大阪府での保育士配置基準の緩和、非正規職員の給与引き上げと引き替えに認める方向で検討中だそうです。

人手不足で規制緩和 保育士比率下げ・ガイド通訳資格不要

政府は保育や観光の分野で深刻な人手不足の解消に向け、実態に合わなくなった規制の緩和に動く。国家戦略特区の公立保育所で正式な資格を持たない職員を雇いやすくするとともに、非正規で働く保育士の給料を引き上げる。観光では、国家資格がなくても有償で通訳ガイドをできるようにする。人手不足が日本経済の成長を妨げないように、人材確保に本腰を入れる。

政府が19日に開く国家戦略特区諮問会議(議長・安倍晋三首相)や規制改革会議(議長・岡素之住友商事相談役)で方針を示す。関連法の改正案を早ければ7月の参院選後の臨時国会に出す。

保育分野では大阪府が認可保育所の設置要件の緩和を求めている。府によると、保育所の職員の3分の2以上は有資格の保育士にしなければならない規定がある。府はこの比率を引き下げれば、公的な資格はなくても経験豊富な保育ママや子育て支援員も活用できるようになるとみている。

政府は要望を認める代わりに、公立保育所で働く正規職員と非正規職員の待遇格差をできるだけ減らすように府側に促す方向だ。大阪市は非正規保育士の処遇改善を進めてきたが、年齢など条件をそろえると年収ベースで正規保育士の5割にとどまるとの試算もある。

政府は非正規職員の賃金をめぐり、職種に限らず「正規職員の7~8割に早期に引き上げる」との目標を掲げる方針だ。特区内でもこの水準が目安になるとみられる。

保育士は都市部を中心に人手不足が深刻だ。東京都内では3月の保育士の有効求人倍率が5.45倍だった。大阪府の2014年1月時点の調査では8割の保育園が「5年前より保育士の確保が難しくなった」と答えた。待遇改善で非正規を含め人材を雇いやすくする。
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日経新聞電子版

非保育士で保育士を代替できるのか

認可保育所の設置要件(保育士配置基準の緩和)とは、保育士の一部を小学校教諭等のみならず、保育ママや子育て支援員に代替できるとする内容です。保育士不足が緩和される一方、無資格者による保育によって保育の質が低下し、事故等に繋がる恐れがあります。

保育所にお世話になっている保護者目線からすると、非保育士による保育には漠然とした不安は残ります。専門学校や短大等の保育課程でしっかり学んだ、もしくは試験に合格して資格を得た保育士に対する信頼感が根底にあります。

感情的な部分もあります。決して安くはない保育料を支払っているのに、どうして無資格者に保育を委ねなければならないのでしょうか。合理性に乏しい考えとは分かっていますが、そう感じてしまう蟠りはあります。

保育士が不足している主な要因は待遇の低さ・働きにくさであるのは調査等から明らかです。無資格者の活用によって補うのではなく、待遇の向上(幅には議論がありますが、男尊女卑?)・働きやすさの改善等を図り、有資格者が職場復帰できる環境を整備するのが重要でしょう。

大阪市の非正規保育士の年収は、正規の5割に留まる

記事では大阪市の正規・非正規保育士の待遇差が指摘されています。これは保育士不足の理由の一つです。

「5割に留まる試算」は、恐らく【ニュース】任期付き保育士らの昇給を 橋下大阪市長「正規と非正規で差をつけるのはおかしい」からの引用でしょう。比較表を再掲します。

運営者雇用形態や役職平均年齢平均給与月額(賞与除く)
大阪市(公立)正規雇用45.2360,865円
任期付?188,600円
私立施設長50.3431,366円
主任保育士43.8323,917円
保育士30.8219,837円

保育士有資格者の殆どは女性です。子育てや家事等で忙しい方が少なくないでしょう。思い切って非正規保育士の待遇を正規並みに向上させ、正規保育士の負担軽減・間接的な待遇向上を図るという考えも検討に値するでしょう。非保育士を活用する前にすべき事・できる事が山積みです。

待遇の低さから敬遠される大阪市、縮小運営する市立保育所

なお、仮にこうした制度を導入するのであれば、まずは公立保育所から導入すべきでしょう。一方、大阪市では待遇難から非正規保育士の採用が停滞しています。

例えば4月13日に発表された任期付職員(保育士)の合格者受験番号は「1番・2番・3番・4番」となっています。受験者全員が合格したとすら推測できてしまいます。受験者が少なく、採用に難航しているとうかがえます。

これにより、公立保育所の入所枠を引き下げる事態に至っています。市会での答弁によると、大阪市立保育所の定員は3年で400人減少しています。

○飯田保育所運営課長
平成25年度から3年間、正規保育士の採用を凍結している
欠員補充は任期付き・非常勤で補充している
予定数の確保が確保できていない
平成26年度には3歳児を中心に134人の運営定員を引き下げている
平成27年度には0-2歳児で215人の定員引き下げを行った
平成28年度は正規保育士を若干名採用するが、0歳児を中心に45人の定員を引き下げざるを得ない
厳しい状況となっている

待遇の悪さから人が集まっていない典型例です。大阪市立保育所は好立地が多く、特に広い園庭を有する施設が多いのが特徴的です。にもかかわらず、保育士不足によって保育所の能力を活用しきれていないのは非常に残念です。

今からでも待遇を引き上げて保育士を採用できれば、年度途中入所という形で園児を募集できるでしょう。保育所の新設より優先度が高いです。