H29保育所等一斉入所結果分析、4回目は区毎・施設種別毎の入所決定状況を考察していきます。なお、昨年の分析記事はこちらからご覧下さい。

子供子育て支援新制度が始まって3年目となりました。保育所・認定こども園・小規模保育・家庭的保育、各施設の入所者に点数の違いはあるのでしょうか。

大阪市では保育所等毎の入所者の点数(10点刻み)を公表しています。このデータを利用します。


大阪市の保育所入所待機児童数について(平成29年4月1日現在)より作成
(190点以上の欄を黄色、160点以下の欄を水色にしています)

保育所とそれ以外、入所者平均点に大きな違いが

新制度の導入により、様々な保育施設が展開されています。種別毎の入所傾向に違いはあるのでしょうか。

入所者の平均点には明確な違いがありました。保育所(185.3点)が最も高く、小規模C型・認定こども園・小規模A型が177点前後で横並び、家庭的保育や小規模B型が170点弱という結果となっています。

これは「大半の保護者が保育所を第1希望としている」のが原因です。新しい施設種別が出来たとは言え、やはり広い園庭・長い歴史・そして保育所という言葉のイメージのしやすさは強い魅力があるのでしょう。

ほぼ全ての地域で保育所が最も入りにくい、という結果が出ています。施設毎を個別に見ていても、同様の傾向が感じられます。

3歳の壁

大半の保護者が保育所を第1希望としている大きな理由はどこにあるのでしょうか。強い理由の一つは「保育年齢」です。

ほぼ全ての保育所では0-5歳までの保育を行っています。入所すれば小学校への入学直前まで同じ施設で保育が行われます。

しかし、地域型保育事業は「2歳まで(満2歳を迎えた年度末)」までとなっています。また、こども園は「0-2歳まで」と「0-5歳まで」が混在しています。

2歳までの保育を行う施設へ入所した場合、卒園するタイミングで新たな保育施設を探す必要があります。各施設を見学し、一斉入所等へ申込み、2月頃の結果通知を待たなければなりません。

また、3歳児からの入所枠は決して多くありません。【H29保育所等一斉入所申込分析】(1)大阪市各区毎の比較によると、市内中心部では3歳児入所倍率が3倍を超える区が少なくありません。

3歳児募集を行っていない保育所も少なくありません。入所したくても、募集が無ければ打つ手がありません。いわゆる「3歳の壁」です。3歳から別の保育所へ入所するのは大きな負担が掛かります。

また、きょうだいを育てている家庭ではより深刻です。下の子供が2歳児までの保育施設を利用する場合、殆どの家庭で上の子は他の保育所等への利用を余儀なくされるでしょう。

極めて負担が重い「2カ所保育」を強いられます。小学生がいたら「3カ所保育・教育」です。送迎は別の場所、何より行事日程がバラバラなのが大変です。

こうした理由から、殆どの保護者は0-5歳までの保育を一貫して行っている施設、具体的には保育所を第1希望としているのが実情です。

市中心部は地域型保育事業の平均点も高い

区毎で見ていくと、より状況が見えてきます。多くの施設が存在している小規模A型への入所者平均点は、天王寺区が195.2点と突出しています。

同区は1歳児の入所者平均点が市内2位、そして2歳児は他区より突出しています。保育所のみならず、小規模保育にも高い点数を有する家庭の申込みが相次いでいるのでしょう。

【H29保育所等一斉入所結果分析】(3)区毎・年齢毎・点数毎の入所決定状況

平均点が195.2点と言えども、多くはフルタイム共働き世帯(200点)以上の点数での申込み・入所決定だと推測されます。200点を切ると厳しい、という印象です。

また、阿倍野区・西区・中央区・都島区・東住吉区・東成区・福島区・北区・浪速区では、小規模A型の入所者平均点が180点を超えています。大半の区が市内中心部にあり、児童数が増加している地域です。

こうした地域では小規模保育への入所であっても、フルタイム共働きに準ずる点数が必要とされるでしょう。パートタイム勤務では厳しい、と感じます。

優先入所枠がある施設は更に高点数が必要

地域型保育事業の中には、入所するには保育所並みの点数が必要だった施設もあります。典型例はおひさまルーム(西区)中之島ちどりキッズ(北区)です。入所者平均点は200点を超えています。

これらの施設には、同じ法人が近隣で運営している保育施設(連携施設)への優先入所枠が設けられています。前者は西六保育園、後者は認定こども園中之島ちどり保育園です。

こうした施設へ入所した場合、多くの児童が連携施設へ転所できます。「3歳の壁」を考える必要がありません。実質的には、これらの保育施設の分園的な位置づけでしょう。行事や日常の保育も合同・連携して行っていると聞きます。

注意して欲しいのは、「全ての連携施設に優先入所枠が設けられているわけでは無い」「全ての園児が優先入所できるわけではない」という点です。

日常の保育は連携するものの、卒園児の優先入所は講じていない施設もあります。また、優先入所枠があるものの、全卒園児を受け入れられるだけの枠が無い場合もあります。

多くの保護者は保育所が第1希望・高点数が必要

保育所とそれ以外の施設、入所者の点数の違いは明白でした。前者が大きく上回っています。

大阪市を初めとする都市部の自治体は、保育所の新設を上回るペースで地域型保育事業の新設を進めています。0-2歳児が大半を占める待機児童対策には効果があるでしょう。

しかし、多くの保護者が強く希望しているのは「0-5歳までの保育を行う保育所等への入所」です。理由は先に記したとおりです。

いずれの保育施設への入所できない保留児童が多く発生している市内中心部はまだしも、それ以外の地域では地域型保育事業の新設を抑制し、保育所の新設に重きを置くべきだと感じています。

また、入園者が減少している幼稚園のこども園化も積極的に進めるべきでしょう。実は大阪市内では、この1年間の間に幼稚園から認定こども園へ移行した施設が少なくありません。こっそり移行した施設が点在しています。

認定こども園であっても、0-5歳児の一貫保育・夜までの(預かり)保育を行っている施設は少なくありません。こうした施設であれば、保護者の就労時間に応じた保育も可能となるでしょう。

※子育て支援施設データベース・マップの更新がやや遅れています。6月中旬頃までには公開・更新したいと思っています。