ベビーカーを利用している家庭にとっては恐ろしい事件です。

東京メトロ有楽町駅の構内でベビーカーに乗っていた1歳の男の子の頭を、いきなり殴ったとして64歳の男が警視庁に逮捕されました。男は「ベビーカーが邪魔だった」と供述しているということです。

 暴行の疑いで逮捕されたのは、東京・荒川区の無職の64歳の男です。男は26日午後1時ごろ、千代田区の東京メトロ有楽町駅の構内で30代の母親が押すベビーカーに乗っていた1歳の男の子の頭を、すれ違いざまに、いきなり右の拳で殴った疑いが持たれています。男の子にけがはありませんでした。

 男は男の子を殴ったあと、逃走しようとしましたが、母親の叫び声で気づいた父親が、その場で取り押さえたということです。取り調べに対し男は「ベビーカーに自分の進路がふさがれ邪魔だったので、腹が立って殴ってしまった」と容疑を認めていて、28日午後、釈放されました。

(以下省略)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2599997.html

男の子にケガがなかったのが不幸中の幸いです。
殴り方によっては長期入院・後遺症の発生も懸念される事件です。

ニュース動画によると、事件が発生したのは地下鉄改札外の幅3メートルほどの通路上でした。
駅ホームとは異なり、比較的ゆったりとした通路です。
仮にベビーカーと正面からぶつかりそうになっても、左右のいずれかに容易に避けられるスペースがあります。
すれ違いざまに殴りつけるのは言語道断です。

人によっては「大きな幅を占有しているベビーカー側が譲るべきではないか」という意見もあるでしょう。
しかし、ベビーカーは小回りが効く乗り物ではありません。
本体が6-10kg、子供が5-15kg、座面の下や押して部分に掛けている荷物が2-5kgとすると、少なくとも13kg、重ければ30kg程度の重量があります。
更に母親が小柄であったり他の小さな子供も連れているのであれば、ますます小回りは効きません。

また、この事件で腹立たしいのは、ベビーカーに乗っている1歳男児という社会的弱者を相手にした犯行という点です。
邪魔だった相手が40代男性でも殴っていたのでしょうか?
5歳児と1歳児を連れて四苦八苦して移動している母親の目の前で殴るとは余りに大胆であり、同時に「反撃してこない、追いかけてこない、逃げ切れる」と考えていたのでしょうか。
父親が気づかなければ逃げ切った可能性が高いです。

ベビーカーや乳幼児を連れて外出している親子連れは他者に助けを求める場合がある社会的弱者であるのに対し、そうした認識が社会から欠けていると感じる場面が少なくありません。
たとえば電車内のベビーカー・車いすを置くために椅子が取り外されたスペースが、学生や外国人の荷物によって占有されている時です。

電車を利用する時はベビーカーの安定性や他の乗客への迷惑を避ける為、優先座席指定がある乗車口から乗車する方が少なくないでしょう。
優先座席の反対側にはベビーカー等置き場がある車両が多く、ここに止めて車輪をロックできれば息が抜けます。
ここ以外の場所、例えばドア脇や向かい合うロングシートの間に止める場合は電車の揺れでベビーカーも揺られ、また他の乗降客の通り道となるので電車が止まる度にベビーカーの移動を強いられてしまいます。

しかし、貴重な車いすスペースが他の乗客で占有されている場合が少なくありません。
「場所を空けて下さい」と声を掛けるのは憚られます。
また、ベビーカーに気づいて場所を空けて下さる方は極めて希です。
ベビーカー利用者の視点としては、優先座席以上に必要なのがベビーカー・車いすを安心して止められる場所です。

では、殴りかかってきそうな相手がいる場合はどうすれば良いのでしょうか。
事前に察知するのは困難ですが、周囲に注意を払っていれば何らかの不審な行動をしている人物の存在には気づけます。
ベビーカーに向かって直進してくる人間、スマホに気をとられて周囲が見えていない人間、横一列でゆっくり歩いて隙間がないグループ、脇目も振らずに走っている人間、酔っ払い等、特に都心部では数多く見かけます。
目を合わせて存在を知らせれば、大半の場合は避けてくれます。
避けてくれなくてもこちらが早めに存在に気づけば、ベビーカーの進路を変えて衝突を防げます。
悪意を持つと疑われる人間の接近に気づいたら、できるだけ早く進路を変更して避けるのが、子供の安全を守るという観点から無難な方法でしょう。

大阪特有の事象かもしれませんが、少し対応に困るのが「悪意はないが子供に話しかけたがる、触りたがる人間」です。
特に孫感覚で接してくる老人が多いです。
話しかけられる分にはまだ良いのですが、問題なのが触りたがる老人です。
接近して話しかけてきた段階で要注意として警戒しています。
触ろうとしたら「その汚い手が触ろうとするなあああああ」と心の中で叫びつつ、自分の手や身体を間にいれて「このあたりで・・・・」と終わらせています。
油断も隙もあったものではありません。

この様に、ベビーカーで外出すると気を遣って本当に疲れます。
「疲れるぐらいならベビーカーで外出するな」という意見も聞きます。
では、ベビーカーを利用する子育て世帯は自宅に引きこもって子育てを行うべきなのでしょうか?
子供は邪魔者扱いですか?

殆どの事は、日々の子育てを通じてノウハウを蓄積している子育て世帯が自らできます。
邪魔をしないで欲しい、優先利用が定められているう場所は譲って下さい。
ベビーカーが容易に通行できる程度の空間を空けて欲しい、電車内での優先スペースは空けて欲しいという、慎ましい願いがあるだけです。