大阪市保育所入所選考基準改正案について(基本点数表)の続きとして、調整指数表・順位表を取り上げます。
下線部が変更箇所を示しています。

調整指数表・順位表の主な改正点は(1)各種内容の明確化、(2)保育施設としての家庭保育・ベビーセンターの削除、(3)長期待機児童への優遇措置、(4)身内雇用による減点措置のメリハリ、(5)同一保育所へのきょうだい入所への優遇措置の強化、です。
概ね妥当な改正だと思いますが、個別の点は下記コメントで摘示しています。

<保育の代替手段>


児童を65歳未満の親族(保護者住所地からおおむね1km圏内)に預けることが可能である。


児童を65歳未満の祖父母・曾祖父母(保護者住所地からおおむね1km圏内)に預けることが可能である。

保育の代替手段としての「65歳未満の親族」(民法上の親族だとしたら血族6等親・姻族3等親)の範囲が、「65歳未満の祖父母・曾祖父母」と変更されています。
児童を叔父・叔母へ毎日預けるのは現実的ではなく、現実的な直系尊属へと限定したのでしょう。


保育ママ、家庭保育・ベビーセンター及び認可保育所の卒園児。(入所申込みのあった年度の年度末に卒園予定の者に限る。) 5


保育ママ及び認可保育所の卒園児。(入所申込みのあった年度の年度末に卒園予定の者に限る。) 5

他の保育施設を卒業し、新たな認可保育所へ入所する児童が優先的に入所できる為の措置です。
優先対象から「家庭保育・ベビーセンター」が削除されています。
大阪市は家庭保育・ベビーセンターについて保育ママ(個人. 実施型)へ移行を促しており、更に促進する為の措置でしょう。


入所申込時点で保育要件があり、申込児童を認可外保育所(保育ママ、家庭保育・ベビーセンターを除く)へ週3日以上、有償で預けている。5  (追加)


入所申込時点で、申込要件を理由として申込児童を認可外保育所(保育ママを除く)へ週3日以上、有償で預けている。5(12.求職中を除く)

同一申込要件(求職中を除く)を理由として認可外保育所から認可保育所への移行を促す措置です。
保育ママが除かれていますが、「保育ママの卒園児」としての加点措置があります。
「保育実施可能期間における保育ママから認可保育所への移行には加点しない」という趣旨でしょう。


(追加) (追加)


入所申込時点で、前項目の期間が6ヶ月以上の場合。(前項目と重複しての加点は行わない。) 7

「全項目」とは「保育ママを除く認可外保育所への週3回以上の有償預け入れ」を指します。
半年以上という長期間の待機児童に対する加点措置でしょう。


児童を同伴就労しているが、職種により危険を伴う場合


児童を同伴就労しているが、職種により危険を伴う(児童が保育されている場所において、通常家庭で存在し得ない危険物を扱う)場合

「職種による危険」を「家庭で存在し得ない危険物を扱う」と具体化しています。
たとえば薬品類・刃物等でしょうか。

<世帯の状況>


通信制大学、通信教育の学生である。-2


通信制大学、通信教育の学生である。-5

通信制大学等も「通学」として扱われますが、原則として在宅している事から減点幅が大きくなっています。

<就労状況>


恒常的な夜勤等により入所可能な保育所が限定される場合


両親の勤務時間(通勤時間及び残業時間を含まない)により入所可能な保育所が夜間保育所に限定される場合

「夜勤等」が「勤務時間(通勤・残業時間を除く)」と限定され、入所対象も「夜間保育所」とされました。
従来の解釈では「夜勤等」に「残業+遠距離通勤で帰りが遅くなる」場合が含まれるか疑義があったのでしょう。
ただ、夜間保育所は多くありません。


入所予定日において、勤務実績が1カ月未満である世帯。-1


(削除) (削除)

勤務実績が短期間である場合の減点措置が削除されました。
勤務実績によって異なる取扱いをする合理的な理由がないからでしょう。
代わりに、本改正案では就労内定の場合の減点幅が大きくなっています。


雇用主が保護者の三親等以内の親族である場合。-2


雇用主が保護者の配偶者又は三親等以内の親族であり、保護者が扶養控除、配偶者控除又は配偶者特別控除の対象となっている場合。-5
雇用主が保護者の 配偶者又は 三親等以内の親族であり、保護者が専従者控除の対象となっている場合。-2

雇用主が身内である場合(個人事業主や同族企業だと多いケースです)に一律減点するのではなく、収入・所得が少なくて扶養控除等の対象となる場合の減点幅を拡大し、また専従者控除は従前と同じ減点幅とする事により、減点措置にメリハリを付けています。
身内が雇用主の場合、雇用時間や労働内容は如何様にも出来てしまいますから。


(追加) (追加)


就労内定のうち、就労開始時期が未定のもの。-6

就労開始時期が未定である内定にたいする減点措置が加えられました。
いつから就労を開始するのか不明であり、そもそも保育に欠けるという要件を満たすか否か疑問が持たれます。


(追加) (追加)  (追加)


求職活動状況を証明する書類の提出がある場合。2 11.ひとり親で求職中・12.求職中のみ

求職活動状況を証明する書類の提出による加点措置です。

<きょうだいの状況>


きょうだいの状況(いずれか一つ)


きょうだいの状況(削除)

きょうだいの状況による加点・減点項目が、従前の「いずれか一つ」から「該当項目全て」へ変更になります。
各項目は各々独立した事象であり、複数項目に該当するケースは当然に発生していたからでしょう。


多胎児が同時に申し込みをする場合。3


双子が同時に申し込みをする場合。(三つ子以上の場合は、1人増えるごとに1点を加算する。)3

三つ子が申込を行う場合、加点が3点から4点になります。


既にきょうだいが入所している場合。5


既にきょうだいが入所しており、同一保育所に入所を希望する場合。(同一保育所の選考においてのみ加点の対象とする。) 7

既にきょうだいが入所している場合の加点措置を「同一保育所への入所」に限定し、かつ加点幅を大きくしています。
きょうだいが別個の保育所へ入所してしまうのは一種の悲劇です。
毎朝夕は離れた2カ所の保育所を経由して自宅や職場に向かわなければならず、また保育所によて持ち物や行事日程が異なるのできょうだい間で荷物が混同したり運動会等がバッティングする恐れが生じます。
こうした事態を避ける為の措置でしょう。
子供と同じクラスできょうだいが異なる保育所へ入所している児童がいましたが、お母さんは疲弊しているのが目に見えて分かりました。
もう少し加点幅を強化すべきと思う一方、人気園の場合に「上のきょうだいがいないと事実上入所できなくなってしまう」というケースが更に生じてしまう恐れがあります。
基準点が205点の保育所では既に生じていると推測されます。


きょうだいに保育所入所申し込みのない未就学児がいる場合。(当該児童が介護・看護の対象児童である場合を除く。) -4


きょうだいに保育所及びその他保育施設への入所及び入所申込みのない未就学児がいる場合。(当該児童が保育所への入所が不可能な月齢である場合及び介護・看護の対象児童である場合、幼稚園児であって預かり保育を利用している場合を除く。)-4

減点対象となる「入所申込のない未就学児」につき、入所不可能な月齢(半年未満でしょう)や幼稚園での預かり保育利用者を除いています。


(追加) (追加)  (追加)


その他 正当な理由なく保育所入所内定を辞退するなど、公正な選考に支障を来たすような行為を行った場合。(入所希望日が同一年度内の入所申込みに限る。) -1

入所申込をしたにも関わらず辞退した場合等に対する制裁措置です。
「公正な選考に支障を来たす様な行為」と限定されているので、適用範囲は限られるでしょう。

<順位表>


(追加)  (追加)


3 祖父母又は20歳以上のおじ・おば・きょうだいと同居していないこと。

同一点数だった場合の順位付けにて、新たに同居親族の有無が付け加えられました。
祖父母はともかく、20歳以上のおじ・おば・きょうだいに家庭での養育を期待するのは難しいかなと感じました。

本件改正案について、9月5日までパブコメを行っています。
疑問や意見等のある方は、大阪市役所こども青少年局保育施策部保育企画課まで直接意見等を送る事ができます。
また、ここでコメントを残して頂ければ、まとめて同課へ送る事も検討しています。