万一の為のヘルメットを!

子育て中の家庭にとって、小回りが効く自転車は便利な乗り物です。日常的に利用している方は少なくないでしょう。

不幸な結果となってしまった理由の一つに、乳児がヘルメットをしていなかった点があります。報道等では明確に表現されていませんが、ヘルメットを着用していた旨の報道は全くありません。

子供を自転車に乗せる時にはヘルメットを着用させる努力義務が規定されています。

(児童又は幼児を保護する責任のある者の遵守事項)
第六十三条の十一  児童又は幼児を保護する責任のある者は、児童又は幼児を自転車に乗車させるときは、当該児童又は幼児に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。

道路交通法

法律上は努力義務とされていますが、保育園への登園等で見かける子供の大半はヘルメットを被っています。受け身をとりやすい大人と異なり、子供の運動能力は 未発達です。ヘルメットの有無で頭部への衝撃は大きく変わります。努力義務であっても、子供の安全の為に着用は必須でしょう。

ヘルメットを嫌がる子供は少なくありません。しかし、好き嫌いの問題ではありません。本事故でも乳児がヘルメットを被っていたら死亡という結果を免れたかもしれません。

乳児でもかぶれる小さなヘルメットも発売されています。

両製品とも頭部46cmから対応しています。1歳前後の乳児でも問題なく着用できるでしょう。

法令上、幼児を自転車に乗せても許容される場合

自転車の2人乗りは原則として禁じられています。では、どういった場合であれば幼児との2人乗りが法令上許容されているのでしょうか。

東京都道路交通規則で自転車に幼児を乗せても許容される場合が記されています。あくまで東京都の条例なので、別の道府県では異なる規則となっている場合もあります。ここでいう幼児とは6歳未満、つまり5歳以下であるのに注意して下さい。年長児の半数は幼児に該当しません。

(軽車両の乗車又は積載の制限)

ア 二輪又は三輪の自転車には、運転者以外の者を乗車させないこと。ただし、次のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
(ア) 16歳以上の運転者が幼児用座席に幼児(6歳未満の者をいう。以下同じ。)1人を乗車させるとき。
(イ) 16歳以上の運転者が幼児2人同乗用自転車(運転者のための乗車装置及び2の幼児用座席を設けるために必要な特別の構造又は装置を有する自転車をいう。)の幼児用座席に幼児2人を乗車させるとき。
(ウ) (略)
(エ) 三輪の自転車(2以上の幼児用座席を設けているものを除く。)に、その乗車装置に応じた人員までを乗車させるとき。
イ (略)
ウ 16歳以上の運転者が幼児1人を子守バンド等で確実に背負つている場合の当該幼児は、ア((イ)及び(ウ)に該当する場合を除く。)及びイの規定の適用については、当該16歳以上の運転者の一部とみなす。

東京都道路交通規則第10条第1項

幼児用座席を使えば幼児1人、特別な構造・装置を有する自転車(いわゆる3人乗り適合自転車)なら幼児2人、三輪自転車は乗車人員までなら同乗できます。また、子守バンド等(抱っこ紐など)で確実に背負っている幼児は運転者の一部と見なせます。本件は上記ウに該当します。

余談となりますが、規則から幼児3人+運転者1人の4人乗りが許容される場合もあると読み取れます。3人乗り適合自転車を利用し、幼児1人を背負う場合です。

背負って自転車に乗ると注意が分散する

気になるのは、規則が「子守バンド等で確実に背負っている場合」としている点です。「背負っている場合」に重点を置くと、あくまで「おんぶのみ」に限定されてしまいます。

しかし、街中で乳児と密着して移動している方の多くは背負っていません。殆どは抱っこ紐を利用して前に抱っこしています。10人いたら9人以上は抱っこという印象です。

安定感があって使いやすい抱っこ紐が普及しているのが一つの理由でしょう。具体的にはエルゴです。

乳児が泣いたり動いたりした際、背負っていると注意が後方へ向いてしまいます。前方への注意がおろそかになってしまいます。背中から落ちてしまうかもしれない心配もあるでしょう。しかし、こうした商品を利用して抱っこしていると、常に注意は前方へ固定されています。

こうした現状を鑑みると、上記規則は「子守バンド等で確実に」という部分を重視し、「背負っている場合」は例示と解釈するのが時代に適合しているかもしれません。

あくまで私的な感想ですが、背負って乳児が視界から消えてしまうのは気になってしまいます。更にその状態で自転車に乗るのは怖くてできません。

注意は分散する

ただでさえ自転車を運転する時は注意を払います。子供と一緒なら、より一層注意深い行動が必要でしょう。1人なら問題なく行えても、子供はいつ何をするか分かりません。道路等を横断する時は交通規則を守り、横断歩道等を移動するのが鉄則です。

本件は不幸な事故でした。しかし、注意深い行動・適切な装具を身につけていれば防げた、もしくは最小限の被害で収まった事故です。同じ様な事故が繰り返されない為にも、子連れで移動する時(特に自転車)はお気をつけ下さい。

亡くなった男児の冥福を祈ります。