大きな話題になっている話です。皆さんどう考えられますか?

【ケース1】
・子供が溶連菌に感染し、保育園へ預けられない
・当日は大事な商談があり、他のメンバーでは代替できない
・日中は夫が看られるが、18時からの打ち合わせは外せない
・同じ部署で働く後輩(男性)に自宅へ来てもらい、3時間ほど在宅勤務しながら子供の面倒を見てもらう事にした
・病児保育やベビーシッターという選択肢もあったが、新しい形にチャレンジしたかった

【ケース2】
・夫の商談と妻の海外出張が朝から重なり、誰も保育園へ送っていけなくなった
・商談中の2時間、部長と後輩に子守をお願いした

【上司の感想】
・チームで協力して、今回の方法が一番パフォーマンスが出るとその場で判断したのは、良い判断だったと思う
・ただ、社員が子どもの面倒を見るというのは、やっぱりリスクが気になる
・何かあった時の責任を考えると、今後は違う選択肢を視野に入れて対応を考えていくべき

【社長の感想】
・育児を母親だけに任せるのではなく、家族・会社の人・公的なサービス・ベビーシッターサービス・病児保育も利用したりと、何層ものセーフティネットを用意するのが重要
・社長としての観点から見ると、今回のメンバーの判断はナイスでした
・リスクは下げられるといいと思うが、事故や怪我は保育園やベビーシッターであってもゼロにできない、ある程度は寛容になることも大事
・子守したメンバーは「多様な働き方に柔軟にこたえられる人」、信頼度が上がりました

大事な商談の日なのに、保育園に預けられない──両親の代わりに営業チームで子守をした話(要旨)

どちらも論外

私としてはどちらのケースも極めて大きな問題があったと感じています。社員により子守その物に留まらず、現実的に取り得るそれ以外の選択肢の検討が甘かったのではないでしょうか。

溶連菌は園児の大敵!

まずはケース1から検討していきます。家庭に小さな子供がいれば、一度ぐらいは「溶連菌」という言葉を聞いた事があるのではないでしょうか。実は我が家では最も恐れている病気の一つです。

●症状の始まりは38~39度の熱とのどの痛み、嘔吐から。風邪と症状が似ています。
●溶連菌は別の大きな病気(合併症)の原因になりやすい細菌です。溶連菌を完全に退治するまで、10日間~2週間ほど抗生物質を飲み続ける必要があります。
●完治したかどうかは、発症時の症状が改善した2〜3週間後に検査してわかります。症状がおさまったからといって油断は大敵です!自己判断ではなく、きちんと医師の診察を受けましょう。

http://sickchild-care.jp/point/2922/

溶連菌には子供が罹った事があります。何の前触れもなく唐突に高熱が出て、ビックリして小児科医に連れて行きました。

完治するまでに数日ほど必要で、それまでは登園停止とされています。その為、原因が分かった段階で保育所に「溶連菌に罹りました。数日はお休みします。」と電話しました。インフルエンザの様に有名ではありませんが、出席できない期間は匹敵します。

こうした症状にある子供を職場の後輩、特に独身で育児経験がない方に子守をお願いする感覚が解せません。急な発熱・嘔吐等に襲われたら、どうすればいいのかあたふたするのが目に見えています。

同僚に対する信頼感はあくまで仕事を通じた物です。「子守を任せても大丈夫」という信頼感が湧き起こるのが不思議です。新しいチャレンジの犠牲となるのは子供です。

では、母親はどうするべきだったのでしょうか。自分で指摘しているとおり、病児保育やベビーシッターサービスを検討するのが第一です。

また、当日、後輩は14時から17時まで子守しながら在宅で勤務していました。打ち合わせを終えた母親は、17時に帰宅したと考えるのが自然です。一方、夫の打ち合わせは18時からでした。

つまり、父親も母親も看病できない時間は短時間だったと推測されます。この時間だけでもベビーシッターを依頼する、という方法も取り得たでしょう。

誰かが保育園へ連れて行けなかったのか?

次はケース2です。朝7時には自宅を出発しなければならず、保育園の開園7時半に間に合わなかったそうです。

真っ先に感じたのは「上司や後輩に子守をお願いするぐらいなら、保育園へ登園するべきだったのでは」という事です。男性社員2人が同僚の子供の子守をするより、遙かに適切です。

問題となるのは保育園の受け入れです。我が家がお世話になっている保育所の場合、登降園には原則として両親・親族が付きそう事となっています。事前に届け出をすれば、例外的にベビーシッター・ファミリーサポート・他の保育施設の従業員等も可能です。

こうした事態に我が家が置かれた場合、まずは保育園のお友達の家庭に「明日だけ連れて行ってもらえないか」と泣きつくと思います。保育園で定期的に話をしていれば、各家庭の状況・住まい・登園時間帯等は自然と伝わってきます。近所のお友達にしっかりと説明すれば、快く引き受けて下さる家庭もあるでしょう。

ただ、受け入れる保育園はびっくりするでしょう。親ではなく、他の保護者が連れてきたわけですから。開園直後に保育園へ電話をし、事情を説明して頭を下げる必要があるでしょう。本当はやったらまずい事ですから。

保育園のお友達の家庭に頼めなかった場合でも、今度は職場の同僚が保育園へ連れて行くという選択肢があります。更にハードルは高くなります。しかし、同僚が子守をするより、保育園に迷惑を掛けてしまっても登園させてもらう方が、子供の為になるでしょう。

ただし、経験上、第三者によりお迎えより、第三者により登園の方がハードルが低いと感じています。お迎えの場合は誘拐等のリスクがありますが、登園ではどうしたリスクはありません。

そもそもケース2は夫婦の予定確認が適切に出来ていなかったのが根本的な原因です。スケジュール管理機能等を搭載したグループウェア製品を販売している企業の社員が、家庭内のスケジュール調整に大失敗したのは皮肉です。

仕事・育児にはリスク管理・セーフティネットが重要

どちらのケースでも適切なリスク管理・セーフティネットの準備ができていませんでした。前日になってから「明日はどしうしよう」とあたふたしています。

子供の病気・親の出張等がある場合は、予定の調整・休日の取得が可能か否か、早い段階から気に掛けるべきでしょう。調整不可能な時間帯が判明したら、第三者の手を借りるという選択が準備できます。

リスクをゼロにするのは困難ですが、ゼロに近づけるのは可能です。社員により子守は非常にリスクが高い方法です。万が一の事態の場合、その責任は会社が背負う事になるのでしょう。

こうした点を踏まえ、上司は「今後は違う選択肢を視野に入れて対応を考えていくべき」と指摘しています。「今回限りとして欲しい」という心情が感じられます。

また、同社の社長は子守したメンバーを「多様な働き方に柔軟にこたえられる人」として評価しています。子供の急病等で出社できない社員の代替を務めるならともかく、子守をするのが多様な働き方なのでしょうか???

同社が仕事と育児の両立を図っている、先進的な企業という話をしばしば聞きます。同社の製品を重宝していた時期もあります。学生時代の知人も働いています(退社したかもしれませんが)。

しかし、本件は美談ではありません。「苦渋の決断」が適切でしょう。

ただでは起きない同社の事、今回の騒ぎは織り込み済みだった気がしてなりません。「こうした事態に対応できる為、保育士資格を有する社員を採用しました」という話など、大きな話に繋がる気がしてなりません。