関西ローカルニュースに強い、産経新聞のWeb特集記事です。
大阪府茨木市で3歳女児が衰弱死して実母・義父が殺人容疑で逮捕された事件につき、徐々に真相が明らかになってきました。
また、児童虐待が疑われるケースでの通報の難しさも浮き彫りとなっています。」
なお、逮捕前後の報道は【ニュース】大阪府茨木市で3歳女児を衰弱死させた義父(22)と母親(19)を殺人容疑で逮捕に掲載しています。

 【衝撃事件の核心】

 寒空の下、裸足で立ちすくむ女児からのSOSは届かなかった。難病を抱える長女(3)に十分な食事を与えず衰弱死させたとして、大阪府茨木市の大工の義父(22)と無職の母親(19)が11月20日、大阪府警に殺人容疑で逮捕された。やせ細った長女の体内から見つかったのは、アルミ箔(はく)やロウソクのロウ、タマネギの皮。空腹を満たすために口に入れたとみられる。自宅周辺では、女児が真冬に玄関前に裸足で立たされたり、ベランダの手すりに両手を粘着テープで結びつけられたりする姿が目撃されていた。しかし、こうした「異変」は行政や地元保健所などに届かず、事態は最悪の結末を迎えた。

■顔面や頭に打撲痕も
■虐待「無縁」と判断
■増え始めた目撃情報
■目を腫らし虐待否定
■“通告”にためらい


http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/141201/evt14120111350013-n1.html
(詳細はリンク先にて)

当初は育児に積極的だった実母ですが、義父との再婚を機に女児への対応が激変したとうかがえます。
同種事件でよくある「実子より再婚(同棲)相手を優先する」行動と言えるでしょう。

密室で発生する虐待事件ですが、そうした様子が外部から全く分からないわけではありません。
本事件では周囲の人があざ・痩せている・粘着テープでの縛り付け等を目撃しており、一部は市へ連絡しています。
虐待が疑われるケースは周辺住民が気づいている場合が実は多いです。
人口密集地で夜間に子供が泣き叫んだら、あまりに煩さに確実に誰かが気づきます。
それが毎晩の様に続いたら尚更です。

こうした通報、実は児童虐待防止法では「通報義務」とされています。
意外でした。

(児童虐待に係る通告)
第六条  児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H12/H12HO082.html

ただ、市等へ通報するには心理的障壁があります。
こうした公的機関へ同種の通報等を行う場合、大半の場合に「氏名や連絡先を教えて欲しい」と訊ねられます。
これがものすごーーーーく嫌なのです。
あくまで虐待等が疑われる事件の端緒を連絡して適切な対応を求めているのに過ぎません、
連絡先等を伝えてしまうと行政機関等から頻繁な連絡があったり、または疑われている人間に連絡先が伝わって嫌がらせ等をされる恐れもあります。
そもそもこうした行為を行っている人間と関わりたくないのは、多くの方に共通した認識でしょう。
匿名での通報行為すら勇気が必要です。

記事では近隣住民がこの様に話しています。
「うちにも子供がいる。通報が知られて子供に危害を加えられたらと考えるとこわかった」
この気持ちはとてもよく分かります。
実子・再婚相手の実子を虐待するのであれば、通報した家庭の子供がそれ以上の目に遭うかもと危惧するのは当然です。

児童虐待防止法7条で通報者の保護規定が定められています。

第七条  市町村、都道府県の設置する福祉事務所又は児童相談所が前条第一項の規定による通告を受けた場合においては、当該通告を受けた市町村、都道府県の設置する福祉事務所又は児童相談所の所長、所員その他の職員及び当該通告を仲介した児童委員は、その職務上知り得た事項であって当該通告をした者を特定させるものを漏らしてはならない。

当然の保護規定ですが、一方で行政機関から様々な情報が漏洩しているのはしばしば報道されています。
記憶に新しいところでは、有名人等の戸籍情報が大阪市職員によって閲覧され、一部は外部へ流出した可能性が指摘されています。
万が一でも情報が漏洩、漏洩しなくても虐待が疑われる家庭に調査が入ったことによって通報したと疑われると、転居せざるを得ない状況に追い込まれる可能性もあります。

通報しないのも仕方がない、と言えるかもしれません。
悲しい世の中ですが。