以前に運営法人で多額の不適切経理、品川区立保育所の委託解除へでお伝えした続報です。

多数の保育所を運営する社会福祉法人「夢工房」による不適切経理の内容を第三者委員会が調査した結果、少なくとも創業者・経営者一族によって約1億4,000万円が私的流用され、かつ約4,600万円が自治体から不正に受給していた事実が明らかになりました。

芦屋の保育園運営法人 資金1・4億円を不正流用

全国で保育園などを運営する社会福祉法人「夢工房」(兵庫県芦屋市)の男性理事長(57)らによる資金不正流用問題について、調査していた同法人の第三者委員会は19日、流用額は少なくとも約1億4千万円に上ると発表した。姫路市、東京都港区からの補助金などの不正受給は約4600万円。第三者委は理事長ら創業者一族が法人を私物化していたとして、法人からの排除を求めた。

第三者委の調査報告書によると、理事長の母と義母、長男、長女、母の家政婦は、法人本部や姫路保育園(姫路市)、同園分園(同)などで勤務したと装い、2010~15年度に給与計約5960万円を受けた。長女や長男が通う大学院、専門学校の学費など約420万円も払っていた。

私的使用も、保護者から集め理事長の個人口座に入金していた教材費200万円▽長女が使う高級車購入費約740万円▽長女の結婚時に購入した家具、家電代約210万円-など、計1330万円に上った。理事長が経費でアダルト商品を買ったケースもあった。

このほか、理事長個人の資金と装った法人の簿外債務約6300万円も判明。理事長が理事会の議事録を偽造して借り入れており、不正流用と認定した。

補助金については、常勤の園長を置いた際に支給される加算など、姫路市から13~15年度に約3700万円を不正に受けていた。

第三者委は、理事長に逆らえない体質や理事会の形骸化、利用者軽視の利益優先主義などを指摘。理事長、総括園長の解任や理事会の一新などを提言。法人は今後、理事長らの刑事告訴などを検討するという。

https://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201610/0009594731.shtml

不正に流出・受給した金額は合わせて約2億円弱となります。余りに酷い法人運営です。

内訳の一部は上記新聞記事に掲載されています。より赤裸々な実態が第三者委員会の報告書に記載されています。

Download (PDF, 3.46MB)

調査報告書(公表版)平成28年10月17日 社会福祉法人夢工房 第三者委員会(全77ページ)

創業者・経営者の黒石一族が社会福祉法人を私物化し、私腹を肥やす手法が丁寧に記載されています。また、職員に対するパワハラや悲惨な保育現場、そして理事長が第三者委員会の調査を執拗に妨害する様子も明確に記されています。

ぜひ全文を読んでもらいたいところですが、長い報告書なので内容を箇条書きでまとめました。なお、太字部分は第三者委員会によって不適正経理と認定された事実、「?」は情報提供があったものの裏付けが取れなかった話です。

A・黒石誠理事長(創業家・第4代理事長)の私的流用等

・直近の年収は約2,673万円(お手盛り?)
・家賃等30万円の借上社宅(神戸市中央区)に居住(本人負担)
・学研教室の受講料や講師委託料(約200万円)を私的に引き出した(別に約400-700万円も疑い有り)
・アダルト商品(約2万円)を社会福祉書籍に偽装し、法人経費で購入した
・保育園の事業資産に計上しているプラズマテレビ(約46万円)を自宅で利用していた?(検査後に保育園へ返却)
・Bと共にスペインでの学会(旅行代金約140万円)へ参加したが、保育関係者への訪問を装ってドバイにも滞在した(内ドバイ経費約60万円)
・法人契約したリゾート施設のカードをABIFの一家4人で占有し、使用している
・法人名義で購入したレクサスを占有している(私物化の疑い)
・レクサスで利用したETC料金等
・オーストラリアやバリ島研修に紛れてシンガポール観光を行った?
・自宅の修繕費(約91万円)を老人ホームの修繕工事費用に紛れ込ませた?修繕工事の実態がない
・ブルガリの時計修理代(約57,000円)を本部経費として支出した
・レクサスがあるにも関わらず、毎月4~5万円を交通系ICカードにチャージし、旅費交通費として計上している
・アメックスカードを所有
・法人への寄付金捻出の為、法人を通じて金融機関から約1億2,000万円を借り入れた(現残高は約6,270万円)
・同様の目的でBの実家から金銭を借り入れた?(Gへの給与支払いは見返り?)
・理事長一族の利益に供するタイミングで、赴任手当、専門資格取得費用負担、借上家賃負担、出向手当等が新設改変された
・理事長等の出退勤記録への押印を、暗黙の内に職員へ押しつけていた

凄まじいとしか言い様がありません。約3,000万円弱の年収は羨ましい限りです。理事長職としての勤務実態はありますが、世間相場から懸け離れた収入です。理事長は神戸市中央区で30万円の家賃を必要とするマンションに住んでいるそうです。場所は何となく想像できます。

また、理事長は様々な私的な支出を社会福祉法人へ負担させていました。嘲笑されるのは「アダルト商品」でしょう。笑い者にすらなりません。

少し気になったのは「海外研修」です。実はこうした研修を取り入れている保育所運営法人が徐々に増えている様に感じます。しかし、海外研修と保育技能の向上には強い関係がないのではないでしょうか。

実質的には福利厚生、特に行き先・宿泊するホテル・同行者を自由に選べる幹部職員のプライベートを充実させる目的が強い様に感じています。

B・黒石静香統括園長(Aの妻)の私的流用等

・直近の年収は約1,985万円(お手盛り?)
・家賃等38万3,000円の借上社宅(東京都港区)に居住(本人負担なし)
・アサヒヤやバレンザボー(いずれも高級婦人服店)等の領収書を関東5園で分割して経費処理した(少なくとも約123万円、他にも多数あり)
・法人名義で購入したレクサスを占有している(私物化の疑い)

統括園長の年収は約2,000万円です。夫婦合わせて約5,000万円です。美味しすぎる家業です。また、港区内の高級マンションを法人社宅として利用しています。本人負担額はありません。

理事長と同じく、統括園長も私的な支出を保育園に負担させていました。領収書を数分割し、各保育園の経費に紛れ込ませる手口です。小口にしたら露呈しにくいと考えたのかもしれませんが、各保育園の支出内容を突合したらすぐに分かります。

なお、法人名義で購入したレクサスは3台あります。理事長・統括園長・職員F(ABの娘)が占有し、自由に乗り回しています。

職員F(AB夫婦の娘・育休中)の私的流用等

・平成22年4月1日付で事務員として採用
・平成24年4月から平成26年3月まで武庫川女子大学大学院へ通学
・大学院浪人の2年間に架空給与(約500万円)を受け取る
・大学院在学中の2年間に架空給与(約590万円)を受け取る
・同じマンション内での転居に関わらず、赴任手当(約23万円)を受け取る
・育児休業給付金を満額受け取る為、赴任手当を調整した(もらえる物は全てもらう執念)
・大学院の学費(約106万円)を法人が負担した(Fの為に内規制定、適用例はFIのみ)
・法人名義で購入したレクサスRX450H(約740万円)を育休中も通じて占有した(発覚後に本部へ返却)
・予備校在学中も法人名義の車輌を与えられていた?
・新婚家具(約210万円)をunico神戸等で購入し、各施設の負担経費に紛れ込ませた(発覚後に本部へ返却・返金済)
・Fの母Bは「Fは関東への異動を予定している、異動後に家具等を保育園で利用する予定だった」と弁解
・家具の返却時にエアコン工事を行い、兵庫県の監査を妨害した
・婦人服(劇で使用と偽装?)、1人用ベビーカー、土産物、食材等の費用を各保育園の経費とした
・育休中の新幹線料金(約8万円)

社会福祉法人の私物化は理事長夫妻に留まりません。その娘Fも強い恩恵に預かっていました。氏名は把握していますが、法人役員ではない為、ここには記載しません。

Fは平成22年4月に事務員として採用されました。大学を卒業した直後でしょうか。事務員採用なので、保育士資格は有していなかったと考えられます。

入職直後から臨床心理士資格の取得を目指して大学院進学予備校で学び、武庫川女子大学大学院へ進学しました。臨床心理士資格を取得できたのか、とある臨床心理士会へ入会しています。

浪人時代・大学院生の4年間は法人本部等へ出勤した形跡はなく、給与だけを受け取っていました。更にFの学費は法人が負担していました。給料を受け取りながら大学院で学べるのは羨ましい限りです。他の職員の学費も法人が負担して勉強できれば良かったのですが、適用されたのはFとIだけでした。

その後Fは結婚・出産・育児休業を取得しています。新婚家具・ベビーカー代・家賃の一部・自家用車を法人に負担させていました。法人会計を一家の財布だと勘違いしていたのでしょうか。

なお、Fの夫も同法人に勤務しています。

I・黒石優人(AB夫婦の息子)に関する不適正経理

・平成25年4月に事務員として採用
・採用直後から2年間に渡り、コンピュータ総合学園HALへ通学した
・在学中の2年間に架空給与約670万円を受け取る
・平成27年4月以降は全国保育協議会・NPO法人へ出向中
・出向中にも関わらず固定給与部分を法人が負担している
・専門学校の学費(約292万円)を法人が負担した

大過なく過ごしていれば、第5代理事長となっていたのがIです。事務員として採用されたので、Fと同じく保育士資格は有していないのでしょう。

Iは採用直後から専門学校へ通っていました。Fと同じく架空給与を受け取り、学費を法人が負担していました。専門学校卒業後は他法人へ出向しており、夢工房での勤務経歴は全くありません。

ただ、理事長・統括園長・姉とは異なり、法人の負担で何らかの物品等を購入した報告はありませんでした。私的流用という側面は薄いと感じました。

その他の身内等の私的流用等

【G(統括園長の母・姫路保育園分園の事務員・事件発覚後に退職)】
・5年5ヶ月で架空給与(約1,250万円)を受け取る

【E・黒石芳子(理事長の母・評議員・姫路保育園長・事件発覚後に本部へ異動)】
・訪問介護サービスを受けているにも関わらず、3年3ヶ月で架空給与(約3,210万円、内約630万円は僅かに実態あり?)を受け取る
・出勤していないにも関わらず、出勤簿へ押印している
・園長としての職責は全く果たしておらず、主任等が代行していた
・ホームセキュリティ料金(月額約12,000円)を老人ホームの経費として負担させた

【K(Eの自宅家政婦)】
・特別養護老人ホーム事務員と仮装
・5年間で架空給与(約390万円)を受け取る(但し返還済)

【不明】
・食材、携帯電話2台分、紳士服、iTunesの利用料金が保育園の経費に計上されていた(使用者不明)

ABFI以外の一族も恩恵に預かっています。ABの母親であるEGは架空給与を受け取っていました。特にEが園長職であるのに殆ど出勤しておらず、主要業務は幹部職員が代行していました。所長設置加算等の受給要件が消失し、補助金の返還を迫られそうです。

社会福祉法人自体による不適正経理

・理事長からの寄付金捻出の為、約20年前に金融機関から約1億2,000万円を借り入れ、理事長・前理事長へ仮払いした
・現在の上記借入残高は約6,270万円である
・園長Eに勤務実態が無いにも関わらず、姫路市から所長設置加算等(約3,670万円)を不正受給した
・調理員の増配置を装い(実際には他園に配置)、東京都港区から補助金(約880万円)を不正受給した
・Bの婦人服代等を補助事業経費と装い、港区から補助金(約15万円)を不正受給した
・ひろまち保育園の開設経費に装い、約200万円を品川区へ水増し請求した
・リゾート施設への入会を機関決定したが(契約費用約3,640万円)、利用しているのは経営者一族のみ

創業者一族のみならず、社会福祉法人自体も補助金等を不正に受給しています。。

「寄付金捻出」というのは、「特別養護老人ホームの設置に伴う自己資金」です。法人役員からの寄付で調達する事と定められています。

理事長に寄付するだけの金銭がない事から、社会福祉法人が独自に借り入れを行い、理事長へ仮払いし、理事長が寄付したのだと推測されています。いわゆる「簿外債務」です。

補助金の不正受給も数多く指摘されています。今後、自治体は厳しく取り立てるでしょう。リゾート施設の入会費用の高さには驚きです。表面上は職員の福利厚生目的、実態は創業者一族の娯楽費用です。
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