あくまで現時点で報道されている内容に基づきます。各紙とも「政府は○○する方針を固めた」と報じており、恐らくは関係者からのリークでしょう。低所得・ひとり親を除く子育て世帯に厳しい内容です。あまり考えがまとめっていませんが、思うところも書いてみました。

ひとり親世帯の児童扶養手当、2人目以降は倍増

政府は、ひとり親世帯に支給する児童扶養手当について、2人目以降の子供がいる場合の支給額を倍増する方針を固めた。

経済的に厳しいひとり親世帯を支援するのが目的で、2016年度予算案に盛り込む見通しだ。

児童扶養手当は現在、第1子に月額最大4万2000円が支給され、2人目に5000円、3人目以降は3000円が加算されている。政府の最終調整案によると、1人目は据え置き、2人目を1万円、3人目以降を6000円に増やす。

児童扶養手当を受け取っているのは約106万世帯(15年3月末現在)で、倍増の対象となる第2子は約33万世帯、第3子以降は約10万世帯。国が3分の1、都道府県などが3分の2を負担しており、倍増した場合、年間で国費約83億円、地方負担約167億円がそれぞれ必要になると見込まれている。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/20151216-OYT1T50067.html

ひとり親世帯が経済的に困窮している割合が多いのは報じられているとおりです。たとえば平成23年度全国母子世帯等調査結果報告によると、平成22年の母子世帯の年間平均世帯収入は291万円(うち、母自身の収入は223万円)に留まっています(父子世帯は455万円)。

ひとり親世帯への支援策の充実は望ましい一方、両親がそろっている世帯であっても経済的に困窮している世帯は少なくありません。「ひとり親」という観点ではなく、親の人数に関わらず「経済的な困窮度」によって支給内容を定めるのが望ましいのではないかと、感じました。

児童手当3000円追加支給、15年度で終了

自民、公明両党は16日、児童手当を受ける世帯を対象に、子ども1人あたり3000円を追加支給する事業を2016年度は継続しない方針を決めた。17年4月の消費増税時に導入する軽減税率の実施のため、6千億円ほどの財源確保が今後、求められるなか、財政再建に配慮して打ち切ることにした。

同事業は「子育て世帯臨時特例給付金」と呼ばれ、15年度予算に約600億円を計上している。14年4月の8%への消費増税の影響を和らげるため、子ども1人あたり、1万円を配る臨時給付金を14年度に創設したことがきっかけとなっている。

15年度も事業の継続を求める声が与党内で強まっていたが、財源のメドが立たないことから3000円に縮小していた。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS16H1K_W5A211C1EAF000/

もともと期待していませんでしたが、1万円→3000円→終了という流れを見て「やっぱりなあ」と感じてしまいました。解せないのは、所得が低い年金受給者への臨時給付金が支給される事です。

低所得年金受給者1250万人へ3万円臨時給付金

政府は、景気対策の一環として所得が低い年金受給者への臨時給付金(1人あたり3万円)の具体的な対象者を決めた。

原則として、65歳以上の年金受給者で、住民税が非課税の世帯となる。単身なら、年金などの収入が年155万円程度までの人が該当する。生活保護受給世帯は除外される。

このほか、65歳未満でも障害基礎年金か遺族基礎年金を受給していれば同様の年収条件で支給される。

政府は2015年度補正予算案に約3400億円、16年度予算案に約500億円を計上する方針だ。65歳以上は16年4月以降、65歳未満は同10月以降に支給する。対象者は計約1250万人。65歳以上が約1100万人、65歳未満でも約150万人が対象になる見込みだ。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/20151214-OYT1T50012.html

子育て世帯には支給しないけど、年金受給者には支給する方針だそうです。「老人優遇・子育て世帯軽視」としか言い様がありません。景気対策の一環であれば、あればあるだけ使ってしまう(いくらあっても足りない)子育て世帯への支給を優先すべきでしょう。

そもそも子供の数が減少している最大の原因は「親世帯の経済的不安・子育て費用が高すぎる」という点です。端的に言うと、子育ては割に合いません。3000円の支給額は端金でしたが、これすらも廃止する傍らで老人に3万円を支給するとは不思議です。

幼児教育の無償拡大へ 低所得世帯、3人目以降すべてに

政府は、子どもが3人以上いる低所得の家庭への支援策として、3人目以降の子どもの幼稚園や保育園の保育料を、来年度からすべて無償とする方針を固めた。無償化の対象を広げて子育て世代の負担を軽くし、少子化を食い止める狙いがある。

いまの制度では、子どもを保育園に通わせている場合、1人目の子どもが小学校入学前なら、2人目の保育料が通常の半額に、3人目以降は無料になる。1人目が小学校に入ると、2人目は半額負担から全額負担、3人目も無料から半額負担と負担増になる仕組みだが、来年度からは年収330万円以下の世帯は、第1子の学年に関係なく、第2子の保育料はすべて半額に、3人目以降は無料にする方針だ。

幼稚園に通わせる世帯の場合も、いまの制度では1人目が小学3年生以下なら、2人目の保育料は半額に、3人目以降は無料になるが、こちらも年収360万円以下の世帯に限り、第1子の学年を問わずに負担軽減策の対象とする。

http://digital.asahi.com/articles/ASHDH4GTGHDHULFA01D.html

以前に伝えたことがありました。低所得世帯での全ての第3子以降の幼稚園・保育園保育料が無償とされるそうです。低所得世帯への経済的援助は望ましい反面、果たして適切な効果を上げるのでしょうか。

特に都市部の場合、年収330万円以下で子育てを行うのは大変です。生活保護を除く様々な公的援助をフルに受けてようやく、という水準でしょう。ここで第3子以降を無償としても「既に1-2人でせいいっぱい」という世帯が多くを占めるでしょう。

一方、第3子以降を出産した場合、その子は幼児教育から大学教育に至るまで、平均的な所得の世帯に産まれた子供と比べて遙かに多くの援助を受ける事になります。財源問題が叫ばれる中、ただでさえ財政に掛かる負担が大きい低所得世帯に対し、「第3子以降の幼児教育」を無償とするのは費用対効果の面から疑問です。

第3子以降の幼児教育を無償化するのであれば、いわゆる平均的な所得がある世帯まで対象を広げるべきでしょう。公的な援助が乏しく、経済的な支援策が最も効果を上げる所得層です。「もう少し余裕があれば、もう1人欲しい」という話もよく聞きます。

既に導入しているのが京都府です(詳細はこちら)。条件付きながら、平成27年4月から第3子以降の保育料(但し第1子が18歳未満、推定年収が幼稚園で約680万円/保育所で約640万円まで)を無償としています。

「無償」には抵抗感があります

なお、何でも「無償」というのは抵抗感があります。無償だと何も考えずに「勿体ないから使っておこうか」となりがちです。せめて0.5割~1割程度の自己負担(上限付き)を残し、利用するか否かを考える余地を設けるべきでしょう。

例えば乳幼児医療がほぼ無料なのは嬉しいです。が、だったら毎回1割の自己負担(現在は月2回まで上限500円とする1割負担)でも構わないので、代わりにインフルエンザワクチン等の予防接種に助成してもらいたいです。

第3子以降を無償とした場合、特に都市部では今まで以上に保育所へ入所しにくくなるでしょう。入所できた人と出来なかった人の不公平感がますます広がります。

少子化の原因は「親世代の経済的不安・機会費用の喪失・子育て費用の高騰」

端的に言うと「若年層・子育て世帯にお金がない」からです。「お金の若者離れ」とも言えるでしょう。

出産・子育てを諦めれば、子育てに掛かる費用は不要です。子供の相手をするのに時間を取られないので、日中・深夜を問わずに働いて収入を得られます。

あまり指摘されない点ですが、子育てにおける「機会費用の喪失」が馬鹿になりません。特に相当の学歴や専門性を身につけた女性の場合、子育てによる収入減は多額になります。それ以上に昇進の遅れ・仕事の幅の制約は辛いです。小さな子供がいたら、東京日帰り出張だけでも一苦労です。企業の人事政策も絡むので、解決するのは困難かもしれません。

いろいろと難しい時代です。