菅義偉官房長官は29日、フジテレビの情報番組で、歌手で俳優の福山雅治さんと俳優の吹石一恵さんの結婚について「この結婚を機に、ママさんたちが一緒に子供を産みたいとか、そういう形で国家に貢献してくれたらいいなと思っています。たくさん産んで下さい」と発言した。

 菅氏は、番組後にあった同日の記者会見で発言の真意を問われ、「結婚について聞かれたので、大変人気の高いビッグカップルで、皆さんが幸せな気分になってくれればいいと思っている中での発言だった」と説明した。

 「『産めよ増やせよ』との政策を連想する人もいる」との質問には、「全く当たらない」と反論。「安倍晋三首相も、不妊治療を受ける方を応援する趣旨の発言をされている」と述べ、不妊治療の支援策などに取り組む政府の姿勢を強調した。

フジテレビ系情報番組「直撃LIVE グッディ」です。


(2分10秒頃から)

(和気藹々とした雑談が続く)

安藤「あの、この際ですから、官房長官として福山さんの結婚はいかがですか?」
高橋「(大笑い)」
管「(笑顔で)本当に良かったですよね。それであの、この結婚を機にですね、やはり、ママさんたちが、一緒に子供を産みたいとかという形で、国家に貢献してくれればいいなあと(笑い)
安藤「少子化にね、という官房長官直々のコメントを、福山さん頂きましたんで」
管「(笑い)」
カンニング竹山&尾木ママ「(やや引きつった笑い?)」

管官房長官が出演したコーナーの主題は観光振興・安保法案でした。
コーナー冒頭での雑談の時間において場を和ませるために安藤キャスターが旬な話題を振り、官房長官が答えたという印象です。
官房長官の発言に対して間髪入れずに突っ込んで欲しかったです。

福山雅治&吹石一恵さんの結婚話は、事前の打ち合わせで触れられなかったかもしれません。
深く考える事なく、一般論として祝福の意を表明したのではないでしょうか。
それと同時に、潜在意識に「結婚=出産、少子化問題の解決」という図式がある様に感じました。
深い考えはなく、つい本音が出てしまったと受け取れました。

揚げ足取りをするつもりはありませんが、やはりどうしても引っかかってしまいます。
「結婚や出産は個人の自由ではないのか」と「出産=国家に貢献なのか」という指摘は様々な人間やウェブサイトが行っているので省略します。
こうした発言を行う以上、そうした考えを有しているのは否定できないでしょう。

しかし、私が問題視したいのは「仮に出産=国家に貢献であるならば、どうして政治は子育て世帯(や若年層)に冷淡なのか」という点です。

出産や子育てには多大な労力や費用が掛かります。
出産直後から数ヶ月は外出する事すらままならず、半引きこもりの様な生活となってしまいます。
子供が大きくなってからも手が掛かるのは変わらず、自分の時間が殆ど持てない生活が数年は続きそうです。
子連れで落ち着いて旅行へ出かけられるのは、いつになる事でしょうか。
航空会社のマイレージが貯まったままです。

1歳前後には復職・再就職を考える人は少なくないでしょう。
しかし、首都圏や都心部を中心に保育所不足は酷いままです。
認可保育所は狭き門、認可外保育施設は高額の保育料が必要とされ、復職や再就職を断念せざるを得ない話をしばしば聞きます。

保育所等に入所できた後であっても、保育料以外に食費・被服費・住居費等、子供に関連して多額の費用負担を強いられます。
この先は学費等もかさむでしょう。
以前に知人から「子供1人への出費でマンションが買える」という話を聞きましたが、真実に近いと改めて実感しています。

同世代では未だ独身であったり、結婚していても子供がいない友人が少なくありません。
勤務先や給料の違いがあるでしょうが、同じ様に働いていても可処分所得が全く違ってしまっています。
子供がいると毎日の様に残業付きフルタイムで働くのは難しく、外食や趣味等に割ける金銭は急激に減少します。
自由に働いて遊んでいる隣の芝が羨ましくなってしまいます。

私自身は「出産は国家への貢献」という考えを否定しません。
政権首脳が大っぴらに発言するのは如何な物かと思いますが、子供の数が少なくなれば個人の生活(特に老後)や国家の存続に大きな影響を与えるのは言うまでもありません。
であるならば、親身を削って国家に貢献している子育て世帯や子育てを考えている若年層に対して十分な支援を行うべきでしょう。
「貢献して欲しい、でも子育てや収入の確保は各自で努力して下さい。」では酷すぎます。

経済的に不安で結婚できない若年層への就職支援、子育てと就労の両立を図る為の保育所等の増設、多子世帯へのより充実した経済的支援等、結婚して子供が欲しい人間への支援策が不足しているのが実情です。
少子化問題の進展は、詰まるところ「国家が若年層を蔑ろにし、それに対して若年層が自己防衛した」為と言えるのではないでしょうか。