4. 特別区設置後の利用調整は?

では住民投票によって特別区が設置された場合、別の特別区にある保育所へ入所申込を行った場合にはどの様な利用調整が行われると考えられるのでしょうか。
特別区設置後の行政のあり方については特別区設置協定書(本文・別表等)に記されていますが、異なる特別区にある保育所への入所(広域調整)に関する文言は見つかりませんでした。
これに関して、3月5日の大阪市会こども教育委員会で具体的なやりとりが行われています。

Q.特別区再編後は別特別区への入所が難しくなるのでないか。

Q.仮に特別区へ移行した場合はどうなるのか、全く同じ条件の下で入所審査が行われるのか
A.特別区で入所受付・選考が行われる、特別区を跨る入所申請は在住区で受け付けて特別区同士で入所調整が行われる見通し
A.他自治体からの受け入れの場合、市外在住は20点のポイントとしている

Q.市内優遇措置というハードルが設けられる?
A.市内居住者を優先している、他自治体でも多く聞いている

Q.当たり前と言えば当たり前、特別区は別自治体である
A.(市長)基本的には現状制度のまま特別区に引き継ぐ、特別区を跨ぐケースは2.9%
A.特別区間は相互主義なので特別区長間で協定を結ぶものと認識している

Q.協定書に明記されていない、特別区長の一存で変わる恐れもある、表現には気をつけて欲しい

(Q.は木下議員の発言、A.は大阪市長・市職員の発言)

また、上記「VOICE」(MBS)ではこの様な発言がありました。

橋下大阪市長「(保育所を)区民にしか使わせないわけがない」
柳本市会議員「(異なる区の保育所へ)行けるかどうかは財政状況と区長の判断によって変わってしまう」

これらの発言等から、下記の事項が推測されます(あくまで推測です)。
・広域調整については協定書で定めていない。
・異なる特別区にある保育所への入所申請は可能
・市外(区外)の住民に当該区内の保育所を使わせないわけがない
・ただし、あくまで市内(区内)居住者が優先である
・特別区長の権限や区長間の協定により、何らかの措置や判断が行われる可能性もある(?)

大阪市長や住民投票で賛成を投じる様に主張している政党に属している議員等の主張を追ってみたのですが、その範囲では「特別区以外の住民も特別区の住民と同等に利用調整を行う」といった発言等は見つかりませんでした(あれば教えて下さい)。
特別区を跨ぐ保育所入所における利用調整は協定書等に記載が見つかりません。
よって「異なる自治体からの入所申請として処理される可能性が高い」と考えられます。

5.影響は?

真っ先に影響を受けるのは、異なる特別区にある、より職場等に近い保育所へ入所している世帯です。
特別区を跨ぐ保育所入所も可能であると言っても、利用調整においては当該特別区民に劣後する可能性が高いです。
特別区を跨ぐ入所(特に現に入所基準点が高い市内中心部)は著しく困難となるでしょう。

逆に市内中心部に住んでいる方の立場で考えると、異なる特別区からの保育所入所が著しく困難となることの裏返し、すなわち中心部にある保育所へ入所しやすくなると考えられます。
とは言っても周辺部からの入所者は決して多くなく、入所しやすくなると言っても微々たるものでしょう。

6.要望

住民投票で賛成が多数となった場合、2年後の平成29年4月に特別区が設置されます。
上記で推測した通りに調整が行われる事となれば、何らかの混乱は避けられないでしょう。
身近な住民サービスと現に大阪市内に居住して異なる区にある保育所を利用している子育て世帯の便宜を図る観点から、特別区設置後もこうした経過措置を望みます。

・既に兄姉等が入所している世帯への経過措置
兄姉が特別区外の保育所へ入所している一方、弟妹が当該保育所へ事実上入所できないのは著しく不利益を被ります。
保育利用調整基準においても兄姉が在籍している保育所へ入所を申し込む場合には点数が加算されている趣旨から、少なくとも特別区外であっても兄姉が在籍している保育所へ入所を申し込む場合は保育所がある特別区に住んでいる住民と同じ基準で調整すべきでしょう。

7.まとめ・私論

「異なる特別区の保育所への入所申込は可能である。但し、あくまで特別区内在住者が優先される。」という結論(あくまで推測)に至りました。
事実上選択肢が乏しくなるのは全市域で共通する一方、保育所入所が困難な地域を中心としてやや入所しやすくなる可能性もあります。

こうした議論や憶測が広がっているのは、保育所の広域調整について協定書で明確にしなかったからでしょう。
細かな点は協定書で決めずに特別区長の判断や議会での議論に委ねるべきと言う意見もありますが、広域調整は自治体を跨ぐ行政となる事から、私論としては協定書で明確にすべきだったと考えています。

経過措置として期間を区切った上で保育所利用調整は各特別区が合同で行う(要は現在の利用調整システムのまま)のが、混乱や摩擦を回避しつつ妥当な結論を得られるのではないでしょうか。
異なる特別区にある保育所への入所申込みであっても当該特別区民と同等の基準で調整される、という取り扱いも当然ながら含みます。
現在は約3%の園児が異なる特別区となる保育所へ登園していますが、特別区が設置されて別自治体となれば自然と減少していくでしょう。