平成28年度保育所等一斉入所申込状況分析、第7回もリクエストにお応えして阿倍野区を取り上げます。

※10月28日に発表された数字に基づています。

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昨年と比較して入所倍率が0.3倍以上増加した箇所はオレンジ、逆に0.3倍以上減少した箇所は水色で、入所倍率が2倍を超えている箇所は赤で表示しています。
なお、申込があるにも関わらず募集数が「0人」の箇所は、便宜的に倍率を99.99倍としています。

阿倍野区の入所倍率は市内2位、既設保育所への入所はより難しく

阿倍野区での保育所入所倍率は昨年より若干上昇して1.52倍でした。しかし、同様に入所倍率が高かった他区は積極的に保育所を新設し、保育の場を作ろうとしました。しかし、ここ数年の間に阿倍野区内で新設された保育所はあい保育園昭和町のみです。保育所を積極的に新設している天王寺区・浪速区・中央区等との違いは鮮明です。結果として、阿倍野区の入所倍率は西区に次いで市内2位となりました。

申込人数はH27の520人から576人へと増加しました。特に0歳児(+21人)、1歳児(+26人)、3歳児(+10人)の伸びが顕著です。一方、募集数は28人増加しました。しかし、その全ては小規模保育等の充実によるものであり、保育所での募集数はほぼ前年通りです。つまり、既設保育所へは昨年以上に多くの児童が第1希望として申し込み、より入所しにくくなっています。

深刻な1-3歳児入所

昨年も厳しかった1-3歳児は、今年はより一層に厳しくなっています。募集数ではなく、申込数の増減で見ると分かりやすいでしょう。保育所へ入所できる児童は半分を大きく割り込みます。小規模保育等へ入所できる児童も僅かです。

特に深刻なのは3歳児です。募集数18人に対し、52人の児童が申し込んでいます。幼稚園と併願している児童が一部いるとは言え、あまりにも募集数が少ないです。小規模保育等の卒園児が更に多くなる来年は、より入所しにくくなる可能性が高いでしょう。

松虫通以北は極めて深刻

阿倍野区内は入所倍率が高い保育所が多くを占めています。特に松虫通以北にある保育所は入所倍率が極めて高かった昨年以上に高く、より深刻になっています。この地域の1-3歳児で保育所へ入所できるのは、概ね3名に1名でしょう。

最も高かったのは、望之門保育園の4.46倍でした。同保育所は毎年高倍率となっていますが、今年は昨年よりも申込数が20人も増加しました。特に1歳児は募集数1人に対して19人が第1希望としています。兄姉が在園している1歳児であっても入所できない恐れがあります。多くの方が他の保育所を第1希望に変更するのではないでしょうか。

変更候補の1つはせいあい保育園です。3歳児からは聖愛幼稚園へ入園できます。保育園と幼稚園が併設されており、開園・閉園時間も同一だそうです。乳児期は保育所を、幼児期は幼稚園を利用したい方にとっては魅力的な選択肢です。また、上町台地の下、西成区の天下茶屋保育所も候補となるでしょう。

次に高かったのは、阿倍野保育園の3.54倍でした。年々募集人数が減少しているのが気がかりです。1-2歳児は極めて高い倍率、3-5歳児は募集なしです。市内屈指の大規模校、常盤小学校の学区内にあります。松の実保育園も似た状況なです。

同じ常盤小学校の学区内にある三明保育所も2.55倍という高倍率です。目と鼻の先にある大教大天王寺小学校の受験を検討している家庭も多そうです。0歳児入所倍率が2.5倍と極めて高くなっています。ただ、入所者平均点等は近隣の他保育所よりほんの少し低くなっています。天王寺駅にあまりに近く、関西本線以北からの希望者が少ないからでしょうか。

あべの筋より東側に住んでいる方でしたら、東住吉区内の北田辺保育園も候補となるでしょう。同保育所は1歳児を中心として昨年より大幅に募集数が増えており、昨年より入所しやすくなっていると考えられます。少し距離はありますが、東住吉区内の他の保育所へ登園し、東部市場前駅から通勤する方法も考えられます。

松虫通以南はフルタイム共働きなら概ね入所できそう?

一方、松虫通以南でも保育所へ入所しにくくなっていますが、以北ほど深刻ではありません。入所者平均点・入所基準点は以北の保育所より共に低くなっています。一部の保育所・年齢を除く、フルタイム共働きなら概ね入所できる印象です。

この地域では、きたばたけ保育園を除く全保育所が地下鉄御堂筋沿線に集中しています。この地域で入所倍率が最も高いのは、あい保育園昭和町の2.18倍です。0歳児はちょうど1.00倍ですが、1歳児が7倍、2歳児が2.5倍という高さです。

入所倍率が2.00倍と高い育徳園保育所も同じ状況です。1-2歳児入所希望者が特定の保育所へ過度に集中する傾向が見られます。両保育所は共に駅前にあるからでしょうか。1歳児入所者の大半は兄姉が在園している児童となってしまいそうです。

あべの筋より東側に住んでいる方であれば、阪和線の東、東住吉区にあるめぐむ保育園も近くて登園できそうです。全体の入所倍率は1倍を切っていますが、0-1歳児は2倍前後と高くなっています。入所するには阿倍野区内の保育所と同程度の点数が必要となりそうです。

阿倍野区は幼稚園優位か

阿倍野区で特徴的なのは私立幼稚園の多さです。ざっと見た限り、保育所より幼稚園の方が多そうです。その反面、保育所の選択肢は相対的に乏しく、募集数も少なく感じられるのでしょう。3歳児入所倍率は、同じく幼稚園が多い住吉区に次いで3位となっています。なお、3歳児入所倍率が最も高いのは西区の7.67倍です。反対に私立幼稚園が少ない(東部は皆無)なのが原因です。

小規模保育等へ入所するのも容易ではない

幼稚園が豊富に存在している阿倍野区であれば、小規模保育等の充実によって待機児童問題の解消を図るのも一手段です。区内では6カ所の地域型保育事業が行われています。第1希望としている児童は決して多くありません。

しかし、H27一斉入所で入所している児童の点数は高く、周辺保育所と大きな違いはありません。特に認可保育所が直接運営していたり、古くから認可外保育施設として運営されていたものを小規模保育へ転換した施設は、保育所並に入所が難しいです。

松虫通以北の既設保育所(特に1-3歳児)は入所困難、他は概ね前年通り

松虫通以北の既設保育所(特に1-3歳児)は何らかの加算点がない限りは入所困難です。ここは市内で保育所整備が最も遅れている地域の一つです。

ただ、都心にある他区と異なり、豊富な幼稚園(こども園)や東住吉区・西成区・生野区の保育所等が現実的な選択肢として取り得るのが大きな違いです。保育所の新設が多くないのは、そうした事情があるからかもしれません。

昨年の記事

【H27保育所一斉入所申込分析】(2)阿倍野区

 

次回の予定

次回は城東区を予定しています。その後は旭区・西淀川区・住之江区・鶴見区・生野区・住吉区を予定しています。

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