一部の認可保育所で自治体を通さず、定員を超過してこっそりと子供を預かっているケースが判明しました。
また、徴収した保育料が私的流用されている場合もありました。
大きな問題です。

定員外保育で裏金2億円…14施設で、飲食にも
2014年08月14日 07時37分

 新潟、兵庫、福岡、長崎の4県にある14の認可保育園が、「私的契約」という形で定員を超える計約300人の園児を預かり、総額約2億円の保育料を得ていたことが13日、県や政令市などが2009~13年度に行った特別監査で明らかになった。

 定員超過は厚生労働省の通知で禁じられており、県などは保育園を運営する社会福祉法人に対し、社会福祉法に基づいて適正な会計処理や責任者の処分を求める改善命令などを出した。14園の中には、超過分の保育料を裏金としてプールし、職員同士の飲食に使ったり、園長が私的流用したりした事例もあった。

 認可保育園の場合、入園などの手続きは市区町村が窓口になっており、市区町村は家庭環境や居住地などを考慮し、入園先を決める。だが、定員割れしている園に関しては、保護者と園側が直接話し合い、入園させることができる。14園は定員を満たしていたにもかかわらず、私的契約という形で県などに報告しないまま園児を受け入れていた。

http://www.yomiuri.co.jp/national/20140813-OYT1T50163.html

定員外園児、監査逃れで登園させず…名簿なしも
2014年08月14日 14時10分

 待機児童が全国的な問題となる中、新潟、長崎など4県の14認可保育園が、預け先に困った親から定員枠を超えて私的契約で子供たちを預かり、自治体への報告もなく受け取った保育料を職員の飲食などに使っていたことがわかった。

 保育園関係者は「保護者に強く頼まれ、仕方なかった」などと釈明するが、識者からは「保育中の事故につながりかねない」と危惧する声が上がる。

 新潟県内の保育園は2000~11年度、定員外で計33人を受け入れていた。多い時には定員60人のほかに22人の園児がいた。

 保育園を監査した自治体によると、この保育園では元園長が知人に頼まれて定員外で園児を預かるようになり、05年に就任した前園長も受け入れを続けた。定員外園児の保育料は計4000万円に上る。自治体の聞き取りに対し、元園長は個人口座で保育料を管理し、一部を私的に使ったことを認めた。

 定員外園児の存在が発覚したのは11年9月。保護者の一人が「保育園を移りたい」と自治体の窓口に相談すると、園児が名簿に記載されていないことが判明。前園長は懲戒解雇された。

 保育園を運営する法人の理事長(84)は、取材に対し、「元の園長が情に厚く、母親から頼まれると断り切れなかった」と話した。

 監査にあたった自治体によると、保育園関係者の多くが「預け先がないと、仕事を続けられないと母親に頼まれ、やむを得なかった」「金もうけでやったわけではない」などと説明した。しかし、問題が発覚した保育園の多くが、自治体の監査の日には定員外の園児を登園させなかったり、自治体に提出した名簿には定員外の園児の名前を記載しなかったりして隠そうとしていた。

http://www.yomiuri.co.jp/national/20140814-OYT1T50071.html

私的契約による入所が禁じられているわけではありません。
厚生省からの通知でも、その存在がはっきりと認められています。

私的契約児の入所について
私的契約児については、定員に空きがある場合に、既に入所している児童の保育に支障を生じない範囲で入所させることは差し支えないものであること。
厚生省児童家庭局保育課長通知「保育所への入所の円滑化について」

これを受けて、一部の自治体では「保育所への私的契約による入所取扱要綱」を制定しています。

ときがわ町保育所への私的契約による入所取扱要綱
平成20年8月29日告示第87号

(趣旨)
第1条 この告示は、ときがわ町保育所条例(平成18年ときがわ町条例第91号)に基づき設置するときがわ町保育所(以下「保育所」という。)に、保育に欠けない児童を私的契約により入所させるにあたり必要な事項を定めるものである。
(入所の条件)
第2条 町長は、保育所の措置児童が認可定員に満たない場合に限り、認可定員の範囲内において、保育に欠けない児童の入所を認めるものとする。

(以下省略)
https://www.town.tokigawa.lg.jp/div/102010/htm/reiki/reiki_honbun/r292RG00000597.html

また、大阪市の社会福祉法人自己点検・自己評価表【法人・保育所会計】では、「私的契約児の保育料等について」という欄において、適正な徴収・計上を行う様に点検を促しています。

問題点は下記の点でしょう。

(1)自治体を通さずに入所を受けて入れた
保育所への申込があった子供は自治体が入所を決定するところ、本件では保育所の園長等がこっそりと預け入れて保育を行っていました。
入所できずに空きを待っている他の保護者・子供にとっては許し難い話です。
万が一事故が発生しても、自治体からの補償や各種保険は適用されない場合があるでしょう。
また、私的契約児に係る保育料を保育所の会計へ受け入れると自治体を通さない私的契約児の存在が露呈してしまう為、必然的に裏口座で管理することとなるのでしょう。

(2)定員を超過していた
私的契約児について定めている上記入所取扱要綱でも、明文で「認可定員の範囲内において・・・・」としています。
都市部を中心に一部の保育所では入所定員の弾力化措置によって定員を超過して園児を受け入れていますが、これはあくまで自治体の指導・監督の下に行われている例外的措置です。
特定の子供を認可定員外で受け入れる行為は何ら正当化できません。

こうした問題が発生する背景には、深刻な待機児童問題と社会福祉法人のガバナンス欠如があるでしょう。
後者については春日野園問題が象徴的です。
それ以外にもここ1ヶ月の間で不正経理・私的流用等、社会福祉法人に関する数多くの問題が報道されています。

大半の社会福祉法人や保育所は、子供のために適切な保育を行っているでしょう。
だが、一部にはこうした制度の枠外で不適当な保育・経理処理を行っている社会福祉法人・保育所があるのも事実です。
自治体による厳格な監査及び制裁が求められます。