平成28年3月12日(土)

平成28年3月11日
式 辞

今から丁度5年前の3月11日、48期生は小学校4年生でした。当時の6年生は、卒業式の練習中でした。午後2時46分、私は小学校の校長室で長い長い、ゆれを感じました。初めは目まいかと思いましたがただならぬものを感じました。
すぐに職員室のテレビをつけると、ヘリコプターからの映像が、ライブ中継されていてまるで映画の一場面のように見えました。広い田園地帯にビニールハウスの温室が見え、どす黒く巨大な津波が田畑と温室を広範囲に呑み込んでいく光景でした。その後は繰り返し報道されている通りです。
東日本大震災は、千年に一度という津波がこれまでのいかなる想定を超えた巨大さで襲い、福島第一発電所の一号機から四号機までのすべての電源が停止し、人が住めなくなるという深刻な被害が起きたことです。
私は小学校一年生にどう説明したらいいか悩みました。発電原料のウランが、分裂して様々な放射性物質が生まれます。そこで目に見えない放射線を光にたとえ、放射性物質を、光を出す小さなほこりのようなもの、放射線をその物質の出す光、放射能をその光を出す能力というふうに説明しました。詳しく説明しませんが、ベクレルとか、マイクロシーベルトという単位を表す言葉も一般化しました。
冥福ということばも、亡くなったあとのしあわせをお祈りして、と言いましたが、皆さんも当時の校長先生や担任の先生が、工夫してわかりやすく、説明して下さったことは覚えていることと思います。
本日も、式終了後、運動場の国旗は半分降ろした半旗に、玄関には、国旗に喪章をつけて、弔意を表しお亡くなりになった方々のご冥福をお祈りします。
また本日、大変ご多用な中、第48期生のため、早朝より、ご来臨を賜りましたご来賓の皆様方、このおめでたい卒業式に錦上華を添えて戴きまして、高いところからではございますが、深く感謝申し上げます。「誠にありがとうございます。」
さて、卒業生の48期生の皆さん、本日は本当におめでとうございます。諸君は、数々の栄光を残してくれました。陸上競技100米の世界記録保持者で各種の大会で金メダルを確得しているジャマイカのウサイン・ボルト選手は「私はレジェンド・伝説になる」というのが、口癖だそうですが、「48期生のレジェンド」は、第一に、茨田北中学校の50年近くの歴史で、初めて、共通テストに於いて、大阪府の平均に並び、大阪市129校の中で、三分の一近くに到達したことです。
もとより、全国学力・学習状況調査テストの目的は、他校と比較することではなく、自分の足りないところを発見するものです。しかし、公立入試の内申となり、学校選択制で、鶴見区のパンフレットに掲載されるのですから、どの生徒も真剣に取り組みました。大阪の中学校の底力が発揮され、全国平均に大きく近づきました。茨田北中学校の48期生の皆さんは、前年の府チャレンジテストで、府と市の平均を下回っていたのですが、約百日後のテストで堂々、市の平均を超え府の平均に達しました。
第二に、日々の生活態度で、時間を守る、規則正しい行動をする、先生の話を素直に聴くという、この三つのことを、やり通してくれました。
月曜日の全校集会では、一年間五分前集合を努力して続けることができました。私の話も真剣に聴いてくれました。これは、あたり前のように見えて、全員が実践することは本当にむずかしいことです。私立高校の結果に続いて、公立高校も、きっと良い結果になると思います。
第三に、どの行事もすばらしい結果を出してくれました。特に雨天の中で決行した体育大会は、多くの体育委員の諸君が「修学旅行よりも感動した」と、その達成感を感想文に綴ってくれました。通常の卒業式のお話ならば、各行事のことについてお話するのですが、時間がありません。
とにかく、何をしても、すばらしい学年でした、49期生、50期生そして替わりに入学してくる51期生も、48期生に負けないよう、先生方は真剣に厳しく、あたたかい指導を今後も続けて行きます。そして、次の話を結びにします。
わが国日本は、本当の世界地図で見ると、東の果てにあり、太陽の昇る国、日の本の国だということがよく分かります。小さな島国で、資源もなく、地震や台風などの災害が多く、大陸から見ると、暗くて深く、恐ろしい海を渡らなければ行けない化外(けがい)ばけのそとと書きます。化外の地でした。大陸から日本に渡ることは、今の感覚で言うと、火星に移住し、そのまま帰れそうで生涯帰れないところに行くことに匹敵します。
それでも、今は、世界でも最も、歴史が長く、魅力的な、輝く国となっています。アメリカ合衆国が日本に原子爆弾を落とし、日本人を根絶やしにしようとした時、このすばらしい国を地上から消してはいけないと反対した、日本のことを本当に良く知っているアメリカ合衆国の人がいました。
今、爆買いと言われる国の人々を始め、アジアやヨーロッパの人々が日本に押し寄せています。何が魅力かというと、日本には大陸すなわちグローバルスタンダードといわれるルールではなく、伝統的なすばらしい道徳すなわち「心遣い・気遣い」があるからです。大陸では、サバイバル・生き残ることが、全てに優先しました。そのために、殺すこと、盗むこと、うそをつくこと、裏切ること、あらゆる悪徳が、生存のために必要だったのです。旧約聖書の中の「十戒」でモーセが「~するな、~するな」と言っていることを、あえてしないと、正直な人は生存競争に負け滅びてしまったのです。
日本だけが、唯一、約束を守る、ごまかさない。財布がそのまま返ってくる。安いのにサービスが良い。商品が信用できるということで、外国の人がこの辺境の国に押し寄せているのです。しかし、わが日本にとって不安が一つあります。それは少子化と高齢化です。先に原子爆弾で日本人を根絶やしにすることを言いましたが、別の形で根絶やしにする方法があるのです。
それは、こどもを生み、育てることを厭う考え方を日本人の心の奥底に植えつけることです。昭和二十年代中頃に始ったベビーブームの終わりが、少子化の始まりです。そこから、どんどん生まれるこどもの数が減り続け、第二次ベビーブームつまり今の四十才前後が少し増えただけで、その後は減る一方です。大阪府に於いては、一学年の人数が、最大十四万五千人が、今では七万人前後になってしまいました。半分以下です。中学生の親の世代は、こどもの数の倍以上という訳です。介護問題や将来の年金のうんぬんされているのは当然のことです。
解決の方法は、これ以上、こどもの数を減らさないことです。また十八歳から六十五歳までの生産年齢人口も減る一方なので、女の子の大半は、夫や家族の協力のもと、子育をしながらキャリアも積まなくてはなりません。きびしい子育てをしながらです。保育所もまだ足りません。そのまた解決方法がロボット産業です。人間型ロボットと大型の人が乗り込む形のロボットです。
一人ぐらしのお年よりの話し相手になったり、異常を知らせたりするロボットです。AIすなわち人工知能と組み合わせ、関西の電気産業、医療産業、高度な中小企業の加工技術を、合わせると、車が大量に売れているのと同様、ペット型ロボットや、母親の代わりにこどもを教え育てるロボット、車いすを押すロボットなどいろいろな形が考えられます。
人々は、車を購入するようにローンを組んで高額のAIの組み込まれたロボットを買うでしょう。このことを、マンガ家の手塚治虫先生が予見して、すでにマンガにしています。ようやく鉄腕アトム、ガンダムの世界に、現実が追いつこうとしているのです。
卒業する48期生のみなさん、何らかの形で、みなさんも、関西の発展のために、この、すそ野の広いロボット産業にかかわることでしょう。産業が発展し、世界中に関西で作られた、すぐれた性能のロボットが、売れ続けると、大阪はさらに発展するでしょう。
大阪モノレールが堺市まで延長され、茨田大宮交差点に、門真南・茨田駅の南口が作られ、この茨田北地区、古宮村は、交通至便の場所になるでしょう。大阪メトロとなった地下鉄が、大阪モノレールと合併し、同一会社となると、鶴見緑地線が、四條畷市役所前から生駒山の東側、学研都市まで延長されることもあるでしょう。やがて、リニアモーター新幹線の、京都と奈良の間に作られるの駅まで延長も考えられます。そこには、北陸新幹線が小浜から京都駅まで延長され、深い地下で今のJR京都駅と直交し、南へ伸び、JR奈良駅まで来るでしょう。このように、色々なことが、産業が発展することによって可能になります。
48期生の皆さんが、大阪の発展にかかわり、日本の課題解決のため活躍されることを期待しています。皆さんの前途に幸あらんことを祈念して式辞といたします。

平成二十八年三月十一日
大阪市立茨田北中学校長  寺井 壽男

頭が痛くなる内容です。こうした講話を平気で行う教員が学校長に就き、再任用される大阪市教育委員会という組織が恐ろしくなります。

朝日新聞によると、同校長は「生徒や保護者から直接おかしいという声は届いていない」と述べているそうです。「裸の王様」という言葉が相応しいです。