気になる方針です。0-2歳児までを対象としている「小規模保育」、特区で年齢規制を撤廃する方針が固まったそうです。

待機児童対策 小規模保育3歳以上も 来年にも特区で

政府は12日、国家戦略特区諮問会議を開き、保育所の待機児童対策として、原則0~2歳児を対象としている小規模保育事業について、年齢制限を撤廃し、3歳以上でも受け入れられるよう国家戦略特区を設けることを決めた。次期通常国会で特区関連法を改正する方針で、来年中にも特区で規制が撤廃される見通し。

小規模保育は、定員6~19人の少人数の保育サービス。2015年4月に始まった「子ども・子育て支援新制度」で、0~2歳児を受け入れる「地域型保育」の柱とされる。今年4月1日時点で全国に約2500施設あり、利用している子どもは3万人以上。

園庭が不要で、ビル内や空き店舗などでも開設しやすいため、東京など都市部で広がっている。3歳で卒園となるが新たな受け入れ先を確保できない「3歳の壁」が指摘されており、事業者や東京都などから特区認定の要望が出されていた。

規制撤廃に対しては、小規模では、グループ遊びで社会性や協調性を育むことが難しいなどの発達段階に応じた保育の質に懸念があった。しかし、同規模の「企業主導型保育事業」では0~5歳までを一貫して受け入れていることから、保育の質には影響しないと判断した。

特区に認められた地域では、0~5歳までの一貫した保育や3~5歳児のみの保育など事業者の判断で柔軟な内容で保育事業を行えるようにする。一方、3歳以上の子どもたちが一緒に遊んだり、運動能力などが異なる低年齢児と活動の場所を分けたりするなど配慮を求めるという。

http://mainichi.jp/articles/20161213/k00/00m/040/085000c

12日に開催された同会議において配布された資料が公表されています。本件と関係するのは「資料3 国家戦略特区における追加の規制改革事項について(案)」です。

○小規模認可保育所における対象年齢の拡大
待機児童の解消を目的として、待機児童の多い特区において、児童の発達過程に応じた適切な異年齢保育等にも配慮した上で、現在、原則として0~2歳児を対象としている小規模認可保育所における対象年齢を拡大し、小規模保育事業者が自らの判断で、0歳から5歳までの一貫した保育や、3~5歳児のみの保育等を行うことが可能となるよう、次期通常国会に提出する特区法改正案の中に、特例措置等の必要な規定を盛り込む。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/dai26/shiryou3.pdf

小規模保育に代表される地域型保育事業は、2歳児までの保育を行っています。その為、3歳児からは別の保育所等へ転所しなければなりません。

しかし、都市部等の保育所では3歳児募集枠が少なく、転所しにくい状況となっています。大阪市も例外ではありません。

20161215

特に西区は4倍弱、中央区は3倍弱という極めて高い入所倍率となっています。2歳児クラスに在籍している児童の一部が幼稚園へ進学するので募集数が若干増えるとは言え、3歳児からの保育所転所・入所は厳しいです。

多くの0-2歳児と一緒に保育?同年齢がいない?

本施策は全ての小規模保育で導入されるものではありません。特区内にある各事業者の判断で導入される見通しです。

いわゆる「3歳の壁」は僅かに低くなるでしょう。しかし、これによるデメリットは無視できないほど大きく感じられます。

端的なのは「社会性が発達する3歳児以降を小規模保育で保育するのが適切なのか」という疑問です。

小規模保育は19人以下の0-2歳児を保育する施設です。各年齢は5-7名程度という施設が専らでしょう。施設全体の定員数や3歳児からの転所者を考慮すると、保育を行う3歳児以降は若干名となりそうです。

多くの0-2歳児と若干名の3歳児を同じ部屋で保育を行うのが果たして適切でしょうか。運動能力に大きな差があるので、室内で衝突する危険性は極めて高いです。

また、同年齢の児童が極めて少なくなるのも疑問です。同年齢の児童と共に遊ぶ機会が限られてしまいます。

0-2歳児の利用が多い認可外保育施設でも、3歳児以降の利用者は一定数存在しています。しかし、「同年齢の子どもが少なくて、さみしそうだ」という話はしばしば聞きます。保育所の空きが見つかり次第、退所・転所する児童が多いそうです。

余談となりますが、転所先が見つからなかった3歳児の継続保育が可能であれば、新たな3歳児を受け入れるという話も検討されるかもしれません。全年齢を対象とした小規模保育・・・・新しい発想です。

企業主導型保育が大丈夫だから問題ない?

毎日新聞の記事では「企業主導型保育事業は0-5歳児を保育しており、問題はない」と指摘されています。しかし、企業主導型保育は今年度から始まったばかりの施設です。これを基準として「保育の質に影響はない」とは判断できないでしょう。

更に少人数の施設では様々な行事が制約されます。植物等を育てたり、大型バスをチャーターして遠足に出かけたり、演劇等を鑑賞したりするのは困難でしょう。同年齢で競い合う運動会も難しいです。

また、3歳児の継続保育に伴って0-2歳児の入所人数に影響が出る恐れもあります。入所できる0-2歳児が減少したら、何の為の小規模保育か分からなくなります。

必要なのは発達段階に見合った保育です。0-2歳児であれば保育所等との違いは一定範囲に留まるでしょう。しかし、3歳児以降の保育では大きな差が生じてしまいそうです。なし崩し的に行うのは適切だと思えません。

多くの保護者が願っているのは「0/1歳児から小学校入学前まで安心して通える保育所」です。原点回帰が必要ではないでしょうか。