5歳の保育園児を用務員(非保育士)が園庭へ放り投げて頭蓋骨陥没骨折の重傷を負わせた事件につき、法人理事長・保育園長に対して京都市が児童福祉法に基づく改善勧告を行いました。
本事件に留まらず、法人運営・施設運営・財務管理・ガバナンス等の幅広い事項が対象となっています。
放り投げた用務員は法人理事長・保育園長・園長補佐の親族でした。
極めて深刻かつ様々な問題がある保育園です。

男児重傷で保育園理事長らに改善勧告 京都市

 京都市伏見区の民営認可保育園「春日野園」で保育士の資格が無い職員が男児(5)に頭蓋骨陥没骨折の重傷を負わせた問題で、市は23日、春日野園の澤井健二理事長と澤井清子園長に対し、再発防止のため児童福祉法に基づく改善を勧告した。市が同法に基づく改善勧告を行うのは初めて。資格の無い職員のみでの保育禁止などを求め、勧告内容が改善されない場合、認可取り消しも含めて対応していく。

 市は7月1~11日まで特別監査を実施し、男児にけがを負わせた職員が2012年度以降、クラス担任や幼児主任など資格が必要な立場で日常的に保育を行っていたことが分かった。この職員を含め理事長ら親族5人が園運営の中心を担い、園運営との関係が不明瞭な飲食費などの経費支出も発覚した。

 勧告は「不適切かつ閉鎖的な園運営が事案の要因になった」と結論付け、再発防止のため、責任の明確化や適切な運営に改めるよう指摘。事故防止マニュアルの策定や財務管理体制の見直しも求めた。市によると、事故は6月13日、職員が男児を園庭に投げ出し重傷を負わせ、3時間以上たってから病院に搬送した。園は当初、男児の保護者に「つまずいて転んだ」と説明していた。

http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20140723000138

体操教室中に男児重傷の保育園に京都市が「改善勧告」
2014.7.24 02:30

 京都市伏見区の民営認可保育園「春日野園」で6月に体操教室の時間中に5歳の男児が頭を打ち、頭蓋骨を折る重傷を負った問題をめぐり、市は23日、男児を放り投げたとされる30代の女性職員が投げ出し行為とケガとの因果関係を認めたことを明らかにした。これまで女性職員はケガとの因果関係を認めていなかった。男児の保護者は警察への被害届の提出を検討しているという。市は同園の運営体制の問題点も指摘し、同日付で改善勧告を行なった。

 同園に対し、1~11日に実施した特別監査をもとに、市議会教育福祉委員会で報告した。報告書などによると、6月13日午前10時~10時40分、体操教室で男児を含む複数の園児がふざけて棚に入った。用務員の30代女性職員が棚で寝転ぶ園児たちを園庭に放り投げたところ、置いてあった太鼓か樹脂製のカラーボックスに男児が頭をぶつけたとされる。その後3時間放置された男児は市内の病院に運ばれたが、頭蓋骨の陥没骨折と診断された。

 女性職員は保育士資格を持っておらず、当初は保護者に「つまずいて転んだと思う」と説明。同園も投げ出し行為を隠していた。問題自体は17日に市への匿名の通報で発覚した。

 また、報告書では同園の運営体制の問題点も指摘。離職率が高く保育士が不足し、無資格者による保育が常態的に行なわれていたという。園長の親族とされる女性職員は、実際は半日勤務のところを終日勤務とするなど不適切な勤務実態があったことも指摘した。

 市は責任の明確化や再発防止策の策定を求め同園に対し改善勧告を行なった。市保健福祉局は「安心安全であるべき保育所で命に関わる事態が起きたのは由々しきこと。問題の背景にある園の運営も含め抜本的な改善を求めていく」としている。

http://sankei.jp.msn.com/region/news/140724/kyt14072402300001-n1.htm

本事件の概要は、上記新聞記事や過去の投稿記事(5歳保育園児、女性職員に放り出され頭蓋骨骨折5歳児骨折事故続報&京都市の認可保育園、17園で保育士不足を指摘)にまとまっています。

本事件後、同園に対して京都市が特別監査を実施しました。

京都市認可保育所「春日野園」に対する特別監査実施結果について

 京都市の民営認可保育所の「春日野園」において,平成26年6月13日(金曜日)午前10時30分頃,同園職員が園ホール内で遊んでいた5歳児3名を園庭に投げ出し,うち1名が頭がい骨陥没骨折の重傷を負う事案が発生しました。

 本件については,事案の重大性を踏まえ,本市として直ちに調査を行うとともに,児童福祉法等に基づく「特別監査」の実施等により,事案そのもののみならず,当該事案発生の素地となった可能性がある日々の運営状況も含め,全容の解明を進め,このたび,「京都市認可保育所『春日野園』に対する調査報告書」として取りまとめましたので,お知らせします。

 この報告書は,特別監査によって明らかとなった問題点を示すとともに,本市から同園に対して児童福祉法に基づく「改善勧告」を行い,二度とこのような事案が発生しないように,再発防止のための取組を徹底的に行い,安心・安全な保育環境を再構築しようとするものです。

(中略)

(2) 実施方法
 ア 職員に対する聴き取り調査
   調査対象者:園長,保育士,栄養士等 計27名
 イ 書類検査
   施設運営,児童処遇,会計経理及び法人運営関係書類
 ウ 本市の実施体制
   延べ 34名(監査指導課 22名,保育課 12名)

(以下省略)
http://www.city.kyoto.lg.jp/hokenfukushi/page/0000170416.html

本事件は用務員が保育園児に重傷を負わせたのみではなく、社会福祉法人・保育所の「私物化」と言える様な「杜撰な保育所運営」が背景にありました。
具体的な事項は京都市による特別監査の実施結果等に基づいて作成された「京都市認可保育所『春日野園』に対する調査報告書」に詳しく記載されています。

京都市認可保育所『春日野園』に対する調査報告書
・概要版
・本冊

http://www.city.kyoto.lg.jp/hokenfukushi/page/0000170416.html

これほど怒りが込められた行政による報告書を読んだ覚えがありません。
長くなったので、報告書の内容に対する指摘や検討は次の記事に記載します