再び痛ましい事故が発生してしまいました。

二日午後二時四十分ごろ、東京都板橋区前野町四、認可保育所「ほっぺるランド志村坂上」から「乳児の顔色が悪く、意識がないようだ」と一一九番があった。男児(1つ)が心肺停止状態で、病院に運ばれたが死亡した。

警視庁志村署などによると、当時は昼寝の時間で、職員が気づいた時、男児はうつぶせだった。目立った外傷はなかった。

同署が職員から詳しい状況を聴くとともに、死因などを調べる。都と区は三日にも保育所に立ち入り、職員の配置などを調べる方針。

区によると、男児はゼロ歳児クラスで、昼寝時は通常、職員が五分ごとに呼吸や寝る姿勢をチェックする。同保育所は四月に開園し、四月現在でゼロ~五歳の六十九人が通い、ゼロ歳児クラスは六人。

運営するテノ・コーポレーション(福岡市)は「職員に聞き取りができておらず、詳しいことは分からない」と話している。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201609/CK2016090302000121.html

 

2日午後3時40分ごろ、東京都板橋区前野町4丁目の認可保育園「ほっぺるランド志村坂上」から救急搬送された都内の男児(1)が死亡したと、救急隊から警視庁志村署に通報があった。男児に目立った外傷はなく、署が同園の職員から詳しい経緯を聴いている。

署や区などによると、うつぶせで寝ていた男児の顔色が悪いことに職員が気づき、午後2時40分ごろ119番通報した。搬送時は心肺停止の状態で、約50分後に死亡が確認された。

同園は今年4月に開設された。福岡市の「テノ.コーポレーション」が運営しており、系列の保育園が区内に計5カ所ある。区の担当者は「同園での苦情やトラブルは把握していない」と話した。同社はホームページ上に「現時点では詳細は不明です。詳細が分かり次第、ご報告します」とするコメントを掲載した。

同園のホームページによると、同園には園長1人、保育士11人以上がおり、定員は100人。

http://www.asahi.com/articles/ASJ927QZKJ92UTIL06M.html

園児が死亡したのは「ほっぺるランド志村坂上」です。平成28年4月に開所したばかりの新しい保育所です。園長は昨年まで文京区内の保育所に勤務していたそうです。開園に伴い、転職・園長に就任したのでしょう。

園長・管理職・保育士間の連絡・連携・指示がどこまで徹底されていたかは、これからの調査等で明らかになるでしょう。新設園特有の問題が関係しているかもしれません。

運営法人は株式会社テノ.コーポレーションです。本社は福岡市にあります。大阪市内ではほっぺるランド国津橋(西区)ほっぺるランド鶴見緑地(鶴見区)を運営しています。

事故の詳細は明らかになっていません。運営会社のプレスリリースは死亡を伝える記述のみが掲載されています。

9/7追記:運営会社より詳細なリリースあり

運営会社から事故に関する報告が掲載されています。

平成28年9月2日(金)、弊社が運営する認可保育園 「ほっぺるランド志村坂上」(東京都板橋区前野町4-1-17)の園児(0歳児クラスの1歳児)に急変が生じ救急搬送され、搬送先病院で亡くなりました。
お亡くなりになられたことについて、心よりご冥福をお祈り申し上げます。

この件につきまして、現時点で弊社が認識している内容をご報告いたします。

1.事故(9月2日)の経緯概要
午睡中の児童の安全を確認して寝かしつけておりましたところ、児童に急変があり、呼吸をしていないことに保育士が気づきました。
2時37分頃、園長が119番通報等を行い、2時46分頃には救急車が到着、日大板橋病院に搬送されました。搬送先の病院で蘇生措置がとられましたが、死亡が確認されました。その後の司法解剖の結果でも死因は不明とのことです。

2.当日の保育の状況
(1)法令上、定められた職員を配置
当日は69名の児童を保育しておりましたが、11名以上の保育士が保育にあたり、法令上、定められた職員配置を行っておりました。
(2)睡眠時の呼吸確認及びSIDSチェック表の記載
呼吸をしているかどうか、うつ伏せ寝になっていないかどうかのSIDS(乳幼児突然死症候群)チェックを0歳児については5分に1度、1・2歳児は10分に1度行い、確認したことを示すチェック表も記載しておりました。また、うつ伏せ寝の防止も徹底しておりました。
(3)0歳児については全園児が見える状況で保育
0歳児の全園児が確認できる位置取りで保育士が保育に従事しておりました。

3.今後の対応策
弊社では、今後については0歳児及び1歳児の睡眠時の確認を更に徹底してまいります。
具体的には、看護師が配置されている保育園では午睡中の看護師巡回を強化すること、寝つきの良くない児童が多い場合には園長や看護師、2歳児以上の担当保育士等が補助するようにいたします。
保護者の方に安心してお預けいただけるよう、全社一丸となって努めてまいります。

http://www.hoppel-land.com/news/19.html

事故等が起こしてしまった運営会社・保育所が自らリリースを掲載するのは、決して多くありません。客観的な目撃証言等を得るのが著しく困難な保育事故では、「当事者による徹底した情報公開」が求められます。

リリースを読む限り、当日の保育は問題なく行われていたという印象を受けます。判明していない・把握されていない情報等が、これから明らかになっていくのではないでしょうか。

危険な「うつぶせ寝」

保育所等での死亡事故は少なくありません。その殆どは「うつぶせ寝による死亡」です。当ウェブサイトで「うつぶせ」と検索すると、数多くの事件等が抽出されます。

・うつぶせで死亡 男児の両親と認可外保育施設・高槻市が和解
・改善勧告に従わない認可外保育施設「あおぞら保育園」(香川県善通寺市)
・認可外保育「たんぽぽの国」(大阪市淀川区東三国)で1歳男児が死亡
・ラッコランド京橋園うつ伏せ死、大阪高裁は運営会社へ賠償命じる

ほっぺるランド志村坂上で当初からうつぶせで寝かせていたのか、それとも寝返り等をしてうつぶせになってしまったのかは分かりません。うつぶせ寝状態に早く気づいていれば・・・・と言うのが率直な感想です。

認可保育所でのうつぶせ寝死亡事故は稀

先に掲載したニュースを見て気づいた方もいるでしょう。うつぶせ寝等による死亡事故の多くは認可外保育施設で発生しています。内閣府の資料によると、平成23年度から平成27年度までのうつぶせ寝による死亡事故の報告件数は、認可保育所が5名・認可外保育施設は28名となっています。

本件の様な「認可保育所でのうつぶせ寝死亡事故」は、年間1名程度という極めて稀なケースと言えます。その理由としては、保育士配置基準の遵守の徹底・運営会社による指導研修体制・自治体による監督等が考えられます。

また、保育所で死亡事故が発生した場合、即座に自治体や警察等による調査・捜査が行われる事が多いのも特徴的です。本件では死亡当日に警察による捜査が、翌日には自治体による立入調査が行われています。

一方、認可外保育施設での事故の場合、捜査・調査等が即座に行われないケースも少なくありません。事実解明が遅れた結果、法廷の場で真実を明らかにしようとする傾向も強いです。

また、補償という面でも大きな差があります。認可保育所等は日本スポーツ振興センターによる災害共済給付制度に加入しています。施設の管理下で死亡等が発生した場合、死亡見舞金(上限2800万円)が支払われるとされています。これ以外にも、運営法人等による補償等も行われるでしょう。

しかし、認可外保育施設は災害共済給付制度の対象となっていません(加入を求める署名運動も行われています)。その為、運営法人による賠償・法人が加入している保険からの給付等が頼りとなります。が、過失責任の有無・資力や保険加入の有無によって支払いに差が生じてしまうでしょう。

今後も自治体等による調査が続いていくでしょう。しかし、亡くなった子どもは帰ってきません。こうした事態が繰り返されない為、徹底した事実の究明・保育体制のあり方の見直し・他保育所等へのフィードバックが求められます。

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(2019/8/30追記)

検証報告書が公表されています。

認可保育施設における午睡中の死亡事例に関する検証報告書
http://www.city.itabashi.tokyo.jp/c_kurashi/091/attached/attach_91700_9.pdf