養父が拒否した事も踏まえると、香川児相と養父は没交渉どころか、養父が香川児相を敵視していたと考えられます。

・実母は若年出産を経験し、かつ本児の家庭はいわゆるステップファミリーである。母子保健主管課においては、本児の発達状況等は定期的に確認されているが、虐待予防の観点で関係機関と連携して対応がなされていなかった。

・平成28年12月に幼稚園から善通寺市(児童福祉主管課)にあざがあるとの情報提供がされたが、そうした情報について、緊急性があるとの受け止めがされておらず善通寺市から香川児相に情報共有されなかった。

・平成29年4月に幼稚園退園後、本児は所属機関がない状況だった。本事例では、平成28年12月と平成29年3月に2回、協同面接が行われているが、香川児相は協同面接の場で得られた情報等について、施設入所等の措置に係る検討を行う際に活用しきれていなかった。

実母が結愛ちゃんを出産したのは19歳でした。若年出産、そして実父以外の男性と内縁・婚姻関係にある家庭では、子供が虐待されるリスクは極めて高くなってしまいます。多くの児童虐待事件で「実母と内縁の夫」という組み合わせが非常に多いのは事実です。

結愛ちゃんが通っていた幼稚園から善通寺市へ「あざがある」という情報提供が行われていました。しかし、情報は善通寺市で止まっていました。ただ、香川児相に伝えられたとしても、適切な対応が行われたとは考えづらいです。

子供の様子がおかしい事に真っ先に気づくのは、客観的に観察できる幼稚園や保育所の先生方です。しかし、結愛ちゃんは幼稚園を退園し、家庭内で過ごす生活が続きました。養父と接する時間が長くなって虐待される恐れが高くなり、外部の目も届きにくくなります。

転居直前に指導解除

香川児相は、実母や本児らの転居の数週間前である平成30 年1月4日に転居を判断理由の一つとして、児童福祉司指導を解除している。転居先でも指導を継続して行う必要性や、転居に伴う家庭環境の変化等をリスク要因と考えれば、児童福祉司指導を解除するべきではなかった。

香川児相は転居を理由の一つとして児童福祉司による指導を解除したそうです。転居先の自治体へ引き継ぎ等を行うのが面倒だったのでしょうか。

余計な判断をせず、解除の是非は転居先の品川児相へ委ねるべきでした。

杜撰な引継資料

平成30 年1月の引継ぎでは香川児相は所定のケース移管・情報提供票の様式を用いて、引継ぎの書類を送付したが、リスク要因等の記載はあるものの、リスクアセスメントシート等は作成されておらず、ケースの特徴(実母や養父の生育歴等)や危険度のアセスメントが不明確であった。

また、香川児相から品川児童相談所(品川児相)へ送付されたケース記録は、膨大である一方で、けがの写真は送付されていなかった。このため、ケースの要点が不明確であり、口頭での補足説明も十分ではなかった。

行われた引き継ぎにも問題がありました。児童虐待リスクが一目で分かる、重要な資料が欠落していました。

一つが「リスクアセスメントシート」です。香川児相は作成していませんでした。

また、結愛ちゃんのケガを撮影した写真も送付していませんでした。アセスメントシートと受傷写真があれば、深刻な児童虐待が行われている事に一早く気づけたでしょう。

引継ぎも不徹底、リスクの高さが伝わらず

香川児相は実母や本児らの転居の数週間前に児童福祉司指導を解除しており、ケース移管として平成30 年1月に書類の引継ぎを行ったが、品川児相では緊急性の高い事例と判断しなかった。

また、加害者である養父が失業中であること等、転居後の状況についてリスクが高い状況にあることをアセスメントできていなかった。
さらに、虐待事例においては、転勤等の合理的な理由がなく転居する場合は、転居前の諸機関から逃れようとしている可能性、リスクを高める要因であるということが十分に考慮されていなかった。

香川児相による解除措置が、品川児相へ誤ったシグナリングを送ってしまいました。「転居前に解除されたのだから、虐待リスクは下がっているのだろう」と受け止めてしまいます。しかし、虐待リスクが下がるどころか変わっていません。

加えて、養父が失業中・理由の無い転居といった更にリスクを高める要素を品川児相が軽視していました。客観的な状況判断が出来ていなかったのでしょう。

香川児相と品川児相は遠方であることから、対面での引継ぎが行われなかった。このため、電話や書類では危機感や養育者の特性、行動パターンなどの言語化しにくい情報やニュアンスが伝わらず、リスクの程度の判断に齟齬が生じた。

引き継ぎ資料等に不足や問題があっても、対面で話してニュアンスが伝わる事によって補足できる場合があります。

しかし、引き継ぎは電話や書類で行われたのみでした。互いの担当者が足を運んで現地調査・協議等を行っていれば、事態を重大視できたのではないでしょうか。報告書でも指摘されているとおり、テレビ会議という方法も考えられます。

善通寺市から品川区への引継ぎに比べ、香川児相から品川児相への引継ぎが遅かった。品川区と品川児相で直ちに連携した対応ができなかった。

香川県の医療機関からは直接F 児童相談所へ情報提供がなされているが、こうした情報を緊急性が高い状況にあるとの判断には活かされなかった。

転居元の善通寺市と転居先の品川区では早期に引き継ぎが行われていました。転居元と転居先は転出届・転入届で繋がる関係にあるので、即座に虐待リスクに関する情報交換が出来たのでしょう。

一方、香川児相は転居そのものは把握していましたが、肝心の転居先は把握できていませんでした。船戸夫妻は転居先を頑なに香川児相へ伝えませんでした。

やむを得ず香川児相は善通寺市へ転居先を照会し、転居先の品川区を管轄する品川児相へ連絡しました。香川児相と船戸夫妻との信頼関係の無さが引きずられています。

品川児相が事態楽観、そして最悪の事態が

香川児相からの引継ぎ情報から、品川児相では本事例の受理(平成30年1月30日)後、介入的な関わりよりも実母との関係性構築を優先する支援的な関わりが必要と判断した。

平成30年2月9日に品川児相が家庭訪問した際に、実母の拒否により結愛ちゃんを確認できず、品川区が訪問した小学校説明会(同年2月20日)でも確認できていなかった。

こうした状況の後も本事例に対し、援助方針会議において支援的な関わりが必要であるとの方針を継続し、児童相談所内でのリスクアセスメントの見直しをしていなかった。このため、緊急性が高いとの判断がなされず、本児の現認ができないでいるうちに事件が発生している。

転居直前に措置を解除、引継資料の不足、口頭による引継ぎのみという状況により、児童虐待リスクの高さが品川児相に適切に伝わりませんでした。

品川児相は児童保護よりも関係構築を優先し、これが裏目に出ました。最悪の結果を招いてしまいました。

報告書を読む限り、そもそも香川児相の対応に大きな問題があったと感じました。

香川児相をあたかも敵視する養父を過度に気遣い(結愛ちゃんへの更なる虐待を避ける意図があったのかもしれません)、より介入的な措置を見送り続けてきました。

そうこうしている内に船戸一家は東京へ転出してしまうも、香川児相は品川児相と適切な引継ぎを行っていませんでした。これが品川児相の対応の遅れを招いてしまいました。結愛ちゃんは児相に見殺しにされてしまったのでしょうか。

香川県報告書は11月公表予定

現在、香川県の第三者委員会でも報告書を作成しています。中間報告(非公開)がまとまり、最終報告は11月頃に公表される予定です。

東京の虐待 児相の判断に問題

善通寺市から引っ越した先の東京目黒区で5歳の女の子が両親から虐待を受けて死亡した事件について、対応を検証している県の第三者委員会は中間報告を公表し、女の子の保護に関わる児童相談所の判断などで複数の問題があったと指摘しました。

https://www3.nhk.or.jp/lnews/takamatsu/20181003/8030002241.html

検証内容では児相等の様々な問題点が指摘されています。

行政機関等が適切な対応を行えば、防げる児童虐待は少なくないでしょう。その為には、児童虐待が疑われる家庭・発生する可能性が高い家庭等に対し、より積極的な援助・相談が必要となるでしょう。

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(11/15追記)
東京都・香川県による検証報告書も公表されました。

 東京都目黒区の船戸結愛(ゆあ)ちゃん(当時5歳)が今年3月に虐待を受けて死亡したとされる事件をめぐり、都の検証部会は14日、児童相談所(児相)は虐待のリスクへの認識や対応が不十分だったとする報告書を公表した。一家が都内に引っ越した後、安全を確認できないまま事件が起きたことを問題視し、転居のリスクを考慮するよう提言した。(以下略)

https://www.asahi.com/articles/ASLCG3RZHLCGUTIL00G.html

 東京都目黒区の船戸結愛(ゆあ)ちゃん(当時5)が今年3月、虐待を受けて死亡したとされる事件で、転居前に住んでいた香川県の検証委員会は15日、県の児童相談所(児相)と各関係機関との転居時の連携不足を指摘する報告書を公表した。

 検証は都と合同で実施。報告書は、厚生労働省の専門委員会や都の検証部会と同様に、県から都に児相同士で情報を引き継ぐ際、結愛ちゃんのけがの部位を明らかにする写真などの資料を添付せず、引き継ぎ書類に継続的な指導が必要なことを明記していなかったと指摘。この結果、都の児相も積極的な関わりの必要性を認識しなかったとした。

 さらに東京への転居を知った県警が、児相の指導内容を警視庁に引き継ごうと書類提出を求めたが、児相から提出されず、結果的に警察同士で引き継ぎできなかったことを問題視した。

 また、結愛ちゃんが1月まで住んでいた同県善通寺市や児相の連携の不十分さも指摘。都の関係機関との引き継ぎで、県の関係機関同士が協議しなかった結果、それぞれの引き継ぎの内容に差が出たとし、家族が転居するケースについて「関係機関の間で、意見の調整や役割分担をする必要がある」と求めた。

https://www.asahi.com/articles/ASLCG4QQLLCGPLXB001.html

それぞれの報告書を掲載します。

【東京都】

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【香川県】
(まだWebに掲載されていない様子です)

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