世間はポケモンGOばかりですが、ここは平常運転です。

待機児童・入所保留児童対策の為、特別チームが設置されます。効果が期待される一方、問題点を誤って把握しているのではないかと危惧される部分もあります。

政令市ワースト2位の大阪市、待機児童解消で特別チーム

吉村洋文大阪市長は21日、待機児童が多い区の区長らと地域事情に応じた対策を検討する、自らがトップの「待機児童解消特別チーム」を設置すると発表した。地域的偏りの背景を分析し年内に対策をまとめ、来年度予算案に反映する。

市は民間の施設整備を支援して毎年2千人規模で入所枠を増やしているが、今年4月時点の待機児童数は政令市では岡山市(729人)に次ぐ273人。24区のうち、マンション建設が多い西区(44人)を筆頭に城東、天王寺、阿倍野、浪速、淀川の上位6区で計170人と6割を占め、偏在傾向が続いている。

このためチームはこれら6区長と市長、担当局長らで構成。保護者が育児休暇中などで待機児童の定義外となる世帯も含む「利用保留者」2870人全体の解消も視野に議論する。

市は大阪府とともに国の基準緩和を求める特区案も提案しているが、吉村市長は「現場の実情を踏まえたアイデアを聞き、今の制度内でもできる対策を練りたい」と述べた。

http://www.sankei.com/west/news/160721/wst1607210078-n1.html

具体的な内容は大阪市ウェブサイトに掲載されています。

大阪市待機児童解消特別チームの設置について(案)

〔設置目的〕
本市における待機児童を含む入所保留児童の早期解消が求められる中で、現行の局の取り組みに加え、各区において個々の地域事情をふまえた対応策を主体的に検討し実行に移すことで、本市待機児童対策の一層の強化・推進を図るため、待機児童が多く発生している区の区長を構成メンバーとして、特別チームを設置する。

〔構成メンバー〕
市長をチームリーダー、副市長をサブリーダーとして、平成28年4月1日時点で待機児童数の多い区※1の区長と、区長会こども・教育部会長、こども青少年局長等で構成する。(必要に応じ、他の関係部署の出席を求める。)
・市長、副市長
・区長….西区長、天王寺区長、浪速区長、淀川区長、城東区長、阿倍野区長
・こども青少年局….局長、保育施策部長

〔スケジュール〕
平成28年8月以降、12月までの間に複数回開催し、取りまとめを行う。

〔具体的な検討内容〕
・保育所等の開設が進んでいない地域における、保育事業者の公募促進策の検討
・区内における保育ニーズの地域偏在への対応策の検討など

http://www.city.osaka.lg.jp/seisakukikakushitsu/cmsfiles/contents/0000348/348383/taiki.pdf

特別チームは市長・副市長・こども青少年局長・保育施策部長と待機児童が多い上位6区(待機児童の約6割)の区長で構成される予定です。

待機児童ではなく入所保留児童、「数」ではなく「率」を重視すべきでは?

メンバーに加わっている区長を見て、「どうして中央区・北区長が入っていないのか?」と感じました。H28保育所等一斉入所結果分析(2)で指摘したとおり、北区・中央区は市内で最も入所しにくい区の一つです。

両区が外れた理由は明らかです。「待機児童数」を基準に決定したからです。入所を申し込んだが入所できなかった児童(入所保留児童)から、特定の事由(育休中・特定の保育所のみを希望等)に該当する児童を除いた数字が「待機児童」とされます。

保護者感覚に近いのは、入れなかった児童を全て合わせた「入所保留児童」です。「待機児童数」のみを見ていると、実態が見えにくくなります。

更におかしいのは待機児童「数」を基準としている点です。同じ社会構成であれば、人口(特に未就学児)の多い区の待機児童数が多く傾向が出てきます。更に実態が見えなくなってしまいます。

待機児童問題が深刻な区を抽出するのであれば、「入所保留率が高い区」を選定すべきでしょう。

h28_kekka_ward
大阪市の保育所入所待機児童数について(平成28年4月1日現在)より作成

保留率が高いのは西区・北区・中央区・阿倍野区・天王寺区・西淀川区の順になります。保育所等在籍率が低くて整備が遅れている区は、中央区・阿倍野区・天王寺区・西区・北区・住吉区・旭区の順です。

また、未就学児の増加傾向が著しくて保育所不足が更に深刻化しそうなのは、浪速区・西区・中央区・北区です。浪速区は旧湊町貨物駅跡地にタワーマンションが次々と建築されていて、それ以外の地域との著しい偏りが生じています。

原案では待機児童数が多い上位6区から構成メンバーを選んでいます。やもすると「大阪市はとにかく待機児童数を減らすのを目標としているのではないか」という不安を感じています。

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