保育士の不足感が強まっているのは首都圏や関西だけの話ではありません。

福岡県福岡市南区の認可保育所「たちばな保育園(社会福祉法人光陽園)」が保育士を思う様に確保できず、休園せざるを得ない状況に追い込まれました。

保育士足りず認可園休園へ 九州初、待機児童解消に逆行 福岡市
2018年12月29日 06時00分

 福岡市南区の認可保育所が必要な保育士を確保できないとして、来年4月からの休園を決めたことが分かった。在園児33人が転園を余儀なくされており、市は転園先の確保を支援する。保育士不足が原因の休園は九州で初めてとみられ、厚生労働省によると全国的にも極めて異例。政府は28日、子育て支援の目玉政策として幼児教育・保育の無償化を来年10月から始めると正式決定したが、保育需要はさらに高まるとみられ、保育士の確保が伴わなければ、待機児童解消にはつながらない可能性がある。

 休園するのは1979年設立の「たちばな保育園」。園は11月、「保育士を思うように確保できない」などと市に相談。市は人材派遣会社の活用などの対応策を提案したが、園は今月12日に休園を申し出た。

 市によると同園では近年、保育士が数人ずつ退職。園児数も定員120人を下回り、補助金も減額になる悪循環に陥り、現在は48人の園児に対し保育士数は4人と国の配置基準(1、2歳児6人に保育士1人など)ぎりぎりの状態だ。1人当たりの業務負担が重いことなどもあり、保育士を集められなかったとみられる。西日本新聞の取材に対し、同園は「考え抜いた末の休園。詳細なコメントは差し控える」と答えた。

 市が2015年度に行った定期監査では、同園は経営の悪化が指摘されていた。保護者の一人は「市はもっと早く手を打てたはずだ」と話す。市は「結果的に在園児が転園を強いられるという痛恨の事態を招いた。今後、指導監査の在り方を見直したい」とし、同園については他の法人への事業譲渡も視野に検討するとしている。

 来春の卒園児を除く1~4歳の33人は、転園先の確保が喫緊の課題となるが、認可保育所の4月入所希望者の1次選考申し込みは既に締め切られていたため、市は33人については申し込みを今月25日まで延長。加えて、周辺の保育施設にできる限りの受け入れも要請していくとした。

 市は待機児童の解消を目指し、保育所定員を毎年2千人規模で増やしている。ただ、賃金や業務負担の問題は深刻で、市は正規保育士を対象に月額上限1万円を家賃補助する待遇改善策を導入しているが、市内の保育士養成機関を卒業した有資格者が市内の保育所に就職する割合は45%程度にとどまっている。

 民間アンケートでは、無償化されれば保育利用の申し込みが増え、業務の増加が懸念されることから、保育士と幼稚園教諭の7割近くが「反対」と回答。保育士の確保や待遇改善を同時に進める必要性が指摘されている。(以下省略)

https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/476384/

たちばな保育園は福岡市南区桧原5丁目7−6にあります。桧原運動公園のすぐ北です。

残念ながら交通利便性は良くない場所です。最寄駅の地下鉄七隈線福大前駅まで約3km、新幹線博多南駅までは約5kmも離れています。天神へ抜ける幹線道路もありません。福岡市中心部との行き来は難儀すると感じました。

福岡市中心部から電車で通勤するのは難しいでしょう。働く保育士は近隣に住んでいる方が中心となりそうです。

月給14万円台から

保育士集めに失敗した一因は、待遇の低さも関係していると感じました。求人サイトに募集要項が掲載されています。

勤務先名 社会福祉法人光陽会 たちばな保育園
雇用形態 正社員
給与 月給 146,500円~<経験により応相談>
勤務時間 09:00~17:00 シフト制 (応相談)
勤務地 福岡県福岡市南区桧原5-7-6
最寄り駅 福岡市七隈線 福大前駅
待遇・福利厚生 休日:日 祝 他 
年間休日 111日
待遇:通勤手当 マイカー通勤可能

https://baby-job.com/kyushu/detail/90337/

同じ地域で保育士を募集している他園の待遇は、月給17万円台が中心です。低い給与しか提示できなかった背景には、経営悪化が影響しているでしょう。

赤字経営、手元資金は僅かだった

上記記事には、福岡市が2015年度に監査を行った旨が指摘されています。監査報告書自体は見つけられませんでしたが(もう少し探します)、経営悪化を示唆する資料が見つかりました。平成27年4月1日現在の現況報告書です。

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この資料の7ページに、法人(保育所のみを運営)の資金収支・事業活動の状況が掲載されています。資金収支や事業活動は共にマイナスが計上されており、法人運営が難航していると読み取れます。

資金収支等がマイナスであっても、手元に豊富な流動資産があれば問題ありません。しかし、当時の流動資産は約930万円、流動負債は約270万円でした。全く余裕がありません。

めぼしい資産は保育所建物だけです(土地は資産計上されていない)。保育所の不動産は原則として担保提供できません。

それから4年弱、手元流動性が枯渇し、保育士の採用難も相まって、休園に追い込まれたのが真相でしょう。

ただ、平成29年4月に実施された指導監査では見過ごされています。

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この時点で手を打てていたら、唐突な休園を避ける事は可能だったでしょう。休園は予測可能でした。保護者の一人が「市はもっと早く手を打てたはずだ」と指摘したのも頷けます。

保育所・幼稚園の休園は今後も頻発する恐れ

新聞報道等では「保育施設が不足している」という記事をしばしば見かけます。しかし、こうした現象が生じているのは都市部等に限られています。

そもそも長いスパンでは少子化が進展しています。都市部以外の大半の地域では子供の数が減少し続け、多くの保育所や幼稚園等が園児募集に苦戦しています。

また、たちばな保育園の様に政令市でも交通利便性が悪い地域にある施設は厳しい経営が予想されます。こうした地域は子育て世帯が流出しがちで、保育士も集まりにくいです。

今後、園児不足・保育士不足・経営悪化によって休園を余儀なくされる保育所や幼稚園等が次々と現れるでしょう。こうした状況を行政が早期に把握し、休園へ向けて軟着陸させる指導が必要だと感じます。